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ホーム全日病ニュース(2021年)第997回/2021年11月1日号機能強化型の在支病の要件緩和を含め在宅医療を議論

機能強化型の在支病の要件緩和を含め在宅医療を議論

機能強化型の在支病の要件緩和を含め在宅医療を議論

【中医協総会】改定に向け第2ラウンドの議論開始

 中医協は10月13日、2022年度診療報酬改定に向け、第2ラウンドの議論を開始した。今後、来年2月中旬頃の厚生労働大臣への答申を目指し、各テーマに関して、個別的な議論が展開される。同日は在宅医療が議題となった。具体的には、在宅療養支援診療所・病院の位置づけや、在宅医療を担う医療機関の裾野を広げるための継続診療加算の要件緩和、外来担当医師と在宅担当医師による共同指導の評価、在宅ターミナルケア加算の要件緩和などが論点となった。
 最初に在宅医療をめぐる状況を確認した。2025年に向け、在宅医療の需要は高齢化の進展や、地域医療構想による病床の機能分化・連携により、大きく増加する。需要の増大に対応するため、在宅医療の供給を増やす必要があるとしている。2019年度で、自宅で死亡する人は13.6%。この10年間で在宅死は増えてきており、病院で死亡する人の割合は71.3%となっている。
 一方、国民の3割が、「最期を迎えるときに生活したい場所」で「自宅」を希望しているとの意識調査も示された。

緊急往診ゼロでも在宅医療支える
 在宅療養支援病院(以下、在支病)については、四病院団体協議会の資料が示され、在支病において、年間の緊急往診件数がゼロ件であっても、在宅患者の入院受入件数が31件以上の在支病が、30件未満の病院よりも多いことが示された。一方、機能強化型の在宅療養支援診療所(以下、在支診)・在支病に対しては、過去1年間の緊急往診の実績が要件化されている。
 日本医師会常任理事の城守国斗委員は、「必ずしも緊急往診の実績がなくても、在宅医療を支えている。機能強化型でなくても、それと同等の機能を果たしている在支病があるので、機能強化型に準じた評価を考えてもよいのではないか」と主張した。
 一方、健康保険組合連合会理事の幸野庄司委員は、「緊急往診ゼロ件はおかしいのではないか」と指摘した。これに対し、城守委員は、「患者の容態が悪化した場合、最初に訪問看護ステーションに連絡が入って、それから入院の手続きになることも多い。あるいは訪問診療で対応していることもある。在支病はバックベッドがあるので、緊急往診を要件化することには無理がある」と説明した。
 また、在支病で、地域包括ケア病棟入院料を届け出ている施設は6割となっている。2020年度改定では、地ケア病棟入院料などに「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を踏まえ、「適切な意思決定支援に関する支援」を定めていることが要件化された。一方、機能強化型の在支診・病で、看取りに対する指針を定めているのは約半数。
 幸野委員は、「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の取組みは必須で、少なくとも機能強化型の在支診・病には要件化すべき」と主張した。日本病院会副会長の島弘志委員は、「ACPの取組みは重要で、やっているところは評価すべきだが、要件化は厳しい」と述べた。

継続診療加算の要件緩和を検討
 継続診療加算(216点・1月に1回)は、在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料の加算で、在支診以外の診療所が、かかりつけの患者に対し、他の医療機関との連携等により、24時間の往診体制と連携体制を構築していることを評価している。ただし病院は算定できない。外来や訪問診療を行っている患者に対し、24時間の往診体制と連絡体制を整えていることなどが要件となっている。
 在宅医療を行うが、在支診の届出は難しい診療所を評価する診療報酬との位置付けもあり、在宅医療の裾野を広げることを期待し、2018年度改定で導入されたが、あまり増えていない。2018年度に約380施設の届出があり、その後は微増で、2020年5月時点でも400弱にとどまる。継続診療加算を算定する診療所は、在宅時医学総合管理料を算定する医療機関の約6.7%、算定回数でも約7.7%となっている。
 診療所に継続診療加算を算定していない理由をきくと、「24時間の連絡・往診体制構築に向けた協力医療機関が確保できない」が約5割で最も多く、医療機関の連携が難しい状況があることが示されている。
 一方、厚労省は、地域で取り組んでいる在宅医療連携のモデルとして、東京都板橋区と千葉県柏市の事例を紹介した。板橋区では、在宅医が学会等へ参加するなどの事情で、看取りが必要な患者の対応ができない場合に、別の在宅医が対応するシステムを運用している。柏市では、医師会と市による、かかりつけ医グループがバックアップする体制を整えているという。
 厚労省は、「24時間の往診を行う体制を確保していない場合であっても、市町村・医師会と連携した上での在宅提供が構築されている場合がある」ことを踏まえ、継続診療加算の要件等のあり方を考えることを論点とした。
 城守委員は、「在宅医療の需要の増加に対応するため、もう少し積極的に継続診療加算を算定できるよう要件等を見直す必要がある」と主張した。一方、日本労働組合総連合会総合政策推進局長の佐保昌一委員は、「緩和する方向だけだと、医療の質の低下が懸念される」と述べた。
 外来患者が通院困難となって、在宅医療を受けることになり、医療機関が変わる場合がある。外来から在宅への移行にあたっては、各種の調整が求められ、医療機関間などによる、適時の連携などが重要になる。このため、外来を担当する医師と在宅を担当する医師が共同して、患者に必要な指導などを行うことの評価が論点となった。
 移行のタイミングが遅れれば、患者が抱える医療・介護などの課題が複雑化、不可逆化する可能性があり、円滑な移行に向けた調整が必要となる。支払側と診療側の両者から、診療報酬上の評価が必要との意見が出された。その場合に、ICTの活用や多職種連携の取組みも評価することが求められた。
 在宅ターミナルケア加算は、在宅で死亡した患者に、死亡日から2週間以内に、2回以上の訪問診療等を実施した場合に算定できる。算定回数は増加傾向で、特に機能強化型の在支診等の算定回数が増えている。算定回数は、機能強化型在宅療養支援診療所等(病床あり)が4,562件、在宅療養支援診療所等が3,072件となっている(2020年)。
 ただ、ターミナルケアを実施していても、在宅ターミナルケア加算を算定できない事例がある。具体的には、「医師が訪問診療の計画のために往診のみの期間があり、計画を立てた初回の訪問診療までに看取りに至った場合」、「月1回の訪問診療の患者の訪問診療の予定日前に状態の急変があり、往診したが、そのまま看取りとなった場合」が示された。
 診療側の委員からは、「事例として少ないとは思うが、不合理であり、手直しが必要だ」との意見が相次いだ。

 

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  • [1] NEWS 5/1

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2014/140501.pdf

    2014/06/07 ... 問・答申と、これまでの改定と同様の審. 議日程を提示、了承を得た。 ... 関の裾野を広げ、集合住宅においては ... 次回議題に.

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