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ホーム全日病ニュース第800回/2013年5月1日号機能分化促進へ、医療法の活用が...

機能分化促進へ、医療法の活用がより重要になるとの認識が台頭

機能分化促進へ、
医療法の活用がより重要になるとの認識が台頭

【社会保障制度改革国民会議】
医療・介護で集中討議。委員の主たる関心は財源と医療保険制度改革

 4月19日の社会保障制度改革国民会議は、委員が改革に向けた見解を相互に表明しあうなど、医療・介護をめぐる集中討議を行なった。
 見解表明において、権丈委員(慶大教授)は「病床機能の報告と地域ビジョン策定を踏まえた機能分化・連携を、補助金的手法を活用して促してはどうか」と提案した。
 また、横倉日本医師会長が参考人として出席。「かかりつけ医を中心とした“切れ目のない医療・介護”の提供体制を構築していくべき」とする意見を述べた。

 

 通常2時間のところ、この日は3時間以上をかけて、つごう12人が医療・介護に関する改革課題を明らかにし、その後、インターネット中継を断って懇談会形式で自由討論を1時間強行なった。
 12人の見解表明には、国民会議委員以外に、国際医療福祉大学の高橋泰教授(全日病広報委員会特別委員)が、権丈委員の要請で参加した。
 見解表明で、権丈委員は要旨以下のとおり、医療・介護の改革プランを提示した。

(1)厚労省医政局で検討されている「病床機能情報報告制度の導入と地域医療ビジョン策定までの流れ」を2018年度と言わずに前倒しで実施する。
(2)医療、介護、看取りにいたる継ぎ目のない地域医療・包括ケアを目標に、各地域の医療・介護の需要ピークまでの地域医療・包括ケアビジョンを作成する。
(3)ビジョン実現に向けて、都道府県は地域医療計画を、市町村は地域包括ケア計画を、一定年の間隔で策定する。
(4)それに沿った医療機能の分化・連携を促すために、消費税増収分を財源に「地域医療・包括ケア創生基金」を創設。診療報酬や介護報酬による利益誘導ではなく、まずは、医療機能の分化・連携を補助金的手法で誘導する。
(5)医療機能の分化・連携が進んだ後、補助金的手法に当てていた消費税増収分を、順次医療機能ごとの診療報酬重点配分に移行していく。

 権丈委員(写真右)は、自説の根拠となるデータとして、高橋教授が作成した、2次医療圏別の人口動態と医療・福祉資源を中長期的に予測する「2次医療圏データベース」を紹介した。
 高橋教授は、「2次医療圏データベース」の予測結果を説明した上で、
①人口動態は地域で大きく異なり、医療需要のピークの時期・程度や施設・人員も地域差が大きいこと、②まず、それぞれの地域が大都市型か、地方都市型か、過疎地域型か、さらに、他2 次圏と比べて、医療需要のピークはいつになるのか、施設や人員レベルはどうかなど、「自分の地域の特性」を踏まえた対応を検討することが重要であること、③また、これまでのような「短期(5年)の医療福祉整備計画」だけでなく、「20~30年先までの予測を考慮した中長期の医療福祉整備構想」を検討する必要があること、などを提起した。
 医療・介護に関する国民会議のこれまでの議論は、医療保険制度の持続可能性を問う中で健全な保険財源の健全性を確保するという問題意識が先行、給付と負担の関係、後期高齢者医療や国保の運営など保険制度の改革議論に偏し、提供体制をどう再編・再構築していくかという意見は断片的に述べられるに過ぎなかった。
 その点、権丈委員と高橋教授の意見は、医療・介護の提供体制を論じるうえで、1つの重要な論点を提起するものとなった。
 「診療報酬や介護報酬による利益誘導ではなく、まずは補助金的手法で誘導すべき」とする権丈委員に対して、遠藤委員(学習院大学教授・社保審医療保険部会長)は自らの見解表明で、「医療機能の分化・連携を促す手法として、診療報酬と医療法の2つは相互に補完して活用されるべきである。ただし、診療報酬にはできないものがあり、それは地域偏在の是正である。医療法には医療計画があるので、それとの連動である程度偏在の是正が可能だ。これからは、医療法による機能分化も積極的に行なっていくべきではないか」との見解を表わした。

 診療報酬による誘導に否定的な権丈委員に対して、遠藤委員(写真右)は医療法と診療報酬を補完させつつ活用していくことを提起したが、今後は、医療法がより重要となるという認識で両者の見解は一致した。
 ただし、この日の国民会議は、医療・介護提供体制よりも保険財源をめぐる議論に多くの時間が費やされ、「高齢者医療や介護への拠出金に総報酬割を導入すべき」「後期高齢者医療も国保も都道府県単位で運営すべき」といった意見に多くの支持が集まった。
 会議終了後の記者会見で、「消費税の増税分は医療等にどう投入されるのか」という質問に、国民会議の遠藤会長代理は「それは今後の議論になるが、すでに、診療報酬と補助金の役割分担をどう考えるのかという、前段の議論はなされている」と説明。国民会議の報告で、消費税増税分の使途が明示される可能性を示唆した。