はじめに:「病院のあり方に関する報告書」(2011年版)

主張・要望・調査報告

「病院のあり方に関する報告書」

はじめに

 病院のあり方に関する報告書は、1998年以来6版目となる。医療に関する基本的な考え方として「医療は、患者(国民)と医療人が協力して構築すべき公共財であり、国民の健康・生活に直接関係する点で極めて重要である。従って、医療に関する諸議論は、広く国民、関係諸団体、医療人が参加し、議論の過程について透明性が確保された上で、かつ長期的な視野に立って行われる必要がある」と示してきた。
 社団法人全日本病院協会(以下:全日病)は、約2,300の会員病院を有する団体として、「関係者との信頼関係に基づいて、病院経営の質の向上に努め、良質、効率的かつ組織的な医療の提供を通して、社会の健康および福祉の増進を図ることを使命とする」という理念を達成するため、本報告書を具体的な活動の基本と位置づけ、各種委員会を中心に種々の取り組みを重ねてきている。
 これまでの本報告書に共通する柱は、会員病院が質の高い医療提供のために行うべき具体的な取り組みを示すと共に、望ましい持続可能な提供体制のあり方を提言し、会員病院の対応に関して助言を行うというものである。
 本報告書作成にあたり、「高齢社会がピークに達する2025年の医療・介護提供体制のあり方の検討と提言」を病院のあり方委員会に委嘱した。予測される超少子高齢社会における医療・介護提供体制は既存体系の延長では不可能であり、早急な検討課題と考えたからである。
 3月11日に発生した東日本大震災は、国や地域における危機管理のあり方に大きな課題が内在していることを示した。社会保障として、公共財としての医療のあり方にも大きな問題提起をした。
 今後、震災からの復興計画における医療・介護提供体制の構築は、将来の日本の医療提供体制の構築に多くの示唆を与えるであろう。
 本報告書が、将来予測される財源難と労働力不足という社会環境のなかでの、望ましい医療提供体制の構築の議論において、広く関係者に利用されることを期待している。
 また、今後も全日病が医療の環境整備と充実に向けて自立・自律した組織として主体的に関わるという意思表明でもある。

社団法人全日本病院協会
会長  西澤 寬俊