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ホーム全日病ニュース第800回/2013年5月1日号厚労省が新専門医制度の報告書公表...

厚労省が新専門医制度の報告書を公表

厚労省が新専門医制度の報告書を公表

【専門医の在り方に関する検討会報告書】
表現修正めぐり関係者間の調整に1月半かかる

 

 厚生労働省は4月22日に「専門医の在り方に関する検討会報告書」を公表した。報告書は3月7日の検討会で概ね合意に達していたが、表現修正の意見が多く示されたために関係者間の調整に時間がかかり、1月半後の公表となった。
 3月7日の検討会に示された案と大筋変わっていないが、細部に関しては言い回しの変更や補足的表現の追加などが行なわれている。以下に、報告書の概要を掲載する。

「専門医の在り方に関する検討会報告書」(4月22日公表)の概要

3. 専門医の質の一層の向上について

(1)基本的な考え方
○学会主導の専門医制度は受診行動に必ずしも有用な制度になっていないため、質が担保された専門医を中立的な第3者機関で認定する新たな仕組みが必要である。

(2)専門医の位置づけについて
○新たな専門医の仕組みは、プロフェッショナルオートノミーを基盤に設計されるべきである。
○広告可能な医師の専門性に関する資格名等は新たな専門医の仕組み構築に併せて見直す必要がある。今後、基本的に、第3者機関が認定する専門医を広告可能とすべきである。
○第3者機関以外の学会等が認定する資格名(厚労省告示に規定する学会認定専門医を含む)の広告の取扱いは引き続き検討する必要がある。その際、専門医と学会認定資格との間に、名称等何らかの区別を設けることが必要である。
○新たな仕組みのもとで専門医を標榜科と関連させることも将来的には考えるべきである。
○将来的に、新しい専門医の仕組みの関係制度等への位置づけを検討することが望ましい。

(3)専門医に関する情報の在り方について
○専門医に関する情報は、医師が他領域や高次医療機関の専門医を円滑に患者に紹介できるようなネットワークで活用できるようにすべきである。
○専門医と専攻医(専門医研修中の医師)に関するデータベースの構築が必要。データベースの構築に対する国の支援が必要である。

(4)専門医の認定機関について
○専門医の認定は第3者機関が学会との密接な連携のもとで行うべきであり、そのような第3者機関を速やかに設立すべきであり、そのための準備組織を設ける必要がある。
○第3者機関は以下のとおり運営すべきである。
・専門医の認定と養成プログラムの評価・認定の2つの機能を担う。その際の専門医の認定・更新基準やプログラム・研修施設の基準作成も第3者機関で行う。個別のプログラムは基準を踏まえて各研修施設が作成する。
・各領域の到達目標、経験症例数、指導体制等について共通の指針を作成し、これに沿って各領域専門医の認定・更新基準やプログラム・研修施設の基準を作成する。
・運営に国民の代表が参画できる仕組みとし、組織の透明性と専門医の養成プロセスの標準化を図り、説明責任を果たせる体制とする。
・専門医のデータ把握を継続的に行って公表するとともに、当該データを踏まえ、専門医の認定・更新基準等について継続的な見直しを行う。

(5)専門医の領域について
○基本的な診療領域を専門医制度の基本領域とし、基本領域の専門医を取得した上でサブスペシャルティ領域の専門医を取得する2 段階制の仕組みを基本とすべきである。
○専門医の定義や位置づけに鑑み、医師は基本領域のいずれかの専門医を取得することを基本とすることが適当である。
○専門医の領域は、名称も含め、国民に分かりやすいものとする必要がある。
○専門医の認定は、個別学会単位で認定する仕組みではなく、診療領域単位の認定にすべきである。
○基本領域の専門医の1つとして、総合的な診療能力を有する医師を加えるべきである。
○サブスペシャルティ領域は、基本的には、①その領域の患者数や専門医数等を踏まえ、日常的に診療現場で十分に確立し得る診療領域単位であること、②基本領域との間に一定の関連があること、③専門医の認定や更新が、十分な活動実績や適切な研修体制の確保を要件としてなされること、などを前提として設定することが適当である。
○例外的取扱いとして、特殊な技能や診療領域等に関するより専門分化した領域をサブスペシャルティ領域として設定する場合は、第3者機関でその基準を明確にした上で、検討する必要がある。

(6)専門医の養成・認定・更新について
○専門医の認定は経験症例数等の活動実績を基本的な要件とすることが必要である。このため、専門医養成プログラムの基準は、必要な指導医数や経験症例数等を踏まえて作成することが重要である。
○専門医資格の更新も、専門医としての活動実績を基本的な要件とすべきである。
○原則として複数の認定・更新を念頭に置いた制度設計は行わないが、自助努力により複数領域の認定・更新基準を満たすのであれば許容することが考えられる。ただし、これが安易なものとならないよう、各領域の活動実績を要件とする認定・更新基準が必要である。
○認定・更新にあたっては、医の倫理や医療安全、地域医療、医療制度等にも問題意識を持つ医師を育てる視点が重要であり、日医生涯教育制度などを活用することも考えられる。また、各領域の専門性に加えて、卒後臨床研修の到達目標である基本診療能力を維持し、向上させるという視点も必要である。
○例えば、養成期間の延長により研究志向の医師を養成する内容を盛り込むことも検討すべきである。また、出産・育児・介護等と専門医の取得・更新が両立できるようにするとともに、プログラム・研修施設の基準等もキャリア形成に配慮することが望ましい。
○新たな専門医の養成は平成29年度を目安に開始することが考えられる。研修期間は、例えば3年間を基本としつつ、各領域の状況に応じ設定されることが望ましい。

(7)学会認定専門医の移行措置について
○既存の学会認定専門医から新たな第3 者機関認定専門医への移行については、第3 者機関が適切な移行基準を作成することが必要である。
○移行は、各学会認定専門医の更新のタイミング等に合わせて、移行基準を満たす者から順次移行することが適当。その際、各学会が更新基準を見直して第3者機関の移行基準の水準とすることが期待される。
○移行を開始する時期については、今後、第3者機関で速やかに検討する必要がある。

4. 総合診療専門医について

(1)総合的な診療能力を有する医師の必要性等について
○総合診療医には、日常的に頻度が高く、幅広い領域の疾病と傷害等に、適切な初期対応と必要に応じた継続医療を全人的に提供することが求められる。

(2)総合診療専門医の位置づけについて
○総合診療医の専門医としての名称は「総合診療専門医」とすることが適当。
○専門医の一つとして総合診療専門医を基本領域に加えるべきである。
○総合診療専門医には「地域を診る医師」の視点も重要であり、他の領域別専門医や他職種と連携して、多様な医療サービスを包括的かつ柔軟に提供することが期待される。

(3)総合診療専門医の養成について
○臨床研修直後の医師が進むコースに加えて、他の領域からの移行や、総合診療専門医から他領域専門医への移行を可能とするプログラムも別に用意する必要がある。移行に際してどのような追加研修を受ける必要があるか等については引き続き議論する必要がある。
○総合診療専門医の認定・更新基準や養成プログラム・研修施設の基準は第3者機関で作成すべきである。
○養成プログラムの基本的枠組みとして、診療所、中小病院、中核病院における内科、小児科、救急等を組み合わせ、外来、入院、救急、在宅等を研修することが考えられる。
○総合診療専門医の養成には、地域で中核となって指導ができる医師を養成することも重要。また、大学病院や大病院のみならず、地域の中小病院や診療所も含めて総合診療専門医の養成に取り組むべきであり、医師会等の協力が必要である。
○総合診療専門医を養成するためには卒前教育で総合的診療能力を養成するようにプログラムを構築、地域の診療所、病院、介護福祉施設等の協力を得て実習するとともに、頻度の高い疾病や全人的医療の提供、患者の様々な訴えに向き合う姿勢などを学ぶことが必要。
○地域の病院では領域別専門医でも総合的な診療が求められており、総合診療専門医と基本診療能力のある領域別専門医をバランス良く養成することが重要。
○総合診療専門医は現段階で養成数を設定することは困難であるが、今後の高齢化や疾病構造の変化等を踏まえつつ、第3者機関で、今後、検討する必要がある。

5. 専門医の養成と地域医療との関係について

(1)医療提供体制における専門医について
○医師の専門性の分布や地域の分布についてグランドデザインを作ることが重要。
○総合診療専門医や領域別専門医の所在を明らかにして、それぞれの特性を活かしたネットワークにより、適切な医療を受けられる体制を構築することが重要。
○新たな専門医の仕組みの構築にあたっては、少なくとも、現在以上に医師が偏在することのないよう、地域医療に十分配慮すべきである。
○新たな専門医の仕組みにおいて、地域の実情に応じて、研修病院群の設定や専門医養成プログラムの地域への配置の在り方などを工夫することが重要。研修施設については、都道府県と連携しつつ、大学病院や地域の中核病院などの基幹病院と地域の協力病院等(診療所を含む)が病院群を構成することが適当。
○研修施設がプログラムを作成するにあたっては、国、都道府県、大学、地域医師会等と十分に連携を図ることが期待されるとともに、初期診療が地域で幅広く求められる専門医の養成プログラムの中には一定期間の地域医療の研修を取り入れることが必要。また、地域医療を希望する医師が専門医となる環境を確保していく観点から、地域医療に配慮した病院群の設定や養成プログラムの作成等に対する公的な支援を行うことも考えられる。

(2)専門医の養成数について
○専門医の養成数は、患者数や疾病頻度、各養成プログラムにおける研修体制等を踏まえて設定されることを基本とし、さらに、地域の実情を総合的に勘案する必要がある。

6. 医師養成に関する他制度との関係について

○平成27年度の研修医からの適用を念頭においた臨床研修制度の見直しにあたっては、臨床研修と専門医研修との連続性にも配慮することが必要である。
○新たな専門医の仕組みは、各専門領域の実情等を踏まえ、臨床研修における研修内容等を加味することも検討することが考えられる。

おわりに

○新たな専門医の仕組みを通じて医療提供体制が改善されることを期待したい。
○専門医の在り方については、適宜、継続的な見直しを行っていくことが必要である。