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ホーム全日病ニュース(2023年)第1029回/2023年4月1日号第8次医療計画の新興感染症対応をまとめる

第8次医療計画の新興感染症対応をまとめる

第8次医療計画の新興感染症対応をまとめる

【厚労省・第8次医療計画検討会】確保病床数や発熱外来の数値目標はあくまで目安

 厚生労働省の第8次医療計画等に関する検討会(遠藤久夫座長)は3月9日、第8次医療計画から新たに計画に加わることになる「新興感染症発生・まん延時における医療」のとりまとめ案を了承した。社会保障審議会医療部会に報告するとともに、予防計画との整合性を図った上で、すでに確定している5疾病・5事業および在宅医療とあわせ、第8次医療計画の指針とする。都道府県は、指針に従って第8次医療計画を来年度中に策定。2024年度からの開始となる。
 次の新興感染症が何かを現時点で予測することは困難だが、これまでの教訓を生かすことのできる新型コロナ対応を念頭に計画を策定する。実際に発生した新興感染症が事前の想定と大きく異なる場合は、国が適切に判断し、その感染症に合わせて、都道府県と医療機関の協定の内容を見直すなど、状況に応じた機動的な対応を行う。

順次、対応医療機関を拡大
 都道府県と流行初期医療確保措置の協定を結んだ医療機関は、新興感染症が発生し、「全国的かつ急速なまん延により国民の生命および健康に重大な影響を与えるおそれがある等の新興感染症」である旨の厚生労働大臣の公表後に対応が要請される。その前の段階では、現行の感染症指定医療機関が対応する。感染症指定医療機関は2022年12月時点で345病院となっている。
 厚生労働大臣の公表後、流行初期医療確保措置付きの協定締結医療機関には、感染初期からの対応、ピーク時には一定規模以上の病床確保を行うことなどが求められる。流行初期医療確保措置とは、感染症医療を行った月の診療報酬が、流行前の同月を下回った場合に、その差額を支払う措置だ。これは新興感染症の支援のあり方が決まるまでの措置であり、新型コロナ対応で言えば、新型コロナ対応の診療報酬特例や補助金が準備されるまでの間の暫定的な対応との位置づけである。
 3か月程度を想定した一定期間経過後は、公的医療機関を中心に他の医療機関も加わり対応する。厚生労働大臣の公表後6か月後をめどに、順次速やかにすべての協定締結医療機関での対応を目指す。
 実際の必要病床数などは、新型コロナ対応と同様に、各都道府県がフェーズ設定の考え方に基づき、対応する。一方、国は、改正感染症法において、感染症発生・まん延時における、広域的な人材の派遣や移送などの総合調整権限が盛り込まれたことや、感染症等に関する新たな専門家組織の機能強化の議論を踏まえ、司令塔機能を果たす。
 都道府県が医療機関と協定を締結する際には、新型コロナ対応の実績を参考に、関係者間で協議を行い、各医療機関の機能と役割を考慮する。通常医療の確保の必要性も強調された。
 とりまとめでは、各医療措置協定について、◇病床◇発熱外来◇自宅・宿泊療養者・高齢者施設での療養者等への医療の提供関係◇後方支援◇人材派遣の項目で整理している。

約1.5万人に対応できる病床確保
 協定締結医療機関による病床確保では、新型コロナの重点医療機関の施設要件を参考に、酸素投与・呼吸モニタリングを行うことができ、都道府県の要請後、2週間以内をめどに即応病床とすることを求められる。あわせて、医療従事者の確保が重要となるので、自院の医療従事者への訓練・研修などを通じ、対応能力を高める。
 数値目標は、新型コロナが発生し約1年後の2020年冬の新型コロナ入院患者(約1.5万人、うち重症者約1,500人)に対応できる体制を想定した。新型コロナでは、総病床数400床以上の重点医療機関(約500機関)で約1.9万床の対応規模があった。1医療機関で30病床を想定すれば、500医療機関で1.5万床になる計算だ。
 協定締結医療機関による発熱外来では、新型コロナ対応の診療・検査医療機関の施設要件を参考に、時間・空間分離を行った発熱患者等専用の診察室を設け、院内感染対策を適切に実施できる体制が求められる。
 数値目標は、新型コロナが発生し約1年後の2020年冬の新型コロナ外来患者(約3.3万人)を想定。総病床数200床以上で入院が可能な診療・検査医療機関(約1,500機関)が、例えば1日20人以上を診療すれば、約3.3万人の対応規模になるとした。
 病床確保では400床以上、発熱外来でも200床以上の病院が目安とされたことについて、全日病副会長の織田正道委員は、その規模の病院でなければ対応する必要がないという誤ったメッセージを送ってしまうということを含めて、「病床数の目安を持ち出すと混乱する」と注意を促した。厚労省の担当官も、「新型コロナ対応の数字を上回る体制ということで例示した。誤解を招かないよう、目安に過ぎないことを丁寧に説明していきたい」と述べた。
 また、想定を超えるような事態が生じた場合には、数値目標を変更することがとりまとめに盛り込まれた。
 他の委員からも、「非常に多くのことが書かれていて、簡単には理解できない文言もある」(岡留健一郎委員・日本病院会副会長)なかで、時間を経るにつれ、数字が独り歩きし、数字をあわせることだけが都道府県の目標になってしまうことを懸念する意見が出た。
 一方、診療所も、感染症対応ができる場合は、できる限り協定を締結することを求める。すべての医療機関に、協定締結の協議に応じる義務があるが、都道府県は、地域における感染症医療と通常医療の役割を確認し、感染症対応を行うことができない診療所にも連携を促す考えだ。
 自宅・宿泊療養者には、各機関や事業所が連携し、往診やオンライン診療、訪問看護、医薬品対応などを行う。数値目標は、新型コロナで対応した最大値として、2022年12月時点の約2.7万医療機関、約2.7万薬局、約2,800訪問看護ステーションを目指す。
 入院調整については、「都道府県において、連携協議会等を活用し保健所や医療機関、高齢者施設等との連携強化を図る」。病床がひっ迫する恐れがある際には、新型コロナ対応での実績を参考に、国が入院対象者の基本的な考え方を示し、都道府県が、「地域の関係者間で、入院対象者等の範囲を明確にしながら、患者の療養先の振り分けや入院調整」を行うことになる。
 全日病会長(日本医師会副会長)の猪口雄二委員は、地域の関係者がリアルタイムで受入可能病床情報を共有できる仕組みについて、「できるだけ早く全国統一のシステムを整備してほしい」と要望した。

 

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