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財務省 マイナス改定コールと「薬価引下分の付け替え」等の手法批判で攻勢

財務省
マイナス改定コールと「薬価引下分の付け替え」等の手法批判で攻勢

【2014年度診療報酬改定】
厚労大臣自らプラス改定を主張。ただし、増税分の投入額が依然不明

 

 

 2014年度診療報酬改定の改定率に関して様々な意見がとびかっている。
 中医協では、11月20日の総会で、支払側と診療側がそれぞれ医療経済実態調査結果に対する所見を表わし、11月27日には、各側が「改定に関する基本的な見解」を明らかにした。
 「一般病院は国公立を除いて安定的な黒字が続いている」とみなす支払側は、「診療報酬全体ではマイナス改定とすべき」という「基本的な見解」を示した。
 それに対して、「一般病院全体の損益率は若干改善したものの、-0.4%で依然として赤字で、引き続き厳しい」と判断する診療側は、①消費税率引き上げ対応分を除き全体(ネット)プラス改定、②消費税率引き上げ対応分に対する完全な補填、の2点を求めた。
 一方、10月21日の財政制度審議会財政制度分科会で、財務省は「自然増に加えて、さらに診療報酬改定で医療費を上積みする状況にあるのか」と難じ、プラス改定を否定した。
 財務省は、いつもの改定以上に診療報酬に対する批判を強めている。「要件を満たせば算定できる診療報酬では病床数を制限できない」「全国一律が前提の診療報酬では地域ごとの実状に応じた対応はできない」と論難。「適切な病床区分の設定」「地域医療ビジョンの策定」「診療報酬以外の財政支援手法」など、医療提供体制改革を先行させるべきとしている。
 しかし、改定基本方針案に「医療法改正による対応に先駆けて機能分化等に取り組む」と書き込まれ、財務省の思惑は外れた。それだけに、麻生副総理兼財務大臣自ら「消費税が上がったからといって、自動的に診療報酬も上がるという簡単な図式ではない」と発言(11月8日)するなど、攻勢を強めている。
 11月15日の経済財政諮問会議では、民間議員が、「消費税率引上げのタイミングも考えると本来は引下げるべきで、それが無理なら、少なくとも据え置くべきである」と論じた。
 こうした引き下げ論に、田村厚生労働大臣は10月22日の会見で、「必要性があれば当然診療報酬は上げなければならない」との認識を表わし、11月15日には、看護師やコメディカルの所得引き上げ、地域医療の整備等を課題にあげ、「一定の考え方に沿った」改定とするために「適正な診療報酬を要求して」いく姿勢を明確にした。
 そして、11月22日には民放のテレビ番組で「診療報酬を一定程度上げないといけない」と、一歩踏み込んだ。
 田村大臣を勇気づけている背景には11月8日に発足した「国民医療を守る議員の会」がある。
 自民党議員の半数を超える約280人が参加。設立趣意書には「適切な社会保障財源の確保」を求めると明記、発起人からは「改定の方向性にものを言う」との声も聞かれる。
 そうした中、財務省は、診療報酬改定で技術料(本体報酬)とモノ(薬価・医療材料価格)を分けるべきと主張し始めた。
 これまでの薬価引き下げで捻出した財源を本体報酬に回すやり方を批判。
 「(薬価引き下げは)概算要求時点の予算単価を実態調査の価格に置きかえるだけの話。合理化・効率化の話ではなく、それをもって厚労省の特定財源として運用することは適当ではない」と財政制度分科会で非難した。
 さらに、改定枠(改定率)ありきではなく、必要な予算を個別に積み上げていくことで財源を要求するべきとも主張。厚労省の手法を批判した。
 11月15日の諮問会議後の会見で、甘利内閣府特命担当大臣は、安倍首相が「薬価を下げて、では、医療提供体制の適正化にどう使うのか」と田村大臣に質したことを披露。「総理の指摘は、恐らく、薬価が下がったら当然のごとくこちらにいただきますというのではなく、本当に必要性を精査してもらいたいという当然の疑問だ」と述べた。
 その後11月19日の会見で、田村大臣は、「全体にこれぐらい必要で、だから薬価改定の分も含めて必要だということをちゃんと説明をしていく、きめ細かな対応が必要かと思う」と語った。しかし、薬価引き下げ分を本体報酬に付け替える根拠の説明は容易ではない。
 だが、説明責任が求められているのは厚労省だけではない。一体、増税分からいくら診療報酬に回るのか、政府は明言していない。
 消費税は1%で年間2.7兆円の税収となる。3%で8.1兆円になるが、増税直後の14年度は5.1兆円の増収にとどまる。そのうちの3兆円弱が基礎年金の財源に充当され、1.5兆円弱が医療・介護の自然増や赤字国債解消に、2,000億円が物価上昇への対応に、そして、残りの5,000億円が社会保障の「充実」に投入される。
 だが、5,000億円のうち、医療・介護のサービス提供体制整備に回るのは1,000億円に過ぎない。これに関して、田村大臣は会見で、「14年度の(増収)財源について、厚労省としては、医療・介護サービス提供体制の改革に0.1兆円程を振り向けたいと考えている」(11月15日)と語った。
 提供体制の改革が機能分化等を意味するのであれば、改定財源は消費税増収分以外から捻出されなければならないことになる。
 今回改定で注視されるべき点は、消費税引き上げの補填分と本来の改定分が改定率の上で仕分けされるか否かである。