全日病ニュース

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病院機能評価に対するCOVID-19の影響

病院機能評価に対するCOVID-19の影響

【病院機能評価委員会】病院機能評価委員会委員長 木村 厚

 全日病学会in岡山は結局全面WEBで開催された。当委員会企画は8月22日(日)午前10時30分から12時まで開かれた。アクセス数は240人強であり、通常に比べ参加人数は多く見えるがどのくらいの時間滞在してもらったかがわからないので、何とも言えないが、少なくとも関心は持っていただけたという事で、今後の学会の在り方の参考になると思われた。(他のすべての学会企画に言えることだが)
 日本医療機能評価機構による訪問調査はCOVID-19により様々に影響を受けた。今回は4人の講師(すべて当委員会の委員)にそれぞれの立場からその影響を語ってもらい、皆様の受審の参考にして頂きたいと思った次第です。
 まずは、当委員会の特別委員で日本医療機能評価機構の審査担当執行理事で東邦大学社会医学講座医療政策・経営科学分野教授の長谷川友紀先生に日本医療機能評価機構の対応について講演いただいた。訪問審査の実施状況では数は減少している。コロナの影響で対応が難しくなりキャンセルとなった病院が多く、またサーベイヤーの健康上の理由から交代となった例もあったとのことであった。機構の訪問審査に対する基本的な考え方として、本質的な価値はサーベイヤーが実際に訪問し、相対してのやり取りにより、受審病院が気付かない事項を含めて、情報を的確に引き出すことができ、より的確な評価、改善をもたらすものと捉えている。オンライン審査はあくまで緊急避難の位置づけと機構では考えている。
 対策として認定期間の1年延長、延長審査の導入、バックアップSVRの導入、オンラインの積極的活用、評価項目改定への反映などである。詳しくは機構に問い合わせてもらいたい。
 続いて当委員会委員で全日病副会長、公益財団法人脳血管研究所付属美原記念病院院長の美原盤先生に診療管理サーベイヤーの立場から講演いただいた。先生は、COVID-19 流行下の2020年2月から2021年7月の1年5か月の間に6病院の訪問審査の依頼を受けたが、そのうち2病院が病院の都合で中止となり、1病院がリーダーの都合で直前に交代となったとのことである。
 実際の訪問審査では、合同面接で3密を避けるための工夫が必要で準備が重要であることが指摘された。また現場での感染対策の確認として、コロナ感染患者の受け入れについて、その場合のゾーニング、リモート面会等などを確認している。
 COVID-19 を意識した評価項目として1.4.1 1.4.2 医療関連感染制御を挙げていた。最後にCOVID-19 流行期だからこそ当該病院が地域のニーズに応えていける活動をアピールされたいと締めた。
 次に看護管理領域から当委員会の特別委員で東京都看護連盟幹事長の岩渕泰子先生に講演いただいた。岩渕先生はサーベイヤーとしての事前対応として、当たり前ではあるがマスクの着用と手洗い、うがいを頻回に行うことを心掛け、栄養バランス、睡眠時間の確保に努めた。おかげでここ1年半以上風邪をひいていないとのことであった。
 COVID-19 流行時における看護サーベイヤーとしての視点強化項目として次をあげた。
<感染管理>医療関連感染を制御するための活動、ゾーニングの徹底
<看護管理>教育方法・人材育成・メンタルケア
<倫理的配慮>患者のメンタルケア
 岩淵先生の指摘をまとめると、
①ゾーニングを明確にして、感染管理に自信を持つことが大切。
②生活様式の変化と同じように教育方法も検討する必要がある。
③感染管理に精通した人材育成が必須。
④コロナ禍と言って評価内容に大きな変化はない。
⑤トップ管理者のリーダーシップに期待。
 最後に当委員会委員である医療法人社団愛友会伊奈病院事務長の朝見浩一先生に講演いただいた。事務管理領域でCOVID-19に意識した評価項目として2.2.1 4.1.2 4.1.3 4.2.3 4.3.1 4.3.24.4.1 4.5.2などを挙げている。それぞれの細かい説明があったが、長くなるのでここでは省略したいが、いくつかのポイントは示したい。
①新型コロナウイルス感染症に対する自院の役割やスタンスを明確にすること。
②リスクに対応する病院の機能存続計画(BCP)をはっきりさせること。
③日々の職員に対する健康管理体制。
④コロナワクチン接種率向上のための工夫。
⑤コロナ禍での職員のメンタルサポート体制。
⑥勤務において感染した際の労災手続きへの対応。
 そして特に職員の教育研修を止めないために、WEB・オンライン研修などの機会の提供を模索していることを挙げていた。
 以上の4人の講師の講演の後に参加者を交えての討論に入ったが、一般参加者からの質問はなく、座長、講師間の質疑にとどまった。WEBに慣れていないこともあり、今後に期待したい。

 

全日病ニュース2021年10月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 第 10章

    https://www.ajha.or.jp/about_us/60years/pdf/60years_10.pdf

    2021/03/25 ... 厚生労働省は3月24日、全日本病院協会(以下、. 全日病)をはじめ17の医療関係団体が参加する新. 型コロナウイルス対応に関する協議会の初会合を.

  • [2] 第 9章

    https://www.ajha.or.jp/about_us/60years/pdf/60years_09.pdf

    年度末からコロナウイルス対策が顕著に ... き、新型コロナウイルスの感染状況をめぐり協議。 ... ジャー、公益財団法人日本医療機能評価機構 元サーベイヤー).

  • [3] 機能評価受審病院の拡大を目指して|第985回/2021年5月1日号 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20210501/news06.html

    2021/05/01 ... 美原 コロナウイルスの影響もありましたね。 ... どう活用するかという意識が大切ですが、サーベイヤーが納得するような書類を作ろうとしていました。

  • [4] 2021.2.1 No.979

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2021/210201.pdf

    2021/02/01 ... いる地域で急性期医療を担う病院に対し、新型コロナ患者の受入れを求めるとともに、都道府県からの病床確保 ... 的にサーベイヤーが何を聞くか」につ.

  • [5] 医療機能評価:みんなの医療ガイド | 公益社団法人全日本病院協会

    https://www.ajha.or.jp/guide/8.html

    病院の状況を一定の書式に記した書面に基く書面審査と、サーベイヤー(評価調査者)が実際に病院に出向いておこなう訪問審査からなり、その結果医療サービスを提供する ...

  • [6] 病院機能評価の受審を支援し、認定率向上目指す第三者の目で評価 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20170901/news10.html

    2017/09/01 ... 日本医療機能評価機構のサーベイヤーの中から、当協会で依頼したアドバイザーがお伺いいたします。 ... 全日本病院協会 機能評価受審支援相談事業について ...

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