主張・要望・調査報告

病院のあり方に関する報告書

主張・要望・調査報告

  • 2011年版

参考資料

【資料1.現実的シナリオ作成に関して検討した内容】

 社会保障費の伸びの抑制即ち医療費の伸びの抑制、および、人口の地域差拡大の中で確立すべき医療介護提供体制

1.人口減少は主要大都市部では少なく、地方の過疎化が中心

① 大都市部での医療介護提供は現状を踏襲

② 地方での再構築は必須である
     ⇒・医療の緊急性、地域性、専門性に応じて特化した複数の医療機関の機能連携
  ・介護までの継続した地域包括ケア、ネットワークの構築
     ⇒・提供体制確立のための制度的な誘導
  ・医師の適正配置システムの構築
  ・行政の責務としての医療圏ごとの看護師やコメディカルの養成配備
  ・医療圏ごとの医療内容の定期的な見直し
     ⇔ 最低限、救命救急の確保等急性期医療ニーズに対応した医療提供体制の構築
  ・救命救急の確保:医療圏を越えた協調協働の仕組みづくり
              ドクターヘリ等の活用 
              救命救急専門医・救命救急士配備
              映像転送システムの構築 
              必要に応じてドクターカーシステムの構築
  ・日常の疾病管理:保健師や医師の定期巡回制度あるいは小型・非侵襲・ネット接続機能付き健診・検診機器等、ICTを使用した徹底した健診・検診制度の構築

2.超少子高齢社会の若年労働人口減少に伴う医療介護従事者不足

 ① 自動健康チェック機器の開発使用/情報転送システムの構築

 ② 高齢者の社会的活用、女性の就業環境の整備

 ③ 地域相互扶助システム構築または外国人労働者の受け入れ

3.医療費・介護療養費の伸びの増大

  ⇒医療介護ニーズ拡大に対する適切かつ効率的医療介護提供
  ①かかりつけ医/専門医受診・連携ルールの確立

  ②診療報酬体系の見直し
   救命救急医療に対する出来高払い
   一般救急・急性期外来診療に対する包括払い
   慢性期疾患管理に対する包括払い
   地域住民の健康管理に対する人頭払い
   急性期・慢性期入院医療に対する包括払い

  ③高齢者も含めた国民の健康維持
   ⇔生活習慣病のみならずがんに対する検診や運動食事指導の徹底等、予防と健康維持管理システムの構築
   ・疾病の早期発見早期治療の仕組みづくり
    乳幼児健診/学校検診/会社検診/特定検診等の徹底
    小型・非侵襲・ネット接続機能付き検診機器の開発使用
    遺伝疾患への対応
   ・健康管理/主要疾患に関する国民への徹底した情報提供
    国によるマスメディアを利用した徹底した啓発義務
    特定健診非受診者、喫煙者等健康管理を怠る者が関連疾患に罹患した場合の自己負担割合変更の導入
   ・「社会保障カード」「健康管理/疾病管理/介護手帳」の導入と国の責任/国民の義務
    ⇔高齢者・障害者のための訪問診療制度の確立
    映像/自動検査機器による遠隔診断・診療の許可

  ④医療費総枠予算制の導入
   ⇔保険診療で行う医療提供の範囲の決定
   ・風邪、軽症外傷等大衆薬で対応可能な疾病に関する保険による投薬制限
   ・特に超高齢者に対する最先端医療の適用の検討=混合診療の導入
    高額な免疫等治療、陽子線・重粒子線治療、再生医療や臓器移植
   ⇔薬剤使用等に関する徹底した教育と標準化
   ・慢性期医療も含めた標準的医療の徹底
   ・遺伝子情報と疾患・薬剤のマッチング―オーダーメイド治療(個人情報保護に特段の留意)
   ・明らかに作用機序の異なる新薬以外は、ジェネリック薬剤の投与推奨

  ⑤地域性を100%取りいれた介護提供体制の構築
   ⇔一定の基準に従った介護提供
   ・施設介護/在宅介護決定に関する基準
    介護度/家庭環境/地域のおける介護要員数
    情報の一元化と管理体制の確立
   ・介護施設の十分な整備(将来用途変更も考えた設計)
    障害者の社会参加の仕組みづくり

【資料2.進歩する科学技術】

診断・治療や介護提供に関する科学技術の進歩
(2007年2月26日イノベーション25戦略会議 中間取りまとめ)
             (○○年/○○年 ― 技術的実現時期/社会的適用時期)

 

  • ・家庭における健康管理と異常時の診断システム(2012年/2018年)
  • ・マイクロマシンに基づく超小型健康管理デバイス(2015年/2025年)
  • ・在宅で測定した個人の医療情報に基づいて、医師がインターネットを経由して診断し、定型的な治療指示・薬剤処方であれば処置する遠隔医療(-/2015年)
  • ・自宅にいながらにして自分の電子カルテを見ることができる、個人情報が保護された安全な広域医療情報システム(2008年/2013年)
  • ・人骨とほぼ同等の機能を有する生体用セラミックス(2012年/2020年)
  • ・神経幹細胞の移植により、運動麻痺の回復を促進する治療法(2020年/2030年)
  • ・コンピュータを用いて脳の運動関連活動を信号化・伝達することにより、脊髄・末梢神経を介さずに義肢等を随意的に制御する技術(2018年/2029年)
  • ・アルツハイマー病の根治薬(2019年/2029年)
  • ・個人の体質に合った副作用の少ないがん治療(2014年/2023年)
  • ・動脈硬化病巣の局所治療が可能な遺伝子治療法(2015年/2024年)
  • ・がんに対する遺伝子治療法(2018年/2029年)
  • ・家族性高コレステロール血症の遺伝子治療法(2016年/2024年)
  • ・アレルゲン計測技術に基づいたアレルギーを起こさない食品の製造技術(2014年/2021年)
  • ・被介護者に不快感・不安感を与えず、入浴等について介護者を支援する介護ロボット(2012年/2016年)
  • ・庭の手入れ、病人介護、家事等様々な目的に応じたロボットをリースするサービス(2013年/2021年)
  • ・家庭に1台、掃除、洗濯等を行う「お手伝いロボット」が一般化(2015年/2023年)
  • ・監視カメラがネットワーク化され、未然に挙動不審者を発見する自動監視システム(2008年/2014年)
  • ・公共的空間に設置された監視カメラで認識し、人相・しぐさ・顔かたち・音声等を解析することにより、指名手配犯・重要参考人等の所在確認を支援する技術(2012年/2019年)
  • ・防災、防犯、介護支援機能に加え多様なサービスを利用者に提供する生活支援型ロボット等を活用した家庭用セキュリティシステムが相互に接続された地域セキュリティシステム(2014年/2021年)
  • ・新聞紙を代替できるような柔軟性(薄く柔らかい)をもつ携帯電子ディスプレイ(2011年/2016年)
  • ・新聞紙程度の大きさと薄さをもち、同程度の分解能を持つ折りたたみ型ディスプレイ(2015年/2023)

【資料3.「医療計画の見直し等に関する検討会」ワーキンググループ報告書 (平成16年9月24日)

 身近で一般的な医療を確保できる圏域として、「保健医療施策を担う中核的な行政機関としての保健所が原則として各1か所含まれ、範囲が標準的なもの」とすると、「二次医療圏の平均的な人口規模は約35万人で圏域数が341から369前後で設定されてきており、広域市町村圏等の数とも一致し、日本人の日常生活圏と重なる」ことから、全体としては一定の合理性を認める。

 しかし、以下の問題点もある。

(1)人口、面積の大きなばらつき

 人口全体の約半分が全医療圏の7分の1に集中しており、二次医療圏の2/3は人口が平均以下であり、人口規模最大の名古屋は実に最小・隠岐の122倍の規模となっている。また、面積でも最大の十勝は最小の南河内の273倍の広さとなっている。

(2)辺縁問題

 二次医療圏の設定が都道府県単位であることから、県境地域の住民の受療行動が反映されていない。

(3)大都市問題

 人口が密集し、医療機関もそれに対応して多数存在、しかも交通網の発達により、住民の受療行動が一定の地域内で完結しないため、大都市においては、全体を一つの二次医療圏として捉えるべきとの考え方があり、二次医療圏の概念を実現しにくい状況もある。

(4)二次医療圏と日常生活圏の不一致

 一部の二次医療圏では市町村等の既存の行政区域を重視し、日常生活圏や住民の受療行動と合わないものも存在している。

(5)消防本部圏域、老人保健福祉圏域等他の行政区域等との不一致

 都道府県においては、様々な行政区域が存在しており、特に、消防本部圏域、老人保健福祉圏域等、医療と関連の深い行政区域と必ずしも一致していないところがある。

(6)明確に一次、二次、三次医療圏と振り分けるのが困難な医療の存在

 臓器移植等、三次医療圏を越えて広域的なネットワークが存在する医療や救命救急センター、総合周産期母子医療センター等、二次医療圏と三次医療圏の中間に属するような医療が存在している。

(7)医療の質及び効率性と医療の近接性には、トレードオフの関係にある

 医療の質及び効率性を高めるためには、マンパワーの確保等の観点から医療資源の集中化が必要である一方で、医療の近接性が犠牲にされる場合がある。

 これらの現状を踏まえた提言の概略は以下の通りであるが、いずれも 5年を経た現在でも的確な内容であり速やかな実行が必要である。

(1)地域特性への配慮

 生活時間が短く資源が集中している大都市圏やその郊外、更には医療資源が集中している地方の大都市と、人口や患者数が少なく、医療資源も相対的に少ない郡部等、地域特性を考慮する必要がある。

(2)二次医療圏における必要な医療の確保

 身近で一般的な医療については、二次医療圏における確保が基本となる。地域における住民の年齢構成、疾病構造等を勘案した上で、医療というサービスの消費者である住民の視点から医療の質及び効率性と医療の近接性のバランスを勘案して医療資源の確保に関する具体的数値目標を設定すべきである。この場合、患者数が少なく高度な技術、専門医の確保が困難な分野等は、医療の近接性をある程度犠牲にしても医療資源を集中化することが望ましく、慢性疾患のケア等、医療資源の確保が比較的容易であり、継続的な医療が必要とされるものについては医療の近接性が重視される必要がある。

 目標を達成するために必要な医療資源が確保できる規模が二次医療圏となり得る。その際、市町村等の既存の行政圏域にとらわれず、住民の受療行動、救急搬送等の実施状況や消防本部圏域、老人保健福祉圏域等、医療と関連の深い行政区域等に照らし、地域として完結するものとすべきである。

【資料4.一次・二次・三次医療圏の法的取り扱い】

一次医療圏

  • ・身近な医療を提供する医療圏
  • ・医療法では規定されていない保健所(地域保健法第5条の2)や介護保険制度等との兼ね合いから、市町村を単位として設定

二次医療圏

  • ・特殊な医療を除く一般的な医療サービスを提供する医療圏(医療法第30条の3)
  • ・「地理的条件等の自然的条件及び日常生活の需要の充足状況、交通事情等の社会的条件を考慮して、一体の区域として病院における入院に係る医療を提供する体制の確保を図ることが相当であると認められるものを単位として設定すること」(医療法施行規則第30条の29)。 複数の市町村を一つの単位として設定

三次医療圏

  • ・最先端、高度な技術を提供する特殊な医療を行う医療圏(医療法第30条の3)
  • ・「都道府県の区域を単位として設定すること。ただし、当該都道府県の区域が著しく広いことその他特別な事情があるときは、当該都道府県の区域内に2以上の当該区域を設定し、また、当該都道府県の境界周辺の地域における医療の需給の実情に応じ、2以上の都道府県の区域にわたる区域を設定することができる」(医療法施行規則第30条の29)。(例:北海道6、長野4)

【資料5.二次医療圏全国データ】

・厚生労働省 平成21年地域保健医療基礎統計
  第2章 二次医療圏編(平成20年医療施設(静態・動態)調査)
   第10表 都道府県・二次医療圏別にみた医療施設数
   第12表 都道府県・二次医療圏別にみた医療従事者数
   比率の算出に用いた人口(二次医療圏別人口、平成20年10月1日現在、市区町村別人口)
   二次医療圏-市区町村対応表 (平成20年10月1日現在)

・国土交通省 国土地理院
  「平成21年全国都道府県市区町村別面積調査」 (平成21年10月1日現在)

・都道府県別医師数病院数診療所数 平成21年厚労省資料

都道府県別 人口10万人当り医療施設数他ランキング(平成21年)

【日医総研 二次医療圏別に見た医師不足と医師偏在(2008年版)】
無医町村数
 2006年23町村。その後、市町村合併により減少するかと思われたが、2008年26町村に拡大
無医町村住民
 2006年5.8万人から2008年6.3万人と2年間で0.5万人(8.7%)増加
 2008年にあらたに無医町村になったのは、それまで診療所医師が1人しかいなかったところがほとんどであり、開業医の死亡や公立診療所の閉鎖等が理由。
 医療施設従事医師数1人の市町村を無医町村予備群とすると、無医町村および無医町村予備群の合計は、市町村数で全国の6.9%、住民人口で全国の0.3%(38.6万人)

【資料6.今後の地域医療のあり方として、医療連携として全国のモデルとなる医療圏】

「中空知医療圏(北海道)」 人口 124601人 医師数 252人 人口 10万対比202.2人

 地域の特徴としては、北海道における人口一極集中(190万人/560万)の札幌から電車・自動車で約1時間の通勤圏。人口当たり医師数第4位、看護師数第2位と人口対比医師看護師の供給が良好であり、胸部外科こそないが、常勤の救急医療を担う脳神経外科医、循環器内科医が配備されている。

 この地域は、北海道で最も医療連携がうまくいっている成功例である。中核病院で臨床研修施設となっている砂川市立病院に芦別市立病院から整形外科医の集約化を図る等、民間を含む周辺7病院のうち3病院から医師派遣を受け中核の砂川市立病院から民間病院を含む6病院へ逆に支援をおこなっている。砂川市立病院は、2010年10月に120億円の投資で最新の医療施設として新築されたが、救急での指導が好評で臨床研修医の応募が多く、プライマリケア医育成も開始されており、2.7万人の小都市でもマグネットホスピタルが成立しているモデル圏域である。

 隣接する奈井江町は、全国的に有名な奈井江方式を構築したが、その内容は1988年老健設立以来、20年かけた「健康と福祉の街づくり」を行い、医療介護福祉の強固な連携体制を構築している。病院の全面改築に際し開業医との協調で開放型病院とし、医療機器や検査機器の共同利用等を推進してきたが、これらが可能となった背景には、強い指導力を持った行政マンと医療提供側のパートナーとしての地域に根付いた診療所医師の存在がある。2005年には、近隣の砂川市立病院との連携も始まり、急性期は砂川市立病院、回復期、長期療養は奈井江という機能分担がなされている。

 この地域では、医療連携と共に人口12.4万人に老健・特養1,280床とグループホーム170床で100人当たり約1.2床と介護施設もバランスよく配置されているという特徴があり、医療介護の連携の状況も住民の満足度に影響することを示している。