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ホーム全日病ニュース(2018年)第922回/2018年8月1日号DMATの体制強化で人件費の増額求める...

DMATの体制強化で人件費の増額求める

DMATの体制強化で人件費の増額求める

【厚労省・救急災害医療検討会】救急医療体制は引続きの課題

 厚生労働省の「救急・災害医療提供体制の在り方に関する検討会」(遠藤久夫座長)は7月6日、今年4月から5回の会合の議論を整理した。来年度予算案の概算要求に向け、DMAT(災害派遣医療チーム)事務局の人件費の増額が必要との考えを盛り込んだ。救急医療体制については、次期診療報酬改定を見据え、救急医療に必要な体制とその評価方法の検討を続ける。
 救急医療体制については、議論が始まったばかりだが、概算要求が8月末に迫り、災害医療体制では一定の合意を得たことから、当面の対応が明確になったものを中心に整理した。
 大規模災害に備えるには、DMATの体制が脆弱であるとの認識で一致し、体制強化を求めた。DMAT事務局は東西に2拠点あり(NHO 災害医療センターとNHO 大阪医療センター)、両者で33人の職員が配置されている。しかし専任の常勤職員は3名で、そのほかは併任や非常勤職員だ。ロジスティック(後方支援)を含めた災害医療の専門家の不足も指摘されている。
 議論の整理では、DMAT事務局の人員増強を行うとともに、大規模災害時にロジスティックを含めた専門知識を持つ者の応援が得られる体制が必要とした。人材育成のための研修事業も求めた。厚労省は、これらの費用を来年度予算案の概算要求に盛り込む方針だ。
 救急・災害医療提供体制については、3点を見直し、通知を改訂する。
 1点目は、「災害時を想定した燃料等の供給手段の確保」。2018年2月に福井県などで豪雪があり、一部地域で灯油など燃料の供給が滞った。災害医療拠点病院は、災害時に食料、飲料水、医薬品が優先的に提供されるよう関係団体・業者と協定を結んでいるが、これに燃料も含める。
 2点目は、「病院前医療の効率的な提供に係る地域の協議」。ドクターヘリ、ドクターカー、メディカルジェットなど病院前医療の提供手段が多様化している。しかしどの手段が患者に望ましいかの優先順位を決める仕組みは、多くの地域で未整備だ。このため、効率的な運用に向け、メディカルコントロール協議会を想定し、地域で一体的に協議することを求めた。
 3点目は、「ドクターヘリの安全運行」である。ドクターヘリは現在、全国42道府県で52機が配備されている。一方、2016年には神奈川県のドクターヘリが落着する事故が発生した。ドクターヘリの安全な運行のため、昨年度まとまった「ドクターヘリの安全な運用・運航のための基準」の内容を「ドクターヘリ導入促進事業」の実施要綱に反映させるべきとした。

 救急医療の人材育成・確保も課題
 引続きの課題としては、◇広域災害・救急医療情報システム(EMIS)◇災害派遣精神医療チーム(DPAT)◇災害医療精神科病院─を指摘した。
 EMISは災害時に機能せず、地域により「形骸化している」との指摘がある。医療機関によるEMISへの情報入力が徹底されていないためだが、「災害時に特化したシステムにするのか根本思想の議論が必要」としている。
 DPATについては、DMAT との連携が不十分との指摘がある。このため、所管の統一などを課題とした。救急医療体制全体の議論は、今後本格化する。高齢化や医師の働き方改革など社会の変化に対応するため、第1次~3次救急の体制の見直しを含め、広範な検討を行うことになる。
 そのほか、◇救急医療情報センター◇ICTの推進◇救急救命士の業務を行う場◇ドクターヘリの効率的な運用◇都道府県災害医療コーディネーター─が検討課題となっている。
 全日病常任理事の猪口正孝委員は、「医師は必ずしも救急医療に精通していない。今後は2次救急を担う医師として総合医が期待されている。救急医療が専門ではない医師に向けた人材育成・人材確保が重要になる」と発言。これを受けて検討課題に「人材育成・人材確保」を加えることになった。

 

全日病ニュース2018年8月1日号 HTML版

 

 

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    (60分) 07 ロジスティクスの基本 ・ 通信確保と衛星電話(実習) ... 事務局にて申込用紙
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