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ホーム全日病ニュース(2019年)第953回/2019年12月1日号「重症度、医療・看護必要度」など急性期入院医療の議論が本格化

「重症度、医療・看護必要度」など急性期入院医療の議論が本格化

「重症度、医療・看護必要度」など急性期入院医療の議論が本格化

【中医協・総会】中医協・総会基準②のみ該当の妥当性めぐり診療側と支払側で応酬

 中医協総会(田辺国昭会長)は11月15日、2020年度診療報酬改定に向け、入院医療の議論を本格化させた。入院医療等の調査・評価分科会の報告書を踏まえ、同日は、急性期入院医療、特定集中治療室管理料、総合入院体制加算などを論点にあげた。「重症度、医療・看護必要度」では特に、2018年度診療報酬改定で導入した、いわゆる基準②の妥当性をめぐり、診療側と支払側で意見の応酬があった。
 旧7対1入院基本料である急性期一般入院料1は2019年10月時点で約34万5,300床。ピークの2013年7月は約37万9,400床であり、約3万4,100床減っている。入院基本料の中で、最も高い水準である旧7対1は、一般病床の半数を占めるため、医療費抑制の観点で、入院基本料がより低い他の病棟への転換を促すことが、政府の経済財政諮問会議や財務省から求められてきた。病床の機能分化、連携を進める上でも、地域包括ケア病棟入院料の創設を含め、様々な対策が講じられ、2018年度改定では、入院料体系を大きく変更する大改革が行われた(下記の図表参照)。
 旧7対1を厳格化するために、最も活用されたのが「重症度、医療・看護必要度」である。項目を見直すととともに、該当患者割合の基準値を引き上げてきた。2020年度改定でも、A項目(モニタリングおよび処置等)、B項目(患者の状況等)、C項目(手術等の医学的状況)のそれぞれを見直す方向に 中医協総会(田辺国昭会長)は11月15日、2020年度診療報酬改定に向け、入院医療の議論を本格化させた。入院医療等の調査・評価分科会の報告書を踏まえ、同日は、急性期入院医療、特定集中治療室管理料、総合入院体制加算などを論点にあげた。「重症度、医療・看護必要度」では特に、2018年度診療報酬改定で導入した、いわゆる基準②の妥当性をめぐり、診療側と支払側で意見の応酬があった。
 旧7対1入院基本料である急性期一般入院料1は2019年10月時点で約34万5,300床。ピークの2013年7月は約37万9,400床であり、約3万4,100床減っている。入院基本料の中で、最も高い水準である旧7対1は、一般病床の半数を占めるため、医療費抑制の観点で、入院基本料がより低い他の病棟への転換を促すことが、政府の経済財政諮問会議や財務省から求められてきた。病床の機能分化、連携を進める上でも、地域包括ケア病棟入院料の創設を含め、様々な対策が講じられ、2018年度改定では、入院料体系を大きく変更する大改革が行われた(下記の図表参照)。
 旧7対1を厳格化するために、最も活用されたのが「重症度、医療・看護必要度」である。項目を見直すととともに、該当患者割合の基準値を引き上げてきた。2020年度改定でも、A項目(モニタリングおよび処置等)、B項目(患者の状況等)、C項目(手術等の医学的状況)のそれぞれを見直す方向にある。同日の議論において、診療側と支払側の意見が最も対立したのが、2018年度改定で加えた新たな基準(基準②)だった。
 基準②は「B14(診療・療養上の指示が通じる)またはB15(危険行動)に該当する患者であって、A得点が1点以上かつB得点が3点以上」。認知症やせん妄の患者が急性期病棟で他の患者よりも労力が必要になることを評価した基準見直しだった。
 しかし、支払側の委員は、入院医療分科会の報告書で示されたデータから、「急性期の患者の指標として、いかがなものか」(吉森俊和委員・全国健康保険協会理事)と妥当性を疑問視した。具体的には、基準②のみに該当する患者が、◇他の基準との重複が少なく、基準②のみで該当している患者が多い◇基準②のみに該当する患者の半数の直前の状態をみると、どの基準にも「非該当」◇基準②のみに該当する患者の割合は、一般病棟よりも療養病棟で高い─などに言及した。
 これに対し、診療側の委員は現場の実態を説明し、理解を求めた。全日病会長の猪口雄二委員は、「認知症やせん妄の患者が骨折などで急性期病棟に入院すれば、とても手がかかる患者になる。2018年度改定ではそこを評価してもらった。認知症やせん妄があるから、急性期病棟に入院するわけではない」と強調した。日本病院会の島弘志委員は、「病院の看護師はやっと自分たちの苦労が報われたと思っている。基準②を外すのは論外」と訴えた。日本医師会の松本吉郎委員は、「2018年度改定で導入したばかりであり、朝礼暮改になる」と述べた。
 A項目については、「専門的な治療・処置」に該当する薬剤のうち、抗悪性腫瘍剤や免疫抑制剤の内服薬は、全体的に入院で実施される割合が低いとのデータが示された。C項目については、評価対象とされる手術等で、入院で実施される割合が9割未満のものがある一方で、入院で実施される割合が9割以上であるが、現在評価対象になっていないものが多くあるとのデータが示された。入院で実施される手術等が項目に含まれるべきとの考え方から、身体への侵襲度との関係とあわせ、項目を再整理する論点が示された。方向性に関しては、概ね委員の合意を得た。
 「重症度、医療・看護必要度Ⅱ」は、厚労省が「Ⅱの届出を一定程度進めること」を論点にした。これに対し、支払側の委員は、「200床以上の病院は必須化とすべき」と主張した。松本委員は、「体制が整わない病院がある。選択制は残すべき」と述べた。日本看護協会常任理事の吉川久美子専門委員は、「Ⅱの採用による看護職員の負担軽減効果は限定的」とけん制した。

SOFAスコアの拡大に慎重な意見
 特定集中治療室管理料については、2018年度改定で管理料1・2に必須化した生理学的スコア(SOFA)を管理料3・4に拡大させることが論点になった。「重症度、医療・看護必要度」と一定の関連性が確認されたことから、高度急性期の指標として標準化する狙いも想定されるが、診療側委員からは、SOFAは相当の重症者を測定する指標であり、「代替はそぐわない」との意見が出た。
 2018年度改定で導入した特定集中治療室管理料1・2に対する専門性の高い看護師の配置の要件化については、現在、来年3月31日までの経過措置中だが、9割以上で要件を満たしており、予定通り経過措置は終了することで、概ね委員の了解が得られた。
 総合入院体制加算については、主要な診療科をそろえた総合的な入院体制を評価しているが、地域で病院同士が診療科の機能分化、連携を進める上で、障害になっているケースがあると指摘されている。例えば、小児科や産婦人科を集約化して、病院を再編・統合した事例がある。そのようなケースを踏まえ、総合入院体制加算の要件は緩和する方向で検討することになった。

 

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