全日病ニュース

不適切事例への対応でガイドライン見直し

【厚労省・オンライン診療指針見直し検討会】５月頃に改訂案まとめる

　厚生労働省のオンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会（山本隆一座長）が、１月23日に初会合を開いた。ガイドラインの趣旨を逸脱するオンライン診療の不適切事例が報告されていることを受け、ガイドラインの見直しや不適切事例への対策などを検討する。今後、数回の議論を重ね、見直し案を５月頃にまとめ、ガイドラインを改訂する。
　医師による診療は、患者と対面で行うのが原則。しかし、情報通信技術の進歩は目覚しく、その技術を活用した診療も求められている。厚労省は段階的に規制緩和を図っており、現在は、直接の対面診療と代替できることが確認されれば、情報通信機器を介し、遠隔的な診療を行うことを認めている。
　昨年度末には、オンライン診療のルールを明確化したガイドラインを作成した。2018年度診療報酬においても、オンライン診療の報酬が設定された。規制改革会議はガイドラインについて、少なくとも年に１度は見直すことを要請している。
　オンライン診療が明確に位置づけられた2018年度以降、様々な不適切事例の報告や報道がある。初診は対面とのガイドラインのルールを守らず、「ネットだけで薬の処方する事例が横行している」といった報道もある。
　厚労省は同検討会に、ガイドラインの見直しを行う上で、オンライン診療を実施する医師が、遵守すべきルールの理解を深める仕組みが必要と指摘するとともに、ガイドラインの不明瞭な点を明確化する考えを示した。また、オンライン診療の広告の適正化や、セキュリティリスクをウェブサイト上で確認できるようにする環境が必要とした。
　検討事項としては、①オンライン診療とは異なるオンライン受診勧奨と遠隔健康医療相談の再整理②同一医師による診療原則の例外など診療行為に関する事項③看護師ができることの業務の明記等④オンライン診療を実施する医師の研修の必修化─をあげた。
　委員からは、「不適切事例の多くは、そもそもガイドラインが求めているシステム環境を備えていない」、「診療報酬改定によるオンライン診療の実態がまだ把握されていない状況で、施設要件を変える話ができる段階ではない」、「患者側の理解が足りず、医師に処方をごり押しする事例などがあるのではないか」─といった意見が出ている。
　また、日本オンライン診療研究会の黒木春郎委員は、「感冒症状や軽微な症状への処方が求められており、患者の利便性を考えた対応が必要」と要望した。一方、緊急避妊薬について、「初診からオンライン診療が可能と解釈している医師がいる」と指摘。その上で、「時期尚早」と慎重な姿勢を示した。
　また、同日は、オンライン診療とは区別される「オンライン受診勧奨」と「遠隔健康相談」の改訂案を示し、概ね了承された。定義の明確化を図り、可能な事項をより詳しく書き込んだ。