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ホーム全日病ニュース(2018年)第922回/2018年8月1日号DPC制度―調整係数の廃止により支払制度として完成形へ...

DPC制度―調整係数の廃止により支払制度として完成形へ

DPC制度―調整係数の廃止により支払制度として完成形へ

【診療報酬改定シリーズ 2018年度改定への対応⑤】医療保険・診療報酬委員会 副委員長 太田圭洋

 1998年11月に国立病院等10病院における1入院当たりの急性期入院医療包括払い制度の試行として開始されたDPC制度は、2018年度診療報酬改定での暫定調整係数の機能評価係数Ⅱへの置き換え終了により、支払い制度としてほぼ完成した形となった。
 2018年4月1日現在では、1,730病院、約49万床がDPC / PDPSによる支払制度を利用している。これは急性期一般入院基本料に該当する病床の約83%を占めるまでに利用が拡大していることを意味し、我が国の急性期医療支払制度の主流となっている。過去20年にわたりさまざま変遷をたどってきたDPC/PDPSという支払制度が、その制度創設に深く関わった迫井正深氏が医療課長として指揮する2018年度改定でひとつの完成をみたことに運命的なものを感じざるを得ない。

 機能評価係数Ⅱのあり方を再整理
 さて、今回の改定での調整係数から機能評価係数Ⅱへの置き換え完了により、DPC /PDPSは機能評価係数Ⅱを中心とした評価体系に完全に移行したと言えよう。これに伴い制度の安定的な運用を確保する観点から機能評価係数Ⅱのあり方について再整理が行われた。導入時より評価されている6つの係数(保険診療、効率性、カバー、複雑性、救急医療、地域医療)については、基本的評価軸として位置づけ、過去に追加されてきた2つの係数(後発医薬品、重症度)が廃止されたことに加え、機能評価係数Ⅱの各係数もさまざまな設定方法の見直しが行われた。この結果、より急性期機能が高い医療機関の機能評価係数Ⅱが上昇すると思われる。

 激変緩和係数の新設
 また、本改定での調整係数の置き換え完了に伴い、今後、基礎係数+機能評価係数Ⅰ+機能評価係数Ⅱによる評価となる。ただ、今後も診療報酬改定時に係数が大幅に変動する病院は生じうる。そのため係数の急激な変化により経営的に大きな影響を受ける病院を救済する目的で、新たに改定年度のみ(1年間)設定される激変緩和係数というものが新設された。
 今回の改定では、暫定調整係数の廃止により一部の病院で経営的に大きな影響がでるのではないかとの危惧もあるが、最終的に1年の激変緩和しか行わないということになった。DPC/PDPSに入った時に調整係数が高く設定され、最後まで暫定調整係数が高止まりしていた病院は、激変緩和はされるものの短期間のうちに係数が大幅に下がることとなる。そのような病院は新たな係数に適応していくためにコスト削減等、さまざまな効率化を行っていく必要があろう。

 算定ルールの変更
 本改定では算定ルールの見直しも行われた。DPC病院で短期滞在手術等基本料に該当する患者の報酬算定についてDPC / PDPS 点数設定方式Dにより算定することとされたことに加え、一連の入院として取り扱う再入院の傷病名の整理(前入院の傷病名・合併症と再入院病名との関係についての見直し)も行われた。

 2018年度改定の影響
 今回、さまざまな病院に医療機関係数がどのように改定により変化したか聞いてみたが、総じて係数が上昇している病院が多い印象である。これは基礎係数の上昇に加え、機能評価係数Ⅰの中の、医師事務作業補助体制加算や急性期看護補助体制加算など、本改定において、医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進として取り組まれた部分の係数が上昇した影響が大きい。
 ただし各診断群の点数は減少していることが多く、実際の病院の収益にどのような影響が出ていくかは、今後の調査の結果を待つ必要がある。

 地域医療構想に寄り添う改定
 今回の診療報酬改定は迫井医療課長が中医協総会で述べたように「地域医療構想に寄り添う」改定という性格が強い。地域での医療機能分化・連携を推進する方向に誘導するよう点数が設定されており、今後の改定もこの方向で継続されていくことが予想される。
 DPC/PDPSにおいても、それらの点数改定が、機能評価係数Ⅰや機能評価係数Ⅱ、また基礎係数において反映されていくことになる。各病院は制度そのものを分析し対応していくことも重要であるが、地域における自院の立ち位置を真剣に考え、環境の変化に適応していくことが、より重要になっていくと思われる。

 

全日病ニュース2018年8月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 第6章 診療報酬体系:「病院のあり方に関する報告書」(2015-2016年版)

    https://www.ajha.or.jp/voice/arikata/2016/06.html

    日本の診療報酬体系は、過去の出来高払い制度から、急性期入院にはDPC/PDPS
    による支払い制度が導入され、医療療養病床には医療区分・ADL 区分 .... 医療機関別
    係数は、基礎係数、機能評価係数Ⅰ、機能評価係数Ⅱ、暫定調整係数の総和である。

  • [2] 2018年度診療改定に向けDPC/PDPSの展望示す|第894回/2017年5 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20170515/news09.html

    2017年5月15日 ... DPC 制度は、急性期入院医療を対象とする診断群分類に基づく1日あたり包括払い
    制度であり、2003年に特定機能病院に ... 暫定調整係数は段階的に基礎係数と機能
    評価係数Ⅱへの置換えを進めており、次期改定で完了する予定である。

  • [3] 次期診療報酬改定の要望書を厚労省に提出|第907回/2017年12月 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20171201/news01.html

    2017年12月1日 ... それに続き、◇重症度、医療・看護必要度と多職種配置を主軸とした中長期的な入院
    基本料評価基準の抜本的見直しと、病棟群単位届出制度の改善◇地域包括ケア病棟
    における在宅等からの受入れ機能評価◇療養病床の医療区分 ...

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