全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2021年)第996回/2021年10月15日号災害時における外国人弱者の安全を守る

災害時における外国人弱者の安全を守る

災害時における外国人弱者の安全を守る

【救急・防災委員会】救急・防災委員会特別委員 山本保博

 災害医療の根幹のひとつである災害弱者に関して、在日外国人の被害の大きさから考えてみたい。日本で長期間滞在している300万人程度の外国人は東南アジアや南アメリカ、アフリカ、中東などが多いようだ。
 しかし、現在の新型コロナ禍においては、わが国を訪問したいと考えている外国人は、入国手続きが複雑で時間もかかり、短期の観光ビザなどでの訪日は不可能に近いのが現状ではないだろうか。
 東日本大震災による原発事故が発生した際のことだが(2011年3月11日)、東京の在留外国人があっという間に減少し、1か月後の4月頃には全くといってよい程見かけなくなってしまった。
 原因は簡単で、福島原発事故の放射線汚染は深刻でチェルノブイリ原発事故を経験している欧州とスリーマイル原発事故を経験している米国人は、特に心配しながら汚染状況を見守っていたという。
 米国人で日本の医師国家試験にも合格しており、日本での臨床医療にも活躍しているDr. Edward Stimが東京にいたので事情を聴いてみたところ、彼の家族はニューヨークに帰り、1人で東京に残っているという。ほとんどのアメリカ人は、米国政府が用意していたチャーター機で帰国したのだという。米国大使館が在留米国人を全員搬送するのは、政府の責任だと言っていた。
 災害時にかかわらず、インバウンドに関して注意したい点を述べる。外国人の来日後には、内科系疾患が最も多く、続いて初期にはストレス疾患、脳卒中や心筋梗塞と言われている。平時における外科疾患では交通事故、転倒、転落、自殺未遂などが外国人の外科疾患の主な原因であるようだ。
 外国人問題は、より大きな問題になってくるのは必然のことと考え、まず災害時における外国人弱者をいかに安全・安心させ、命を守ることが出来るのかを考えなければならないだろう。
 全日本病院協会における代表的な4人の先生方の講演内容は個々の先生方に譲るとして、私の委員会企画のポイントのひとつである災害弱者について災害時により大きな問題となるであろうと考えを述べてみた。

 

全日病ニュース2021年10月15日号 HTML版