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ホーム全日病ニュース(2021年)第996回/2021年10月15日号入院医療に関する作業グループの最終報告を受ける

入院医療に関する作業グループの最終報告を受ける

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【中医協・入院医療等分科会】2022年度診療報酬改定の重要資料

 中医協の入院医療等の調査・評価分科会(尾形裕也分科会長)は10月1日、同分科会の作業グループの最終報告を了承した。入院医療に関する詳細なデータとともに、様々な指摘が盛り込まれており、2022年度診療報酬改定に向けた議論の重要な資料になる。あわせて、厚生労働省から、2021年度調査の速報値も報告された。
 診療情報・指標等作業グループからは、◇重症度、医療・看護必要度◇リハビリテーションの診療実績◇慢性期医療の診療内容─の検討結果が報告された。
 特定集中治療室等については、特定集中治療室等に入院する患者の状態を判断する上で、現状の「重症度、医療・看護必要度」が妥当であるかについて、議論が行われた。
 特に、B項目(患者の状況等)の妥当性が議論になり、旭川赤十字病院院長の牧野憲一委員は、「B項目は『患者の状態』と『介助の実施』」で成り立っている。例えば、『食事摂取』における『患者の状態』が、食事ができない状態であれば、食事の『介助の実施』はできない。『移乗』についても同様である。B項目は特定集中治療室等には向かないのではないか」と述べた。
 全日病会長の猪口雄二委員は、「治療をして、ある程度病状が落ち着いたら、介助をできるだけ少なく、患者ができるだけ自分でできるようにすることが試みられている中で、現状のB項目のように、『介助の実施』をスコア化して評価するというやり方は、ナンセンスのようにもみえる」と述べ、見直しが必要との考えを示した。
 DPC/PDPS等作業グループからは、DPC/PDPSの運用に関して報告があった。DPC対象病院については、2020年度改定での整理を踏まえ、DPC対象病院になじまない可能性のあるDPC対象病院を分析し、なじまないのであれば、DPC制度から退出してもらうルールを検討する方向で議論が行われた。
 具体的には、「医療資源投入量の少ない病院」、「在院日数が短い病院」に着目し、全体の分析を行うとともに、この2つの観点で、「 外れ値」に相当するDPC対象病院に対して、ヒアリング調査を実施し、実態を調べることになった。
 分析やヒアリング調査では、DPC対象病院の様々な実態が示された。
 その中で、DPC対象病棟から回復期リハビリテーション病棟に転棟する場合に、転棟までの日数が極端に短く、「回復期病棟への転棟前に、一時的にDPC対象病棟を利用している実態」があることがわかり、 リハビリ目的のDPC対象病棟での入院は 「不適切」との指摘が作業グループからあった。
 猪口委員も、「リハビリ目的で、DPC対象病棟を一時的に利用することは望ましくない。DPC対象病棟で手術や急性期の治療を行い、状態が落ち着いたら、他病棟に転棟するという本来のあり方に見合う設定とするべき」と述べた。
 また、治療目的での手術が定義されている診断群分類の場合であれば、他院からの転院と自院への直接入院とで、医療資源投入量の傾向に違いはないとのデータも示された。これを受け、他の委員からは、診断群分類を適切に設定することで、「不適切」の状況の是正を図るべきであり、「外れ値」のDPC対象病院が、「DPC制度から退出すべきである」との意見は分科会では出なかった。

治療室の有無を強調する資料提示
 2021年度調査の速報値では、2020年度調査と同様に、治療室の有無などにより、急性期の病院を区別するような資料が提示された。
 例えば、◇特定機能病院入院基本料(一般病棟7対1)の病院はすべて、特定集中治療室など治療室がある◇急性期一般入院料1の病院の8割超に何らかの治療室があり、ハイケアユニット入院医療管理料の届出が最も多い◇治療室のない病院は300床未満で多い─などのデータが示された。
 猪口委員はこれに対し、「確かに、中小の急性期一般入院料1の病院であれば、治療室がない病院が少なくない。大病院と比べれば、救急も手術も少ない。規模を考えれば当然のことであり、中小病院が急性期の機能を果たしていないということではない。それを強調するのではなく、広い地域を圏域とする基幹病院と、地域の急性期病院はそれぞれ役割が異なるということを説明することのほうが大事だ」と、厚労省の資料に対して発言した。
 2021年度調査の速報値では、医療機関の情報システムの管理体制やサイバーセキュリティ対策に関する教育の実施状況などの調査結果も示された。
 全日病常任理事の津留英智委員は、急性期一般入院料1でも、1割弱の病院が電子カルテを導入していないとのデータ(2019年9月時点)を踏まえ、「医療の質の向上の観点から、電カル導入は必須に近い状況だが、多額の投資が必要。サイバーセキュリティの体制を整えるのにも、SEを雇っていたり、雇わなくても外部委託の費用がかかる」と述べ、診療報酬のさらなる評価が必要であると訴えた。また、「DXの時代に入る中で、AI・ICT を含め患者サービスの向上につながる技術が次々と出てくる。これらを患者のための医療の質向上として、診療報酬上でどのように評価していくのかの検討が必要になる」と強調した。

 

全日病ニュース2021年10月15日号 HTML版

 

 

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