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ホーム全日病ニュース(2018年)第922回/2018年8月1日号全日病総合医育成プログラムがスタート...

全日病総合医育成プログラムがスタート

全日病総合医育成プログラムがスタート

【認定総合医育成事業】「プライマリ・ケアで新たな一歩を踏み出す」

 全日病は7月14日、認定総合医育成事業の開講式を開いた。育成事業には、募集定員40名に対し、59名が参加した。開講式では、井上健一郎常任理事が事業の概要を説明するとともに、必修2単位の「医療経営コース」のプログラムとして、松岡輝昌・厚生労働省医政局地域医療計画課医師確保等地域医療対策室長、猪口雄二会長、前野哲博・筑波大学附属病院総合診療グループ長が講演した。超高齢社会の医療ニーズに応えるための全日病の新たな取組みが始まった。
 全日病総合医育成事業は、概ね経験6年以上の医師が2年程度の研修期間を経て、「全日本病院協会認定総合医」の認定を受けるもの。一定のキャリアを持つ医師の診療の幅を広げるとともに、介護など多職種との連携にスムーズに対応でき、病院組織の運営にも積極的に関与できる医師を育成する。
 プログラムは、①自院での総合診療実践②スクーリング(医療運営、診療実践、ノンテクニカルスキル)③総合診療eラーニングレクチャー─からなる。猪口会長は挨拶で、他団体による同種の事業との違いの一つとして、「自院に勤めながら、総合診療実践を受けることができる」ことを強調した。
 井上常任理事は、そのほかの特徴として、◇技術偏重ではなく、総合医に求められる全般的なスキルを重視したため、テクニカルスキルとノンテクニカルスキルをバランスよく習得できる◇スクーリングの実施により、「単に診療の場を経験する」だけでは獲得できない臨床能力の習得を図る◇ ICTの活用─などをあげた。特に、「激変するプライマリ・ケアの現場で新たな一歩を踏み出すこと」を最重要の目標に位置づけた。
 総合医の認定を受けると、日本プライマリ・ケア連合学会認定の試験が免除される。日本プライマリ・ケア学会理事長の丸山泉理事は、「施設のためではなく、個々の医師のために総合医を育成する。医師が変わらないとプライマリ・ケアは変わらない」と参加者を鼓舞した。
 松岡室長は、政府の社会保障・税一体改革の枠組みの中で、地域医療構想の推進や「病院完結型医療」から「地域完結型医療」への転換、地域包括ケアの推進という近年の改革が進められてきた経緯を説明。医療需要の変化の中で、かかりつけ医機能とあわせ、認定総合医の役割が求められているとした。特に、①フレイル②ポリファーマシー③医療・介護連携─の分野で、特に期待を示した。

 医師偏在解消に総合医育成が不可欠
 猪口会長は、「なぜ病院総合医が必要か」という問いに対し、◇超高齢社会で認知症を含む多疾患を持つ高齢者が増加◇日本専門医機構の「総合診療専門医」の育成には時間がかかる◇多くの医療機関で、専門性を有した医師が専門領域以外で活動する機会が増えている◇医師偏在解消には、総合医の育成が必要不可欠─と説明した。
 医師偏在対策との関連では、「総合医が増えないと医師偏在も解消しない。現状の縦割りの専門医養成の仕組みのままだと、医師が増えても診療科同士の取り合いになって、地域の医療需要に対して適正な配置にならない。一方、十分な数の総合診療専門医が地域で働くようになるには、相当の時間がかかる。地域の医療需要を把握した上で、病院総合医が縦割りの仕組みに横串を刺して、救急を含めた幅の広い診療に対応できれば、医師偏在の解消に役立てることができる」と強調した。
 前野教授は、今後のスクーリングの全般的な概要を説明した。「基本コンセプトは、高度な専門知識を網羅的に覚えたり、専門的な技術を習得したりすることではなく、プライマリ・ケアの現場で一歩を踏み出せることがゴール」と述べた。イメージとして、「適切に当直対応して翌日専門医につなぐ」、「あまり複雑ではない典型的なケースをガイドラインに則して治療する」などを例にあげた。
 翌15日には、「医療運営コース」のスクーリングを実施した。プログラムでは、神野正博全日病副会長が「病院医師をとりまく環境の変化」、佐野哲・法政大学経営学部教授が「医療経営のポートフォリオ」をテーマに講演した。佐野教授による「自院の事業ポートフォリオ分析」のグループワークもあり、活発な議論が交わされた。
 神野副会長は、超高齢社会や働き方改革など病院医師をとりまく環境の変化や、それに対応するための医療制度改革の中身などを説明した。その上で、今後の病院経営にとって、生産性向上を図ることや地域でガバナンスを考えることの重要性を強調した。

 

全日病ニュース2018年8月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 全日病総合医育成プログラム:病院運営支援事業 - 全日本病院協会

    https://www.ajha.or.jp/hms/sougoui/1.html

    当協会プライマリ・ケア検討委員会では、平成30年度より「全日本病院協会 総合医育成
    事業」として、総合医育成プログラムを ... 実践コース」「ノンテクニカルスキルコース」「
    医療経営コース」の3分野から成るスクーリング、③自施設での診療実践からなっており
    、e-leaningであらかじめ予習を行った後に、アクティブラーニングの手法を用いた
    スクーリングの中で学びを深め、学んだことを自院で実践するという、構成となっており
    ます。

  • [2] 全日病総合医育成プログラム:病院運営支援事業 - 全日本病院協会

    https://www.ajha.or.jp/hms/sougoui/4.html

    全日病総合医育成プログラムに関するご案内。全日病(公益社団法人全日本病院協会
    )の病院運営支援事業について。 ... 地域で活躍する総合医には、医学的知識・技術(
    テクニカルスキル)だけでなく、組織人としての技術(ノンテクニカルスキル)が求められる

  • [3] 全日病総合医育成プログラム参加者を募集中|第916回/2018年5月1 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20180501/news02.html

    2018年5月1日 ... 全日病総合医育成プログラム参加者を募集中|第916回/2018年5月1日号 HTML版
    。21世紀の医療を考える「全日病ニュース」は、全日本 ... プログラムの構成は、①総合
    診療e-ラーニング②「診療実践コース」「ノンテクニカルスキルコース」「医療経営コース」
    の3分野から成る ... からなっており、アクティブラーニングの手法を用いたスクーリング
    の中で学びを深め、学んだことを自院で実践する構成となっている。

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