全日病ニュース

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非医師・非歯科医師への事業承継

非医師・非歯科医師への事業承継

【若手経営者育成事業委員会】若手経営者育成事業委員会委員長 須田雅人

 若手経営者育成事業委員会は岡山学会で、『非医師・非歯科医師理事長への事業承継』と題した委員会企画を行った。90分間の枠で3名の演者による講演と質疑応答およびディスカッションという構成で実施した。演者としては、我々の委員会活動にこれまで何度も参加してくれており、すでに地域医療を推進する大切な担い手となっている、浜脇整形外科病院(広島県)の浜脇澄伊理事長に「医師でない私が理事長になるまで」、清水病院(埼玉県)の清水大貴理事長に「三代目理事長としての私の役割」、八反丸リハビリテーション病院(鹿児島県)の八反丸哲史副理事長に「なぜ、非医師の僕が次期理事長候補なのか?」というタイトルでそれぞれの発表を行ってもらった。
 少子高齢化が叫ばれ続ける我が国において、地域に根ざした医療に対する意識は、以前よりも年々強くなっている。信頼と実績に裏打ちされる、この地域医療の永続性を考える上で、今回論点にする非医師・非歯科医師の理事長就任実現は大変重要な問題であり、多くの人々の理解が必要となっている。
 今回のセッションでは、非医師・非歯科医師の者が医療法人を率いることにおける都道府県ごとに異なる行政との折衝の経験談や非医師・非歯科医師であるメリット・デメリットなども交えて講演を進めてもらった。また、法人の形態についても話し合いが行われた。3名・3法人のうち、承継後も持ち分あり医療法人のままで現在に至っているのは2法人、持ち分なしは1法人であり、その選択をした経緯についても詳細に聞くことができた。
 オンライン会場からの質問としては、
1.承継が兄弟姉妹で紛糾することはないのか? その対策は?
2.承継後も持ち分あり医療法人の形態を選択したのは何故か?
3.さらに次の代を考え、自分の子供にどのように話をしているか?
といったものが挙げられた。
 1については、承継時に兄弟姉妹に対し財産権の精算を行い、法人との関係を明確化した理事長や、院長である妹自身の理事長就任辞退意思を事前に明文化するという回答もあった。
 2は継承時の法人財産次第で、持ち分ありを踏襲するのも一手という考えもあった。また、将来的には地域との関わり合いをより深め、そのニーズを積極的に汲み上げて地域で存続するためのビジョンを明確化するとともに、同族理事を全て廃して地域と一体的な法人を目指すという考えも紹介された。
 3については、演者の三者も座長も皆同じように、自分の子供らに自分の好きな道を歩むのが良いと考えており、医師になることを強要したことはないとの意見であった。
 最後に大田泰正副委員長が閉会の挨拶として、これからの病院経営は診療と経営を分けて考え、理事長を医師に任せることに固執する必要はなく、本当に経営に秀でた者が理事長として全体をまとめていくことも一つの形として充分考えられると締め括った。
 今回、幾多の困難を乗り越えながらも開催していただいた佐能量雄学会長をはじめとし、多くの岡山の諸先生方、岡山学会事務局の皆々様の御尽力と熱意に対し、心より感謝の気持ちを是非とも伝えたいと若手の一致した意見もあり、その気持ちを最後に伝え委員会企画を終了した。
 当委員会では今回の取り組みをシリーズ化して次回以降の学会でも委員会企画という形でこの取り組みを継続して実施し、多くの非医師・非歯科医師の理事長に登場してもらいたいと考える。

 

全日病ニュース2021年10月15日号 HTML版

 

 

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  • [1] 2021.10.1 No.995

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2021/211001.pdf

    2021/10/01 ... 補も含む)を演者として招き、医療法. 人を率いることにおける行政との折衝. の経験談や、メリット・デメリットな ... 須田雅人).

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