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ホーム全日病ニュース(2019年)第953回/2019年12月1日号医師の働き方改革対応で各種加算の要件を見直し

医師の働き方改革対応で各種加算の要件を見直し

医師の働き方改革対応で各種加算の要件を見直し

【中医協総会】常勤・専従要件や会議頻度も効率化・合理化

 中医協総会(田辺国昭会長)は11月8日、次期診療報酬改定に向け、医療従事者の働き方をテーマに議論を行った。医師事務作業補助体制加算や総合入院体制加算の要件について、急性期の大病院だけでなく、中小病院でも算定しやすくなるよう見直す方向で、概ね合意を得た。そのほかの診療報酬でも、勤務医の負担軽減のため、様々な効率化・合理化の対策を講じる。
 医師事務作業補助体制加算は15対1から100対1までの配置基準に応じて点数が設定されている。要件には、年間の緊急入院患者数や全身麻酔による手術件数などの施設基準がある。2018年度改定結果の検証調査では、このような要件を満たすのが難しいとの指摘があった。全日病会長の猪口雄二委員は、「急性期の大病院ではない中小病院でも、同じように事務的な作業は多い。緊急入院や手術要件の考え方を変えて、病院が柔軟に算定できるよう見直すべき」と主張した。
 また、病床規模の大きい病院ほど、「医師事務作業補助者の外来への配置」が医師の負担軽減に効果があるとの回答が多いことなどを踏まえ、医師作業事務補助者の外来への配置を評価することを検討する。
 総合入院体制加算については、医師と看護師の業務分担の実施を評価する方向で合意した。総合入院体制加算では、医療従事者の負担を軽減するための計画作成が施設基準となっている。この計画に盛り込む項目の選択肢として、「看護職員との業務分担、特定行為研修修了者の配置、院内助産等の開設」などの項目を追加する考えだ。特に、院内助産の実施は、日本看護協会の調査によると、7割以上の施設が、産科医師の業務負担が軽減されたと認識しているという。
 医師から看護師への業務分担が進めば、看護師の業務が増えるため、看護師と看護補助者との役割分担も改善が求められる。現行では、看護師と看護補助者の業務分担については、看護補助加算や夜間看護加算で評価している。しかし、猪口委員は、「看護補助者の採用が困難になっている。介護のような処遇改善加算もなく、給与面の改善が難しいことに配慮してほしい」と対応を求めた。
 また、看護補助者の配置を評価する加算では、業務遂行のための基礎的な知識・技術の習得のため、年1回以上の院内研修を要件化している。これに対し、猪口委員は「採用時に1回を実施すればよいのではないか」と要望した。
 病棟薬剤業務実施加算などで常勤の薬剤師2人の配置を要件としていることでは、要件緩和を求める意見が猪口委員をはじめ、複数の委員から出た。薬剤師をめぐっては、病院と薬局に給与格差があるため、病院での採用が難しいとの意見が相次ぎ、薬剤師の技術料に関して、医科と調剤の診療報酬のあり方の再考を求める意見が出た。
 また、ハイケアユニット入院医療管理料は病棟薬剤業務実施加算の算定の対象外だったが、認める方向になった。
 栄養サポートチーム加算は、栄養サポートチームの介入により、結核患者の入院期間の短縮や、統合失調症患者の空腹時総コレステロール値の異常値が改善するなどの効果が示されている。これを踏まえ、一般病棟等だけでなく、精神病棟や結核病棟でも算定できるようにすることで、概ね合意を得た。
 人員配置の合理化では、2018年度改定と同様に、ライフ・ワーク・バランスへの対応の観点も含め、医師の常勤要件について、短時間勤務の組み合わせによる常勤換算を認める診療報酬を拡大する。対象となる診療報酬は多岐にわたり、現在、厚生労働省が該当する診療報酬項目を整理している。
 看護師の専従要件についても、業務を実施していない時間帯は、他の業務に従事できるよう要件を見直す方向だ。会議の効率化では、診療報酬の算定で開催が必要な会議の開催頻度などを見直す。「医療安全の係る会議」や「感染対策に係る会議」を対象に検討する。

オンライン診療料等の要件緩和診療側と支払側の意見は平行線
 同日の総会では、ICTの利活用もテーマとした。オンライン診療をめぐって、診療報酬の要件緩和の是非を議論したが、診療側と支払側の意見は平行線をたどった。2018年度改定で新設したオンライン診療の診療報酬(オンライン診療料やオンライン医学管理料)は、対面診療を原則とし、対面診療とオンライン診療を組み合わせる形で、様々な要件を設けている。支払側委員は要件緩和を主張し、診療側は反対した。
 オンライン診療料(70点)やオンライン医学管理料(100点)は、初診では算定できず、再診後も特定疾患療養管理料など特定の管理料を算定し、6カ月以上経過した患者が対象となる。対象患者でも3カ月に1度は、対面診療で行う必要がある。
 オンライン診療などの算定回数は除々に増加傾向にある。2018年度改定結果検証調査でオンライン診療を実施している施設は病院の24%、診療所の16%だった。算定できない患者の理由では、「緊急時に概ね30分以内に対面診療が可能であるとの要件を満たせない」が最も多い。
 支払側委員は、オンライン診療の診療報酬の要件緩和が求められていると主張した。オンライン診療を受診した経験のある患者への質問で、8割以上が、「対面診療と比べて、受診する時間帯を自分の都合に合わせられた」、「待ち時間が減った」、「オンライン診療の手間や費用負担に見合うメリットがあると感じた」と回答していたとの調査結果などを踏まえた。
 これに対し日本医師会の委員は、「利便性に関しての回答で肯定的な意見が出ているが、安全性・有効性の観点でのエビデンスは十分に確認されていない」(城守国斗委員)、「要件緩和の環境はまだ整っていない」(今村聡委員)と主張し、議論は平行線をたどった。
 ただ、HTLV-関連脊髄症など一部の指定難病の遠隔医療について、要件緩和を認めることでは、概ね合意を得た。生活習慣病患者への要件緩和では、診療側・支払側で賛否があった。
 オンライン診療の指針の改訂で、希少性や専門性が高く、近隣の医療機関では診断が困難な疾患について、遠隔地の医師が初診からオンライン診療を行う場合の保険診療の位置づけも論点になった。しかし、日本医師会の松本吉郎委員は、「営利目的の医療機関を助長する恐れがある」との懸念を示した。
 管理栄養士が、情報通信機器を用いて糖尿病等の患者に対し、栄養食事指導を実施することも論点になったが、これについても、賛否両論があった。
 診療報酬の要件となっているカンファレンスには、患者が同席するものと、医療従事者だけで行うものがある。これらのうち、医療機関間で医療従事者がリアルタイムの画像により、カンファレンスを行うことのできる要件を緩和することでは、概ね合意を得た。

 

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