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初診対面なしの緊急避妊薬のオンライン処方の要件を議論

初診対面なしの緊急避妊薬のオンライン処方の要件を議論

【厚労省・オンライン診療指針見直し検討会】「専門医以外の処方認める」に賛否

 厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」(山本隆一座長)は4月24日、オンライン診療の初診対面診療の原則の例外として緊急避妊薬の処方を認める際の要件を議論した。厚労省が要件案を示したが、産婦人科専門医以外にも処方を認めるかなどの点で意見が分かれ、合意には至らなかった。
 オンライン診療を行うすべての医師は、患者と直接対面して診療をした上で、オンライン診療を行うことが原則とされている。この例外として、緊急避妊については初診の対面診療なしにオンライン診療できると認める方向が前回の検討会で了承された。
 そのため、緊急避妊をオンライン診療で実施するに当たっての要件を、オンライン診療の指針に盛り込むことになる。厚労省は4月24日の検討会に、要件案として次の4点を提示した。①医師は産婦人科専門医あるいは事前に厚労省が指定する研修を受講した医師②緊急避妊薬を処方する際には、3週間後の産婦人科受診の約束を確実に行う③緊急避妊薬を処方する場合は1錠のみ。処方後、内服の確認をする④医療機関のウェブサイト等で、避妊成功率や、オンライン診療後に薬が配送されるまでの時間等を明記する。
 オンラインで処方できる医師の要件について、産婦人科医に限るべきとの意見が出る一方、産婦人科がいない地域があることや、産婦人科医の多くがオンライン診療を実施していないことから、研修内容を慎重に検討した上で他科の医師にも処方を認めるべきとの意見も出た。
 また、「研修を導入して、産婦人科医以外にも緊急避妊薬の処方を認めるのなら、地域の産婦人科以外の医師が(対面診療で)緊急避妊をできるようにし、地域医療の体制を整えるのが先ではないか」との指摘も出た。
 日本産婦人科学会と日本産婦人科医会の参考人は、緊急避妊薬での避妊は100%成功するものではないことや、すでに妊娠していることに気付かずに緊急避妊を求めてしまう患者がいる例などをあげ、産婦人科以外の医師でも処方可能とする要件案に、懸念を示した。
 3週間後に産婦人科を受診するよう患者に約束させるとの要件案についても、「受診を『約束する』というのでは十分ではない。3週間後に患者に連絡するのを、処方した医療機関の義務にすべき」との意見が出た。
 オンライン診療で緊急避妊薬を処方される患者側については、性犯罪・性暴力の被害者に限るべきかとの問題提起が委員からなされた。これに対し、デートレイプなど、犯罪かどうか当事者がすぐに判断できないケースもあるため、望まない妊娠をする可能性のある女性すべてを対象とすべきとの意見があった。
 要件案について、緩和や厳格化を求める意見が出され合意に至らなかったため、次回の会合までに厚労省が調整し、要件について再度議論する予定となった。

初診には患者の身分証明が必須に
 オンライン診療のセキュリティ対策の課題も議論した。厚労省は、オンライン診療システムは「第三者機関に認証されるのが望ましい」とした上で、第三者機関の認証として、プライバシーマークやISMSなどを例示した。委員からは、例示ではなく、すべてを列記して、それ以外の認証は認めないことにすべきとの意見が出た。
 緊急避妊など、例外的に初診でオンライン診療を実施する場合について、厚労省は患者が「2種類以上の身分証明書を用いて本人証明をすることが望ましい」と指針に明記することを提案した。今村聡委員は、「1種類の身分証明書で本人証明することを必須とし、2種類以上の身分証明書を示すことが望ましいとすべき」と主張し、厚労省も同意した。
 厚労省は、5月に指針の改定案をまとめたいとしている。

 

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