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厚労省が生活援助など“軽度者”への給付見直しを提起

厚労省が生活援助など“軽度者”への給付見直しを提起

【厚労省・介護保険部会】
福祉用具・住宅改修でも利用者負担のあり方が論点に

 2017年通常国会に提出する介護保険法改正について審議している社会保障審議会・介護保険部会(遠藤久夫部会長)は7月20日、介護給付見直しの具体的議論に着手した。厚生労働省は、(1)軽度者への支援のあり方(2)福祉用具・住宅改修の2点を提起した。
 厚労省が示した論点によると、(1)については「訪問介護における生活援助に対する給付について、『給付の見直しや地域支援事業への移行、負担のあり方』を含め検討を行うとされていることをどう考えるか」。(2)については、「福祉用具や住宅改修の利用者負担のあり方についてどう考えるか」とし、いずれも給付の縮減を図る方向で問題提起している。
 軽度者に対する給付の縮減に対し、委員の多くは反対もしくは慎重な考えを示したが、経済界の委員は賛同した。福祉用具や住宅改修に関しては、価格実態の捕捉などで“ 外れ値” を排除する仕組みを検討することに反対する意見はなかった。中には「公定価格を導入すべき」との声もあった。ただし、利用者負担を見直すことには、日本医師会常任理事の鈴木邦彦委員など一部の委員が反対を表明した。
 この日示された論点はいずれも「骨太の方針2015」で提起され、「経済・財政再生アクション・プログラム」(2015年12月)で「2016年末までに結論を得て、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」とされたもので、改革工程表に盛り込まれている。
 この見直しについては、①給付上の制約(サービス提供者の限定等)②保険給付率の引き下げ(利用者負担率の引き上げ)③保険給付の中止(原則自費)④地域支援事業への移行などが考えられるが、厚労省は、論点で「要支援・要介護度に応じて支援のあり方に違いを設ける」、「介護人材の専門性に応じた有効活用の観点」、「その他の給付についても検討を行う」などと示唆するにとどめ、具体案を示さなかった。
 厚労省はこれまで福祉用具貸与の取り扱いにおいて、「要支援1・2および要介護1」を「軽度者」としてきた。しかし財務省や経済財政諮問会議の議論で、「要支援1~要介護2」が「軽度者」とされ、もっぱら要介護2までを「軽度者」とみなおす論調が台頭する中、厚労省はその定義を明確にしていない。
 このように曖昧さを残した議論となったが、冒頭で、鈴木委員は議論の対象を要介護1までとした上で訪問介護について「仮に身体介護を介護福祉士に限定するとサービスの供給に不足が生じると思う」と発言し、給付に制約を課す考え方に反対した。

 軽度者への支援のあり方の論点
 ○ 要支援者と要介護者においては給付を別にするなど支援のあり方に違いを設けているが、この他に、要支援・要介護度に応じて支援のあり方に違いを設けることについて、どのように考えるか。
 ○ 訪問介護における生活援助に対する給付について、「給付の見直しや地域支援事業への移行、負担のあり方」を含め検討を行うとされていることをどのように考えるか。その際、自立支援や重度化防止といった介護保険の理念、人材確保に制約がある中での介護人材の専門性に応じた有効活用の観点や制度の持続可能性の観点を踏まえた対応について、どのように考えるか。
 ○ その他の給付(※)について、「給付の見直しや地域支援事業への移行、負担のあり方」を含め検討を行うとされていることを前回改正時の議論も踏まえつつ、どのように考えるか。
 (※)訪問介護における生活援助以外の介護給付及び予防給付
 ○ これらの検討に当たって、予防給付の訪問介護、通所介護の総合事業への移行が、平成29年3月までを経過措置期間としており、現在、市町村においてニーズ把握や関係者の認識共有に努めていただいている状況であることをどのように考えるか。

 

全日病ニュース2016年8月1日号 HTML版

 

 

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  • [1] 介 護 保 険 最 新 情 報 Vol.543 平成28年4月14日 厚生労働省老健局 ...

    http://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2016/160415_2.pdf

    2016年4月14日 ... 厚生労働省 老健局高齢者支援課. 今回の内容. 「介護保険の給付対象となる福祉用具
    及び住宅改修. の取扱いについて」の一部改正について. 計10枚(本紙を除く). 連絡先
    TEL : 03-5253-1111(内線3985、3988). FAX : 03-3595-3670.

  • [2] 厚生労働省老健局振興課:H27.2.18

    http://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2015/150223_2.pdf

    2015年2月18日 ... 必要に応じて「標準額」を超えることも可能であり、その場合は厚生労働省に追加額を
    協議して定めた額. まで事業を実施することを .... 平成26年度の予防給付(訪問介護、
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