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病院のあり方に関する報告書

主張・要望・調査報告

  • 2011年版

第3章 医療・介護提供体制

医療提供体制

 医療提供体制は、疾患のそれぞれの発生頻度により整備目標が変化し、先に述べた医療圏の設定によりそのあり方は大きく左右される。また、地域の事情(人口密度、交通システム等)や時代の変化により、医療圏における医療必要性は変化してゆく。

 いつでも・どこでも・均一な医療サービスを・誰もが受けることができる、というような提供体制は有り得るであろうか。二次医療圏で考えれば、一定以上の人口が生活する地域に、おおよそ全科の急性期入院医療を提供できる病院が存在することが整備目標となろう。

 このような基幹的病院は、現状で500床規模、将来の平均在院日数短縮を考えても300床規模は必要であろう。この病院の守備範囲の人口は10万人が目安となる。現状で 500床規模の病院の機能を、200床と300床の2箇所で持つことは困難である。一定規模であるからこそ持ちえる、多分野の専門医や医療関係職種の配置、高度な医療機器の整備等が必要だからである。このような基幹的病院の他に、各生活圏域で軽度~中等症の急性疾患に対応できる入院施設、基幹的病院から転院してリハビリテーションや引き続き入院を行う亜急性期対応の病院が必要である。一方、医療の重症性から長期的入院を余儀なくされた患者には、慢性期(現行の医療療養病床)における入院が必要となる。

 一方、外来の機能分化はどのように考えるべきか。日本の医師教育は過去一貫して専門医育成に向かっていった。医療の高度化に耐えられる教育システムにはこの方法しかなかったのかもしれない。しかし、その弊害として医師は専門医ばかりになってしまった。現在、世の中に必要と考えられている医師像の一番手は、まずは何でも診ることができ、必要に応じて適切に専門医を紹介できる、プライマリケアを担う医師である。また、初期救急に対応できる救急医も必要である。

 このような医師の存在を前提に、外来医療機能分化を考えてみたい。

1.外来医療のあり方

 全日病は、患者の視点に立った効率的なアクセス確保の点から外来のあり方を次のように機能分化することを提言した。
プライマリケア機能
専門医機能
コンサルテーション機能
救急機能

①プライマリケア機能

 プライマリケア機能は、まず患者が医療の必要性を感じた時に受診する医療である。ここでは多くの医療が完結されるが、必要に応じて専門医や入院医療が紹介される。また、慢性疾患の管理についてもプライマリケア医が主体となる必要がある。患者の希望に基づき、生活面を含めたケアを行う。一部の国で見られるような受診抑制は意味しない。この機能を担うプライマリケア医については後述する。

②専門医機能

 専門医機能は、多くの日本の医師が持っている機能である。診療所、病院を問わず、専門医が存在している。プライマリケア医では対応困難な患者の治療に直接従事する。しかし、外来医療において安定期になった場合、プライマリケア医に任せるべきであろう。

③コンサルテーション機能

 コンサルテーション機能は、主として大規模病院にいる専門医が担う医療である。プライマリケア医が日常の疾病管理を行うに当たり、治療方針を決め、あるいは定期的に評価する。専門医機能との相違は、専門医機能では直接患者の治療を行うことに対して、コンサルテーション機能では、治療の主体はプライマリケア医であり、医師(多くは専門医)はプライマリケア医の支援を行う。

④救急機能

 救急機能は、現状一次(初期)・二次(入院)・三次(救命)に分類されているが、実際には明確に機能分化されて運用されているわけではない。

 現実的に、どの医療機関を受診するかは、患者および家族、救急隊員の判断となる。その判断に医療・医師が介在していないことには質的に問題がある。特に、脳卒中の初期判断、心筋梗塞の判断等は、その判断により受診すべき医療機関が全く異なる。

 今後、救命救急センターのように生命にかかわる重症例に対応できるシステムを、二次医療圏における基幹的病院において、更に整備していく必要がある。一方で、初期救急の対応は、一次医療圏、生活圏における病院、救急診療所が対応すべきであろう。この場合、必要に応じて救命救急センターや高度な救急医療が可能な医療機関と相互に連携できるシステムが重要である。

 また、現状のような各科の専門医ばかりであると、このような救急システムは機能せず、救急患者は救命救急センターに過度に集中してしまう。一次医療圏、生活圏において、軽~中等症の救急患者が適切に治療を受けることができるためには、多くの医師が救急医療の実践者として経験を積む必要がある。また、救急医として認定された医師が、一次医療圏、生活圏における多くの医療機関に存在することが望まれる。

(プライマリケアを担う医師や専門医の資格と研修制度)

 国民にとって望ましい外来医療は、通院可能な距離に信頼のおける医師がおり、日常の健康管理はもちろん、急性期疾患罹患時にも診療をしてくれる医療の存在であり、また、入院を要する場合には、適切な施設の紹介が受けられることであろう。

 このような要望に応えるには、現在、「かかりつけ医」、「家庭医」、「総合外来医」等と呼ばれているプライマリケアに従事する医師の存在が必要である。

 日本でプライマリケアに従事する医師の多くは、大学や大病院で専門医として訓練を受けた後、診療所を開設したり中小病院に就職したものが多い。したがって、プライマリケアに関する系統的な教育を受けていない場合が多く、その担当範囲、技術、経験等に個人差が認められる。

 一方、専門分野についても、急性発症症例の診療を日常的かつ継続的に行うことのできる病院勤務医と、この機会を得ることの少ない一般開業医とでは、最新の診療に関する経験の差が開業後年数を経るにつれ生じることが否めない。

 国民の評価を得るような、プライマリケア医と専門医との連携の仕組みを構築するには、資格制度の確立、十分な生涯教育の実施、一定期間ごとの試験等により診療レベル維持を図らなければならない。日本には学会主導の専門医制度があるが、学会ごとにその認定基準が異なり、「専門医認定制協議会」によりその標準化が図られようとしている。今後、専門医制度が標準化された上で、国民にも十分な情報開示がされることが望まれる。

全日病は、以下の制度の創設を提唱する。

①プライマリケア医は、2年間の卒後研修の後に、内科・外科・小児科・その他診療科の研修を受け、その後に認定試験を受けて資格を得る

②各専門医は、卒後研修後に特定の診療科で、更に数年間の研修プログラムを終了し、認定試験を受けて資格を得る

③プライマリケア医および専門医の診療レベル維持のため、学会や研修会における研鑽を義務づけ、更に、一定期間ごとに資格を更新する

 医療界が自ら主導し、プライマリケア医、専門医の統一した資格認定と継続研修の仕組みを構築すべきであり、全日病も、その実現のために努力しなければならない。

2.入院医療のあり方

 入院医療の機能分化を考える時、病院単位、病棟単位、病床単位のそれぞれの単位で考えることができる。病院単位にすると、人口過疎地域では、急性期から慢性期までひとつの病院が担っている場合がある等、現状にそぐわないこととなる。一方、病床単位となると、人員配置等施設基準が複雑になりすぎる。そこで、本報告書は以前より病棟単位での機能分化を提唱してきた。

 入院医療の機能分化により、病棟は以下の4種類となる。

①高度医療病棟

 現在、大学病院本院や一部のナショナルセンター等が特定機能病院に認定されているが、そこで行われている診療の大半は一般の急性期病院の診療と同じである。

 稀な疾患(疾患を明示的に特定する)の診療や先進医療(遺伝子治療、特殊ながん治療等)を高度医療というべきであり、今後、対象疾患・医療内容等を十分調査した上で、「高度医療病棟」として、医療機関単位ではなく病棟単位で認定し、「特定機能」の名称を廃するよう提案する。したがって、現在の特定機能病院の病棟機能は、「高度医療病棟」と現行病床の大部分を占める「急性期病棟」に区分されることになる。

②急性期病棟

 今後、急性期病棟は、外科的処置を要する疾患や重症度の高い患者に対応する病棟に特化されて行くべきである。そこで提供される医療は、EBM(Evidence Based Medicine、根拠に基づく医療)にもとづいて作成された診療ガイドラインにしたがって、個々の病院の機能に合わせたクリニカル・パス等を用いた診療が主体となる。急性期病棟には3つの類型が考えられる。

1) 地域(二次医療圏)基幹的病院の場合、複数の急性期病棟から構成され、現状の急性期医療では500床規模、将来は平均在院日数短縮に伴い300床規模の病院と考えられる。また基幹的病院には、救急救命センターもしくは高度な救急医療体制を併設することが望まれる。

2) 特定の科目(脳外科、整形外科、耳鼻科、眼科等)に特化して、急性期医療に集中する病棟(病院)が存在し得る。この場合、専門性は高くなるが地域性は薄くなる。

3) 規模を問わず、軽~中等症の急性期疾患、救急疾患への対応を行う一次医療圏、生活圏における急性期病棟は、特に高齢者の救急・急性期入院医療において、極めて重要な役割を持つ。

③亜急性期・回復期病棟

 現行診療報酬上、一般病棟の一部として亜急性期入院医療管理料算定病床が認められ、回復期リハビリテーション病棟は病棟単位で認められている。しかし、亜急性病床の多くはリハビリテーションの対象患者が入院していることから、急性期後の入院医療(post acute)として、まとめて分類すべきであろう。ただし、回復期リハビリテーション病棟は、リハビリテーションに特化し、地域性は薄いものとなるのに対し、亜急性期病棟は地域密着型の病棟と考えられる。

 亜急性期病棟の対象疾患は、リハビリテーション対象者の他に、慢性呼吸器疾患や心疾患、慢性肝・胆・膵系疾患の増悪期、コントロール不良で合併症のある糖尿病、病状が不安定もしくは進行期の神経難病、抗がん剤治療のため繰り返し入院が必要な悪性腫瘍等である。

④慢性期病棟

 慢性期病棟の機能は、長期に渡り医療行為を要する患者の入院医療を提供する病棟である。現時点では医療療養病床に分類されている。

 現状の医療療養病床は、2010年の医療区分の導入により、長期に渡り入院医療を要する患者を高い頻度で受け入れるようになった。これは療養病棟の診療報酬が医療度別・状態別分類による包括支払方式(1日定額)となったことによるものであり、医療連携の観点からは大いに評価される。しかし、実態調査のコストに見合う報酬が担保されていない点や、介護施設では医療的管理が困難であるにもかかわらず、医療区分で評価されていない状態が存在するので、医療区分等運用に関する追跡調査を行い、改めて科学的な医療区分の見直しを図るべきであろう。

 なお、現在一般病床に分類されている「障害者病棟」や「特殊疾患病棟」は、慢性期病棟に区分されるべきである。

3.在宅医療のあり方

 今後、医療・介護を要する高齢者は明らかに増加する。また悪性腫瘍の治療等においても、在宅医療は極めて大きな存在となる。在宅医療・介護を推進するためには、地域の基幹的病院、在宅療養支援病院および診療所、訪問看護ステーション、各介護保険施設等の連携が重要である。

 地域に密着した医療・介護の連携がない限り、在宅医療の推進、地域包括ケアの確立は困難であろう。その確立のためにも、全日病の提唱する「地域一般病棟」の果たす役割は重要である。

(地域一般病棟)

 「地域一般病棟」の概念は、2001年9月、四病院団体協議会の高齢者医療制度・医療保険制度検討委員会報告書において、全日病を中心に纏められた概念である。その要旨は下記のようなものである。

 急性期医療を担う病院は、急性専門病棟と地域一般病棟に分化することが望ましい。
・急性専門病棟:医療密度が高い急性期医療に特化した施設
・地域一般病棟:リハビリテーション機能・ケアマネジメント機能・高齢者にふさわしい急性期医療・後方支援機能・ターミナル対応機能を持つ施設

 その後、全日病は「地域一般病棟」の概念形成と診療報酬上の評価を要望し、2004年改定において「亜急性期入院医療管理料」が新設された。

 この概念を提唱してから10年になる。その間、医療・介護を取り巻く状況は大きく変貌している。診療報酬のマイナス改定や、医師・看護師不足、更に「医療崩壊」という言葉が人口に膾炙したほどである。多くの中小病院が診療所化し、民間病院のグループ化も推進されている。その一方では、地域の基幹型急性期病院は、患者の集中と医師・看護師不足で疲弊しており、正に「医療崩壊」を起こしつつある。このような状況を打破する方法のひとつが「地域一般病棟」の再認識と考える。医療法上、一般病床の名称が変わるならばこの名称も変えるべきかもしれないが、要は、地域(主として一次医療圏・生活圏)の医療を支える地域密着型病院(病棟)である。その役割は、

・急性期医療における連携

 生活圏における住民、在宅療養中の患者、介護保険施設等の入居者等の軽~中等症の急性期の入院需要に応えるが、更に高度な医療が必要と判断された場合、基幹的病院等に紹介転送する。

・亜急性期(急性期後)の連携

 リハビリテーション、病状不安定、抗がん剤療法等、急性期加療後に引き続き入院を担う、という考え方である。回復期リハビリテーション病棟とともに、亜急性期入院医療の中心となるべきである。

・救急医療における連携

 救急指定病院もしくは救急対応として、主として軽~中等症の救急を担うが、必要に応じてより高次の救急医療機関に転送する。また、救急救命センター等で高度な入院医療は必要ないものの入院が必要と判断された場合、転送受け入れを行う。

・在宅療養支援

 一次医療圏・生活圏において、在宅医療の支援は極めて重要な課題である。在宅療養支援診療所との連携、もしくは自ら在宅療養支援病院となり、地域の在宅療養の充実に貢献する必要がある。

 日本には、かつて診療所であった医療機関が病院へと拡大し、地域医療を支えてきた歴史がある。この医療機能を再評価し、連携を中心とした中小病院が地域医療を支えることで、基幹的病院への負荷を軽減することにより、急性期医療もより充実し、地域の住民も介護施設等の入居者も安心して生活できる、地域包括ケアが実現できると考える。

介護提供体制

 2000年に介護保険制度が施行されてから、10年以上が経過した。この間、介護費用の圧縮、居住費自己負担等、様々な方法で自己負担増が強いられてきた。一方では、要介護高齢者は増加の一途を辿っており、施設ケア、在宅ケアを問わず、質はもちろんのこと量の確保が避けられない問題となっている。また、制度上介護保険三施設(介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護療養病床)は、従来の法的根拠が異なることによって、異なる取り扱いが存在した。

 介護のための入所施設はどのように考えるべきであろうか。現在は介護保険による運営規定のほか、医療法に基づく介護療養型医療施設、介護保険法に基づく介護老人保健施設、老人福祉法に基づく介護老人福祉施設(特養)の、介護保険三施設を中心に、有料老人ホーム、ケアハウス(軽費老人ホーム)、養護老人ホーム、適合型高専賃などの特定施設、グループホーム等、多くの種別の施設や住宅が作られている。更に、介護療養型医療施設の廃止(2011年度末)に伴い、介護療養型老人保健施設が新設され、そこへの転換が促された。しかし、転換が進まず、結局は政策の見直しとなった。

 このように多種・多様の介護保険施設・住宅が存在することは、国民にとって混乱を招くだけである。これらの施設・住宅は、共通の考え方の下に、国民に解りやすい制度にするべきである。本報告書では、介護保険施設の一元化を基本構想とする。一元化された後は、それぞれの施設において、自ら提供可能な医療・介護機能を明示する。その項目としては、下記が考えられる。

 

・医師・看護師による医療提供体制
・維持的リハビリテーション提供体制
・認知症対応体制
・24時間看護提供体制
・終末期医療・介護提供体制
・その他(施設の特徴等)

 

 これらの機能を明示することにより、利用者・家族はニーズに応じて施設を選択することができる。また、今後の要介護高齢者の増加を考える時、個室・ユニットケア等に加えて、従来型の介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養病床における多床室も、費用面や重度認知症の増加等を考慮すると、充分に活躍の場があると考えられる。新たな基準により既存施設を淘汰するのではなく、既存施設を活用可能な場面で十分にその能力を発揮させることが重要である。この考え方は超高齢化社会において極めて重要なものとなろう。また、個室・ユニットケアでは、多床室に比較すると、より多くの看護職員・介護職員が必要である。個室・ユニットケアは対象となる患者・利用者を明らかにし、資源投入に見合った効果が得られているかについて、その機能、効果を再検証する必要がある。