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ホーム全日病ニュース(2023年)第1029回/2023年4月1日号医療・介護の連携を進めるため意見交換会を開催

医療・介護の連携を進めるため意見交換会を開催

医療・介護の連携を進めるため意見交換会を開催

【厚労省・同時改定に向けた意見交換会】要介護高齢者に対応した急性期入院医療もテーマに

 厚生労働省の「令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会」が3月15日に開催された。2024年度に6年に1度の診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等の同時改定があるため、診療報酬と介護報酬の連携・調整をより一層進める観点から、中医協と介護給付費分科会の委員の一部が参加する意見交換会とした。3回の開催を予定しており、同日は、①地域包括ケアシステムのさらなる推進のための医療・介護・障害サービスの連携②リハビリテーション・口腔・栄養③要介護者等の高齢者に対応した急性期入院医療─をテーマとした。
 ポスト2025年を見据え、医療・介護ニーズが増大する一方で、支え手は減少が見込まれるなかで、あるべき医療・介護の提供体制を実現していくことが求められている。また、限りある人材で増大する医療・介護ニーズを支えていくためには、医療・介護提供体制の最適化・効率化を図っていくことも重要になる。こうした背景を踏まえ、意見交換を行う場が設けられた。
 なお、意見交換会の目的は、課題や方向性の共有であり、具体的な報酬に関する方針を定めることは行わない。
 テーマとして、①地域包括ケアシステムのさらなる推進のための医療・介護・障害サービスの連携②リハビリテーション・口腔・栄養③要介護者等の高齢者に対応した急性期入院医療④高齢者施設・障害者施設等における医療⑤認知症⑥人生の最終段階における医療・介護⑦訪問看護─を置いた。同日は、①②③をめぐり意見を交換した。

生活に配慮した質の高い医療
 「地域包括ケアシステムのさらなる推進のための医療・介護・障害サービスの連携」は包括的なテーマだが、主な課題では、「医療・介護連携」、「医療・介護DX」、「主治医と介護支援専門員の連携」などが示された。
 「医療・介護連携」では、厚労省が、「医療においてはより『生活』に配慮した質の高い医療を、介護においてはより『医療』の視点を含めたケアマネジメントを行うために必要な情報提供や連携」、特に、在宅医療における医療・介護連携の推進の必要性を指摘。方向性において委員の賛同を得た。
 「医療・介護DX」についても、推進の方向性では一致。日本医師会常任理事の長島公之委員は、医療・介護情報の標準化により、医療機関などの業務負担が減ることに期待を示すとともに、医療DXが逆に、医療機関の負担を増やしている場合があるとして、「本末転倒にならないように」と釘をさした。全国老人保健施設協会会長の東憲太郎委員は、「医療・介護等情報共有の基盤となる保健医療情報プラットフォームでも、医療が優先され、介護は遅れている。介護情報の活用の検討も同時に進めてほしい」と要望した。
 「主治医と介護支援専門員の連携」では、介護支援専門員が医療機関との情報共有に負担を感じており、特に、「医療機関に時間を取ってもらうことが困難」との状況がある。退院時の連携でも、居宅介護支援事業者が「医療機関からの急な退院の連絡があり、対応が困難」と感じており、医療機関側も「治療等の都合により、ケアマネへの退院の連絡が直前になる」との問題を指摘している。両者の情報共有の解決策として、「受診時に同行し主治医と面談」という方法が紹介された。
 健康保険組合連合会理事の松本真人委員は、「かかりつけ医が連携のハブとなることに期待する」と述べた。
 「リハビリテーション・口腔・栄養」については、これらの取組みを一体的に推進することにより、重症化予防や自立支援につなげることが期待できるとされ、2024年度同時改定での対応が注目されている。厚労省は、医師をはじめ関係職種が、対象者を的確に把握し、速やかに評価や介入を行うことが重要であると強調した。
 具体的な課題として、リハビリテーションでは、医療保険による急性期・回復期リハビリテーションから介護保険による生活期リハビリテーションへの円滑な移行、口腔では、医療機関・介護保険施設等・在宅と歯科医療機関との連携、栄養では、医療機関・介護保険施設等・在宅の間での情報共有と管理栄養士との連携などが示された。
 日本慢性期医療協会常任理事の田中志子委員は、「生活機能を維持するためには、朝・夜の短時間のリハビリテーションが有効」と述べ、幅広いリハビリテーションの評価を求めた。日本医師会常任理事の江澤和彦委員は、歯科衛生士や管理栄養士の不足が、一体的な推進を困難にさせていると訴えた。

要介護高齢者を地ケア等で受入れ
 「要介護者等の高齢者に対応した急性期入院医療」については、厚労省が、「高齢者にとって一般的な疾患である誤嚥性肺炎や尿路感染症に対する入院医療を急性期一般病棟が担っている実態があり、要介護者等の高齢者が求める医療の内容に乖離がある」との状況を指摘。「生活機能が低下した高齢者(高齢者施設の入所者を含む)に一般的である誤嚥性肺炎をはじめとした疾患について、地域包括ケア病棟や介護保険施設等での受入を推進するためどのような方策が考えられるか」を課題とした。
 長島委員は、「急性期の介護力を強化することも考えられるが、介護の必要性が高い患者は回復期等で受けることが重要。そのためには医療資源を急性期に集中させるのではなく、適切な機能分化と資源配分が求められる」と述べた。東委員は、「すべての救急患者に急性期病院が対応するのは非効率的。老健が提供する医療型ショートステイであれば、ADLを悪化させずに、在宅に戻ることができる」と強調した。
 日本慢性期医療協会副会長の池端幸彦委員も、「すべての病棟に介護人材を十分に配置することは難しいので、機能分化を図り、得意なことに集中することが大事だ。昨今の診療報酬改定でも、地ケア病棟が在宅の受け皿として、位置付けられてきている」と基本的な方針に賛同した。
 最後に、人材確保の観点から、「要介護者等の高齢者に対する急性期の入院医療の質を向上させるための方策」が論点となった。田中委員は、現状で、病院の介護職が看護補助者に位置付けられていることを踏まえ、「介護を必要とする患者が増えている中で、(介護福祉士など)介護を担う職員を病院で適切に評価すべき」と強調した。
 これに対し、松本委員は、「介護人材が不足する中で、(介護福祉士など)介護人材の急性期病院での配置を過度に促すことは望ましくない。看護人材で介護を担うことが原則だ」と述べた。

 

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