全日病ニュース

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DMAT事務局体制を強化する方針を了承

DMAT事務局体制を強化する方針を了承

【救急・災害医療検討会】医療団体などから支援得られる体制整える

 厚生労働省の「救急・災害医療提供体制等のあり方に関する検討会」(遠藤久夫座長)は、DMAT 事務局の体制を強化する方針を了承した。常勤のロジスティクス専門員の配置など人員増強を行うとともに、AMAT(全日本病院協会災害時医療支援活動班)を含め、他の団体からの支援が得られる対策を講じる。同日は、EMIS(広域災害・救急医療情報システム)の改善に向けた議論も行った。

 DMAT事務局体制の課題
 DMAT(災害派遣医療チーム)には現在、全国に2つの事務局がある。いずれも病院内に置かれており、東日本では国立病院機構災害医療センター(立川市)、西日本では国立病院機構大阪医療センター(大阪市)にある。東日本大震災や熊本地震を経て、逐次見直しが図られているものの、将来起きる可能性のある大規模災害を想定すると、事務局体制は脆弱との指摘が出ている。
 現状の体制では、事務局長(医師)の下に、事務局次長(医師・事務)や災害医療係長、職員がいる。東西合わせて医師6名を含む33名が在籍しているが、ほとんどが非常勤、併任で専任常勤は3名に過ぎない。厚労省は特に、大規模災害時に広域搬送調整などで必要なロジスティクスの専門知識を持つ者が、非常勤職員のみであることを問題点としてあげた。
 また、DMATは厚労省の指示の下で活動する。だがDMAT事務局は災害拠点病院内に置かれており、他の組織からの迅速な応援体制が構築しづらい状況になっている。事前にどこから支援が受けられるかも決まっていない。
 これらを踏まえ厚労省は、①DMAT事務局の人員増強を行う②DMAT事務局を大規模災害時に他の病院等からロジスティクスを含めた災害医療の専門知識を持つ者の応援が得られる体制を整備する─ことを論点を提示。方向性については、概ね了承を得た。
 具体策としては、◇DMAT事務局に専任の事務局長・次長を置くとともに、ロジスティクスに一定の知識がある者を常勤配置◇DMAT事務局が病院内の組織である現状を改め、他の病院等からDMATの派遣調整等ができる職員が参集できる仕組み◇あらかじめDMAT事務局を支援する団体(専門家)を決め、災害時にリーダー人材(参与に任命)を外部から得られるようにする◇支援団体や参与を厚労省防災業務計画等に明記◇支援団体(参与)を対象とした研修を実施─を示した。
 具体策に対しては、委員から「現状の体制のメリットとデメリットがあり、もう少し整理が必要」など、様々な意見が出た。このため、具体的な対応策については、さらに議論を続けることになった。

 EMISの改善策を議論
 EMIS(広域災害・救急医療情報システム)の改善策を議論した。EMIS は、被災地における医療機関の稼動状況など災害医療に関わる情報を収集・提供し、迅速で適切な医療・救護活動を支援するシステム。厚労省の要請でNTT データが開発した。
 利用者は、厚労省、都道府県、医療機関、DMATなどの医療支援チーム。ネット上で医療機関の被災状況、受入れ患者数などを関係者間で情報共有する。DMAT管理機能や医療搬送患者管理機能(MATTS)も備える。
 医療機関は災害発生時に①倒壊②ライフライン・サプライ③患者受診状況④職員の状況やその他詳細情報などをEMISに入力。それらの情報を統合することで、各種情報を閲覧できる。被災地の各医療機関の状況を地図上に表示する機能もある。阪神・淡路大震災で、県庁と市役所が被害を受け、情報の収集・調整が困難になったことを踏まえ、システムを構築した。
 現状でシステムのアカウントを保有する病院の登録率は93%に上る。しかし同日のヒアリングで、兵庫県災害医療センターの中山伸一センター長は、「入力率は8割程度だが、うち8割が代行機関による入力で、医療機関は2割」と報告。緊急時入力を行わない医療機関が多いことが課題となった。
 全日病常任理事の猪口正孝委員は、「ほとんどの病院に入力が求められるのであれば、防災訓練を通常行うように、日常の訓練が欠かせない。EMISを病院文化として根付かせるには、使い方を教える人の養成も必要になる」として、日頃の取組みの重要性を指摘した。また、「システムを改変するのであれば、緊急時にアラームを鳴らすなど、入力の必要性を知らせる仕様にすべき」と提案した。
 これに対し中山センター長は、「アラームは都道府県によって実施されていると思う。システムとして実装されているかは確認する必要がある」と述べた。厚労省も都道府県により対応が異なると説明した。他の委員からも、医療機関の入力率を引き上げる対策が必要との意見が相次いだ。
 また、今後BCP(事業継続計画)の策定が義務化される方向にある中で、BCPにEMISへの対応も盛り込むべきとの提案があった。
 厚労省は今回、◇EMISの持つべき機能、扱うべき情報の整理◇利用者の多様化に伴う扱いやすいEMIS◇付加すべき機能─との論点を提示している。同日の議論を踏まえ、さらに論点を絞り込む意向だ。

 

全日病ニュース2018年5月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 平成30 年度 第1 回 AMAT 隊員養成研修(大阪会場)開催のご案内

    https://www.ajha.or.jp/seminar/amat/pdf/180323_2.pdf

    2018年3月23日 ... ことから、当協会の災害医療支援活動体制の見直しを図り、(公社)全日本病院協会
    災害時. 医療支援活動 ... 07 ロジスティクスの基本 ・ 通信確保と衛星電話(実習). (独)
    国立病院機構災害医療センター 厚生労働省DMAT事務局 市原 正行.

  • [2] 第756回/2011年6月1日号

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2011/110601.pdf

    そのため総会を30分中断して厚労省を含めて調整を図ったが、同日中に決着を図る.
    という方針に ..... 議論に先立ち、事務局厚労省医政局指導課)は、今後の災害医療
    体制をどう構築す .... ・DMAT全体のロジスティックサポートの充実(ロジステーション
    構想の.

  • [3] 神田医政局長

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20170101/news09.html

    2017年1月1日 ... 西澤会長「 医療事故調査制度は医療提供側が自律的・自主的に取組むべきもの」 神田
    医政局長「 医師偏在対策の必要性 ... 急性期の医師が今は週57時間働いているのを
    診療所や慢性期の病院と同じくらいの週46時間に労働時間が減ったらどうなる ....
    そのために院内で死亡事例を把握する体制をつくっていただく必要がある。 ... 東日本
    大震災の教訓から検討会を設置し、議論してきましたが、例えばDMAT では、
    ロジスティクスが大事だということ ... 7月1日 厚労省医政局長へ要望書提出(厚労省).

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