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神田医政局長「在宅医療の整備では療養病床が転換した後施設も現実的選択肢」 西澤会長「地域医療構想の調整会議はすべての病院が集まる場に」

【新春座談会 変革期の医療政策を語る】

神田医政局長「在宅医療の整備では療養病床が転換した後施設も現実的選択肢」
西澤会長「地域医療構想の調整会議はすべての病院が集まる場に」

西澤 新年明けましておめでとうございます。
 2025年に向けて医療制度の改革が進められていますが、2018年には、医療計画や介護保険事業計画、医療介護報酬の同時改定が予定され、今年はこれらの改革の具体的内容が決まる非常に重要な年です。
 まず、神田局長に地域医療構想についてお聞きします。今年度中にすべての都道府県が地域医療構想を策定しますが、策定状況にばらつきがあると感じます。
神田 地域医療構想は30都道府県が策定済ですが、その内容をみると、個別の病院名も含め、再編の姿を具体的に書き込んでいるものと、そうでないものとの違いがあります。ただ地域医療構想はあくまでも設計図なので、今後の話し合いが重要です。
織田 我々としては、会員が構想区域の議論に参加し、その地域にあった医療を目指して構想を策定してもらいたいと考えています。国や都道府県と協力しながら、よいものにしていきたいと思います。

●在宅医療の整備をどう進めるか

神野 東京や大阪など大都市以外は、今後人口が減っていきます。そうすると、病床数が減って、地域医療構想が想定する姿に自然に近づいていくと思っています。問題は、在宅医療等に大きな需要があることです。そこをどのように充実させるかが肝になるでしょう。
神田 病床の機能分化を進める観点から、在宅医療等といわれる部分の整備をどう進めるかが重要です。地方の都道府県からは、広い面積に医療機関が点在しているところでは在宅医療は難しいと聞いています。それぞれの地域にあった在宅医療を構築する必要があります。
 人口減少で新しい資源を作ることが難しい地域では、療養病床を転換した後施設を使うことも現実的な選択肢になります。集住の形態をとれば、そこに在宅医療を提供することができるでしょう。介護施設や療養病床の後施設、在宅医療を含めて、地域にあった形を考えていただきたいと思います。
安藤 地域医療構想では、療養病床の入院患者のうち、医療区分1の7割が在宅等に移行することを見込んで、将来推計を行っています。その場合、東京は高齢者人口が大きく増加するので、在宅等に対応するにはものすごい数の医師と訪問看護師を確保しなければなりません。介護療養型医療施設や25対1医療療養病床に持続的に活動してもらわないと困ってしまいます。現実的な路線に落とし込む必要があるのではないでしょうか。神田 医療区分1の7割が在宅等に移行するのは困難な地域があるのは確かです。療養病床の後施設は、入所者の状態にあわせて、いくつかの選択肢を用意しようとしていますので、後施設への転換を含めて考えていただきたい。
西澤 今回の見直しでは、介護療養病床の機能は維持されます。内容は今のままでも在宅等に換算されることになる。ただ地域によって事情は異なるので、具体化するにあたって、きめ細かな対応が必要になります。

●地域医療構想は数字ありきではない

猪口 地域医療構想の推計では、2025年に必要であろう病床数を二次医療圏に落とし込んでいますが、それを目標にして調整会議をやろうとするところが多いのです。そうではなくて、二次医療圏ごとにどういう機能を持った病院があることが望ましいかを話し合い、それに向かってどうするかを話すのが調整会議であって、数字ありきの話ではないと思います。
神田 地域医療構想は病床削減計画ではないということです。大切なのは地域でいかに効率的な提供体制を築いて行くかです。データに基づいてどういう課題があるかを分析し、その課題をどう解決していくかを議論する必要があります。
西澤 地域医療構想は、入院医療の機能分化であり、すべての病院に関係があります。地域医療構想調整会議に代表者だけが集まるのではなく、すべての病院が集まる場にしなければいけない。構想区域が大きくて、100以上の病院が一気に集まるのが無理だとすれば、もっと小さく分けて、各病院が必ず1回か2回は集まって情報交換する場が必要です。この点は全日病でも検討していきたいと思っています。
美原 調整会議のあり方も地域によって大きく違うと感じています。熱心に議論している地域と、必ずしもそうではない地域がある。国がもう少し関与することも必要ではないでしょうか。
神田 できるだけ多くの関係者が調整会議に参加してもらうとすると、それだけメンバーが多くなります。大きな会議体で抽象的に議論してもなかなか難しい。腹を割って話すとなると、少人数でないと議論がしにくいので、小さなグループに分けることも必要だと思います。
織田 調整会議のメンバーは、医療提供者ではないメンバーが増えています。
 その中で、回復期が足りないからあの病院に移行してもらう、といった議論ができるわけがありません。それは当事者間で行うべきです。調整会議のもとに部会でもつくるなどしないとうまくいかないでしょう。様々なステークホルダーが集まるのは当然ですが、そこは調整が必要です。

●地域医療構想と医療計画の関係は?

西澤 地域医療構想は医療計画の一部ですが、そこのところが会員にはピンとこないようです。
 医療計画見直しの議論が進んでいますが、地域医療構想との関係を説明していただけますか。
神田 地域医療構想は2025年の病床機能ごとの必要量を示し、その達成に向けた施策をとりまとめるものです。一方、医療計画の基準病床数は、病床の医療資源の偏在是正を目的とし、病床規制とリンクしています。基準病床が増床や開設許可とダイレクトにリンクしているのに対し、地域医療構想は地域における協議で、収れんしていく姿を示しているので、政策達成の手段が違うものが、同じ計画の中にあるのは確かです。医療計画の検討会で、両者の関係を整理していただきました。
 また、医療と介護の関係では、介護保険事業計画と医療計画が2018年度から同時にスタートするという今までにない特徴があります。医療介護総合確保促進会議で両者の整合性を図るための方針をまとめており、病床の機能分化を進めると同時に、医療、介護、在宅医療の整合性が重要になります。療養病床を減らしても、介護、在宅医療の整備が進まなければうまくいきません。都道府県と市町村が協議をして、医療計画と介護保険事業計画の整合的な目標を設定する必要があります。
 特に、在宅医療については、整備指針はありましたが、きちんとした議論を踏まえて策定された医療計画はこれまでありませんでした。今回は同時期に策定するので、市町村でも在宅サービスと介護サービスの目標を設定し、市町村だけで提供できなければ、都道府県と協議する必要があると考えています。協議会を設けて、連携を深めていきたいと思います。
織田 地域医療構想による病床の必要量と医療計画の基準病床数は次元が違うものですが、これがなかなか理解されず、数字が2つあるので混乱が起きています。一本化するか、あるいはもう少し整合性がとれるものにしていく必要があります。
神田 地域医療構想の病床の必要量と医療計画の基準病床数は、役割が異なります。都市部で既存の病床数が基準病床数を上回っていて、将来的に病床を増やさなければならないという場合には矛盾が生じるので、整合性を図ることを議論しましたが、制度的な位置づけについては、もう少し本質的な議論が必要と思います。

●医療介護の連携を進めるには

神野 医療計画は地域医療構想だけでなく、5疾病・5事業があり、医師・看護師等の需給の話があります。今の状況で都道府県は手一杯なのに、その上、さらに介護との連携をするとなると、国がきちんと指針を示さないと大変です。
神田 医療計画の新しい指針は、今年度中に示す予定です。都道府県と市町村がどう協議するかもできるだけ具体的に書けないかと検討しています。都道府県が計画策定で大変だというのはその通りだと思うので、研修を実施するなど都道府県の職員にスキルを身につけてもらい、あわせて考え方を丁寧に説明する必要があります。
美原 市町村がいまひとつ積極的でないという現状があります。医療については、現場に任せたいという気持ちがあるのではないでしょうか。
神田 市町村には医療を直接担当する部署がなくて、これまで基本的に医療は都道府県が担っていました。ただ地域包括ケアの中には医療もあるので、介護保険事業計画では訪問看護や居宅療養管理指導、即ち訪問歯科衛生指導、訪問栄養指導等の見積もりを立てています。また、市町村で医療計画をつくるところも出てきています。
猪口 市町村に医療を担当する部署が必要です。地域包括ケアシステムの単位は中学校区では小さすぎて、そこで医療、介護の連携をするとなれば、国が指針を含めてきめ細かな対応をとる必要があると思います。

 

全日病ニュース2017年1月1日・15日合併号 HTML版

 

 

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