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ホーム全日病ニュース(2023年)第1042回/2023年10月15日号2024年度診療報酬改定の基本方針を議論

2024年度診療報酬改定の基本方針を議論


医療保険部会に出席する猪口会長

2024年度診療報酬改定の基本方針を議論

【社会保障審議会 医療保険部会・医療部会】全日病の正副会長が意見表明

 厚生労働省は9月29日、社会保障審議会の医療保険部会と医療部会に2024年度診療報酬改定の基本方針の「基本認識」と「基本的視点」の案を提示した。基本認識の案として、物価高騰・賃金上昇への対応が盛り込まれた。日本医師会副会長として医療保険部会に出席している全日病の猪口雄二会長は、医療現場の人材確保のために、次期改定では医療機関の職員の賃金引上げを可能とする水準にすべきと訴えた。
 厚労省が示した基本認識の案には、①物価高騰・賃金上昇、経営の状況、人材確保の必要性、患者負担・保険料負担の影響を踏まえた対応②全世代型社会保障の実現や、医療・介護・障害福祉サービスの連携強化、新興感染症等への対応など医療を取り巻く課題への対応③医療DXやイノベーションの推進等による質の高い医療の実現④社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和―が盛り込まれた。
 基本的視点の案には、⑴ポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携の推進⑵現下の雇用情勢を踏まえた人材確保・働き方改革等の推進⑶安心・安全で質の高い医療の推進⑷効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上―。
 基本的視点の⑴~⑷のそれぞれについて、「具体的方向性」が示された。⑴については「地域医療構想・地域包括ケアを踏まえた医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価」や「かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師の機能の評価」などがあげられている。
 ⑵については、「医療従事者の人材確保や賃上げに向けた取組み」や「働き方改革に向けての取組みの推進」が示された。⑶については、「食材費をはじめとする物価高騰を踏まえた対応」「アウトカムにも着目した評価の推進」などがあがっている。⑷については、医薬品関係の論点があげられた。

「物価上昇への対応を」猪口委員
 医療保険部会で、全日病会長の猪口雄二委員は「次回の診療報酬改定では、現在の物価上昇・賃金上昇の状況を十分に反映させてほしい。医療制度の持続可能性という意味でも、すべての医療機関の経営の状態を安定化させることが重要だ」と訴えた。
 猪口委員は、医療業界から他の産業に人材が移る事例が起きていると紹介し、「現状の人手不足のなかで、医療の従事者のみ待遇が改善できなければ、医療に人が集まらなくなってしまう。次期改定では医療機関の職員の賃金をしっかり確保できるようにすることを強く要望したい」と述べた。
 医療部会で全日病副会長の神野正博委員は、基本的認識の一番目の例にあげられている物価高騰・賃金上昇への対応が、改定の基本的視点には記載されていないことを問題視。「人件費を3%上げるためには6,100億円必要で、そのために診療報酬改定で2.19%の引上げが必要である」と訴えた。
 また、改定の「具体的方向性」に「かかりつけ医の機能の評価」と書かれたことについて、「かかりつけ医についてはこれまで議論してきていないので、整理が必要だ」と指摘した。

 

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