全日病ニュース
電子カルテ情報交換サービスのあり方をWGがまとめる
電子カルテ情報交換サービスのあり方をWGがまとめる
【厚労省・医療情報ネットワークWG】患者の同意なしに情報の登録が可能に
厚生労働省の「健康・医療・介護情報利活用検討会」の「医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループ」(中島直樹主査)は3月9日、全国的に電子カルテ情報を閲覧可能とするための医療情報ネットワークの基盤のあり方および技術的要件を大筋でとりまとめた。電子カルテ情報交換サービス(仮称)に、患者の同意なしに電子カルテ情報を登録できることとした。WG はとりまとめを健康・医療・介護情報利活用検討会に報告する予定。
2022年6月の骨太方針において、全国医療情報プラットフォームの創設や電子カルテ情報の標準化等を進める方針が示されたことを受けて、WGは電子カルテ情報を全国的に閲覧可能とする仕組みの検討を行った。厚労省は、電子カルテ情報を全国的に閲覧可能とすることで、医療機関同士の情報共有をより効率的・効果的に行うことが可能になるとしている。
データ交換にはHL7FHIRの規格を用いる。交換できる電子カルテ情報としては、①傷病名②アレルギー情報③感染症情報④薬剤禁忌情報⑤救急時に有用な検査情報、生活習慣病関連の検査情報⑥処方情報―の6情報と、診療情報提供書、退院時サマリーの2文書とし、将来的には段階的に拡大する。当初、文書情報として健診結果報告書も同システムで共有することを検討していたが、健診結果情報はHL7-FHIRの標準化を待たずして、自治体間やマイナポータルとの情報連携が開始されているため、まずは他の2文書(診療情報提供書、退院時サマリー)に関して進めることになった。
費用対効果の観点から、情報交換の仕組みは「PUSH型」とし、各医療機関から電子カルテ情報交換サービスに医療情報を送信するかたちとなる。開発は、オンライン資格確認等システムを運用している社会保険診療報酬支払基金が行う。
6情報と2文書は、現場の負担を軽減するため、患者本人の同意なしに電子カルテ情報交換サービス(仮称)に登録できることとする。
医療機関が6情報を閲覧することについては、患者が顔認証付きカードリーダーを利用する際に、一括で同意する仕組みなど、検討を続ける。
6情報に限っては、外来・入院にかかわらず、すべての患者の情報を電子カルテ情報交換サービスに登録することで、救急・災害時など緊急時にも医療機関間で共有したり、マイナポータルを通じて患者本人が確認できるシステムを構築する。
医療機関の負担軽減は今後の課題
今後、継続して議論すべき課題としては、退院時サマリーの取扱いや、医療機関での6情報登録の作業負担を軽減する仕組みなどをあげた。
厚労省は医療機関等が電子カルテ情報を共有することのメリットとして、「患者の来院前に紹介先医療機関が文書情報を確認することが可能になる」ことや「紹介元医療機関をシステム上で特定できることで、提供者が不明確な状態での文書の受取りを防止できる」ことなどをあげた。
これに対し日本病院会副会長の大道道大委員は、「患者が受診する前に、その病院の患者IDがない状態で、情報が来たことを主治医に伝えるのは難しい。また、提供者が不明確な状態の文書はあまり受け取ったことがない」などと述べ、厚労省が列記するメリットを実感しにくいと疑問を呈した。大道氏は、デメリットやシステムトラブルの際にどのようなことが生じるかということについても記載すべきと指摘した。
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