全日病ニュース

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アウトカムが求められる保健指導

アウトカムが求められる保健指導

【人間ドック委員会】保健指導実施者に求められる能力を説明

 「医療職のためのこれからの特定保健指導」をテーマに2人の講師が特定保健指導をめぐる最近の動きを紹介した。
 女子栄養大学大学院客員教授の岡田邦夫氏は、「企業の健康づくりではアウトカムが求められるようになっている」とし、効果的な保健指導の進め方について述べた。岡田氏は、保健指導を通じて行動変容をおこすことが重視されていると指摘。「健診結果と生活習慣の関係を説明し、問題点を把握した上で、対象者が何をすべきか自ら考えてもらうように誘導することが保健指導の役割だ」と述べた。
 「行動変容を促す保健指導を行うには個別対応だけでなく、組織や環境を視野に入れて指導しなければいけない」と述べ、そのための能力が保健指導のマネジメントを担う者に求められていると強調した。例えば、禁煙を進めるには個人に禁煙指導を行うと同時に、組織として受動喫煙対策を進め、職場内を禁煙とするなど、個別アプローチと組織アプローチの両面から取り組むことが重要となる。
 職場の風土や会社の考え方を変えて、職場全体として健康意識を高め、従業員の行動変容を促す考え方が主流になっている。「知らず知らずのうちに行動が変わっていく環境」をつくることが大切で、そのための仕組みをつくることが保健指導において重視されていると説明した。
 四日市看護医療大学名誉学長の河野啓子氏は、特定健診・特定保健指導制度の概要を説明した上で、標準的な健診・保健指導プログラムについて述べた。同プログラムは、制度が始まる前年の2007年4月に発表され、その後、第2期、第3期にあわせて改訂され、現在は2018年度版。
 プログラムは、健診・保健指導事業にかかわる者に求められる能力を示している。例えば、保健指導実施者に求められる能力では、相談・支援の技術として、認知行動療法、コーチング、ティーチングの手法をあげている。これらの能力を身に付けるために研修ガイドラインが定められていて、受講者のニーズに応じて職種・経験別のプログラムが示されている。
 2018年度版のプログラムでは、標準的な質問票が改訂され、「役に立つ質問表になった」と河野氏。特に「食事を噛んで食べ時の状態」の質問が加わったことは意義が大きいと述べた。
 また、宿泊型の保健指導プログラム(スマートライフステイ)が導入されたことを評価。「食事内容を実際に体験することで、行動変容の効果がある」と述べた。

 

全日病ニュース2021年10月15日号 HTML版