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基準病床数制度見直しの議論始まる

基準病床数制度見直しの議論始まる

【厚労省・医療計画の見直し等に関する検討会】

 2018年度から始まる第7次医療計画の作成指針等について検討している「医療計画の見直し等に関する検討会」(遠藤久夫座長)は、7月15日の会合で、基準病床のあり方を中心に議論した。厚労省は、基準病床数算定における論点を示し、平均在院日数の設定等を課題にあげた。
 基準病床数制度は、病床の地域的偏在を是正するために病床種別ごとに基準病床数を設定している。一般病床と療養病床は、2次医療圏ごとに全国一律の算定式によって基準病床数が算定される。算定式は以下のとおりだ。
 ① 一般病床 (性別・年齢階級別人口×性別・年齢階級別一般病床退院率×平均在院日数+流入入院患者数-流出入院患者数)÷病床利用率
 ② 療養病床 (性別・年齢階級別人口×性別・年齢階級別長期療養入院・入所需要率-介護施設対応可能数+流入入院患者数-流出入院患者数)÷病床利用率
 ③ 流出超過加算 都道府県における流出超過分の1/3を限度に加算
 ※ 上記算定式以外に「病床数の算定に関する特例措置」および「特定の病床等に係る特例」がある。 基準病床数は、一般病床と療養病床のそれぞれで算定されるが、既存病床数が一般病床と療養病床の基準病床を合わせた病床数を超える病床過剰地域では「公的医療機関等の開設・増床を許可しないことができる」とする量的規制が実施されている。
 一般病床の基準病床数算定に用いる平均在院日数は、医療計画作成時の直近の統計調査を基に、その1割短縮を見込んで0.9を乗じた日数で9つの地方ブロックごとに算定されている。現行の第6次計画(2013~ 17年度)では、2010年の病院報告を基に平均在院日数が1割短縮すると見込んで設定した。
 一方、厚労省がこの日の検討会に示した資料によると、過去4年間の推移から予測される2015年の平均在院日数と現行計画の平均在院日数の見込みを比べた結果、9ブロックのうち6ブロックにおいて、計画上の見込みほどには平均在院日数の短縮が見込めないことが推測された。ただし、この傾向はブロックごとに異なる。
 基準病床数制度に関して厚労省が提示した論点は表1のとおりだが、「1割短縮を見込んだ平均在院日数」の設定に関して、短縮見込率を全国一律としていることの可否を論点にあげている。
 また厚労省は、基準病床数制度(医療計画)と必要病床数(地域医療構想)の関係について、①基準病床数は現時点で必要とされる病床数であるのに対して必要病床数は医療需要の変化に応じた将来(2025年)の病床の必要量であること②今後都市部では急速な医療需要の高まりが見込まれること③各医療機関の自主的な取組みを前提とした上で「都道府県知事の権限行使の具体的な要件等について整理が必要なことを踏まえつつ、その関係性の整理が必要ではないか」と提起した。
 その上で、5月の会合で設置が決まった「地域医療構想に関するワーキンググループ(WG)」で考え方を整理することを提案した。
 これに対して、全日病会長の西澤寛俊構成員は、「地域医療構想では病床を4つの医療機能に区分した上で医療需要に基づいて必要病床数を推計している。毎年度の病床機能報告の結果を受けて各医療機関の病床機能も毎年変化していく。この変化を基準病床数が妨げる可能性もあり、地域医療構想が推進される中で基準病床数制度が不要になることも考えられる。その関係性を不問にして議論を進めても意味がない。WG の議論がある程度進んだ段階であらためて議論してはどうか」と発言、慎重な議論を求めた。
 他の構成員からも「検討会における議論とWG の議論の枠割分担をどうするのか」などの疑問が示されたが、厚労省は「必要病床数と基準病床制度との関係性はWG で議論していただく」と述べるにとどまった。
 このほかに「医療機器の配置のあり方」と「医療計画における医師の確保」についても論点が示された。医療機器については、CT、MRI の設置台数が国際比較でみて多いことを示す資料が提出されたが、構成員からはCT、MRI の台数が多いことによるメリットも検証すべきとの意見があった。
 なお、厚労省はこの日の検討会に「地域医療構想に関するWG」と「在宅医療及び医療・介護連携に関するWG」の構成員を発表した。地域医療構想WGには、全日病から織田正道副会長が構成員に加わった。

表1 基準病床数制度に関する論点

 ○基準病床数を算定する計画の期間はこれまで5年間を基本としていたが、医療計画の期間が5年から6年になったことを踏まえ、どのように考えるか。
 ○一般病床の算定における平均在院日数の経年変化見込みについて、現在は全国一律としているが、今後どのように考えるか。
 ○病床利用率は直近の率を用いることになっているが、今後、どのように考えるか。
 ○流出超過加算について、現行の医療提供体制等も踏まえ、今後、どのように考えるか。

 

全日病ニュース2016年8月1日号 HTML版

 

 

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