全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2019年)第953回/2019年12月1日号理学療法士等による訪問リハビリテーションを適正化

理学療法士等による訪問リハビリテーションを適正化

理学療法士等による訪問リハビリテーションを適正化

【中医協・総会】認知症ケア加算は緩和と強化

 中医協総会(田辺国昭会長)は11月20日、訪問看護、認知症やせん妄対応、精神医療をテーマに議論した。訪問看護ステーションは、理学療法士等による訪問リハビリテーションの増加を踏まえ、適正化を図る方向だ。認知症ケア加算は、「1」の緩和と「2」の強化を検討する。精神医療では、最初は入院させ専門的な管理が必要なクロザピンや持続性抗精神病注射製剤(LAI)の普及を促す対応を図る。
 訪問看護ステーションの従事者数のうち、理学療法士等が2割を超え増加している。特に、営利法人と医療法人で理学療法士等が6割を超える訪看ステーションが散見される。そのような訪看ステーションでは、24時間体制の確保やターミナルケアの実施が少ない傾向がある。
 このため、機能強化型訪問看護管理療養費は、重症患者の受入れを要件とする評価であるので、看護職員の割合を要件に加えることを検討する。また、医療ニーズに高い患者のみ実施可能である週4日目以降の理学療法士等による訪問看護の評価の適正化を検討する。訪問看護計画書と報告書については、訪問する職種の記載を求める。このような適正化の論点に対し、全日病会長の猪口雄二委員をはじめ、複数の委員が賛意を示した。
 医療従事者の働き方改革の観点では、他の診療報酬と同様に、一部の職員は短時間労働者などの組み合わせによる常勤換算を認める方向だ。同一建物居住者に対する訪問看護が増えていることに対しては、複数名訪問看護加算や難病等複数回訪問加算等において、医療機関による在宅医療と同様に、同一建物居住者の考え方を導入する。
 認知症対応では、認知症ケア加算1で、認知症ケアチームの要件である専任の常勤医師の確保が困難との意見が多いことを踏まえ、医師の要件を緩和する。認知症ケア加算2は、認知症ケアチームの設置は難しいとしても、専門性の高い看護師の配置の要件を追加した評価を設ける。診療側の委員からは、評価を「3段階にすべき」との意見が出た。せん妄対応では、適切な予防の取組みを推進するため、介入のタイミングや内容に関して、標準的な取組みを行う体制を新たに評価する。
 依存症については、ギャンブル依存症に効果的な集団療法のプログラムが開発されたことを踏まえ、診療報酬での評価が課題となった。しかし、支払側の委員が、「時期尚早」と難色を示した。明細書の無料発行については、電子レセプト未対応の医療機関はまだ義務化されていないなど、完全実施されていない。支払側は「無料発行開始から10年の節目であり、完全実施すべき」と主張。診療側は「対応に苦慮する医療機関がある」と説明し、引き続きの配慮を求めた。
 統合失調症患者への治療薬として効果の高いクロザピンは、日本で普及していないことから、2018年度診療報酬改定で特定入院料からクロザピンの薬剤料を包括範囲から除外した。しかし、現状でも普及は不十分とされる。対応としては、投薬開始時の急性期病棟での専門的な管理における入院期間(18週まで原則入院)が診療報酬の要件と齟齬を来たす場合があるので、見直しを検討する。また、児童・思春期精神科入院医療管理料でもクロザピンの薬剤料を包括範囲から外す。
 一方、再発統合失調症患者に推奨されるLAIも日本での処方率が低く、普及を促す対応を図る。LAIは経口ではなく、2~4週間に一度の注射で済む。治療脱落率や再入院率が低いとされ、持続性抗精神病注射薬剤治療指導管理料で、LAIの薬剤料を包括から除外することを検討する。

 

全日病ニュース2019年12月1日号 HTML版