全日病ニュース

医療法人の損益差額は2.8％でわずかに改善

【医療経済実態調査】収益・費用がともに増える構造変わらず

　厚生労働省は11月13日の中医協の調査実施小委員会（秋山美紀小委員長）に、2020年度診療報酬改定の改定率の水準を決める際の参考とする医療経済実態調査の結果を報告した。医療機関の経営状況について、2018年度診療報酬改定前後の事業年度データ（2017年度と2018年度）を比べている。病院（医療法人）の2018年度の損益差額は2.8％でわずかに0.2ポイント改善。病院全体で、収益も費用も増加し、損益差額が若干改善する傾向がみられたが、依然として、厳しい経営状況が続いていることが示された（下記表を参照）。
　2018年度の一般病院全体の損益差額は▲2.7％で、2017年度と比べ、0.3ポイント改善した。医業収益が1.9％増加し、医業・介護費用が1.5％増加している。ただ、この数字は、補助金が投入される前で赤字が二桁である公立病院や国立、公的（日赤、済生会、北海道社会事業協会、厚生連、国民健康保険団体連合会、社会保険関係法人、個人）病院を含む全体であるので、自院と比べる際の参考とはならない。
　医療法人（平均病床数129床）は、2018年度の医業収益が18億7,441万円で1.3％増、介護収益は372万円で27.0％減、医業・介護費用は18億2,523万円で1.0％ 増、損益差額は5,290万円で2.8％となり、2017年度と比べ、0.2ポイント改善している。収益も費用も伸びているのは、最近の医療経済実態調査で観察される傾向である。費用の増加は、半分以上が人件費と考えられ、人員の状況も調べている。
　2017年度と2018年度を比べた１カ月当たりの人員の伸び率をみると、最も伸びが大きいのが歯科医師の4.8％増、次いでその他職員の2.6％増、医師と医療技術員の2.4％増となっている。逆に、減っているのは看護補助職員の2.7％減、役員の2.0％減となっている。
　公立（平均230床）は医業収益が1.6％増、介護収益が17.6％減、医療・介護費用が1.8％増で、損益差額は▲13.2％で0.2ポイント改善している。公立はこの損益差額に、補助金などその他の収益が７億6,596万円あり、最終的な税引き後の総損益差額は、その他費用を含め、▲1.7％（▲8,400万円）となる。
　国立（平均355床）は医業収益が2.4％増、介護収益が1.0％増、医療・介護費用が2.6％増で、損益差額は▲2.3％で0.2ポイント改善している。公的は医業収益が2.8％増、介護収益が2.8％増、医療・介護費用が1.6％増で、損益差額は▲0.3％で1.1ポイント改善している。
　なお、病院は医業・介護収益に占める介護収益の割合が２％未満の病院を集計している。
　入院診療収益なしの個人の一般診療所の損益差額は32.0％で変わらず、法人は6.3％で0.1ポイント改善した。個人の歯科診療所の損益差額は28.5％で0.5ポイント改善、法人は9.1％で0.2ポイント改善した。個人の場合、開設者の報酬や建物、設備のための内部資金も損益差額で賄う。
　個人の保険薬局損益差額は9.8％で0.9ポイント悪化し、法人は5.4％で1.2ポイント悪化した。同一グループで保険調剤を行っている店舗数でみると、１店舗は1.2％で0.7ポイント悪化、20店舗以上は7.6％で1.3ポイント悪化となっている。軒並み損益差額が悪化しているが、店舗数が多いほど、損益差額が高い傾向にある。
　次に、2018年度の医療法人の平均給与をみると、病院長は3,042万円で0.5％減、医師が1,574万円で0.5％増、歯科医師が814万円で4.9％減、薬剤師が525万円で1.4％増、看護職員が455万円で変化なしとなっている。また、国立の病院長は1,918万円で2.0％減、医師は1,432万円で2.2％増、公立の病院長は2,131万円で1.3％増、医師は1,514万円で0.2％増となっている。
　中医協の支払側・診療側は、今回の結果を踏まえ、来年度診療報酬改定の改定率の水準を含め、今回の結果の評価について、11月中に意見表明する。