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ホーム全日病ニュース(2021年)第997回/2021年11月1日号初診からのオンライン診療の指針改訂に向け議論再開

初診からのオンライン診療の指針改訂に向け議論再開

初診からのオンライン診療の指針改訂に向け議論再開

【厚労省・オンライン診療指針見直し検討会】どのような場合に可能であるかの条件を整理

 厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」(山本隆一座長)は10月7日、初診からのオンライン診療を可能とするための指針の改訂の議論を本格化させた。現状では、新型コロナの状況を踏まえ、時限的・特例的に初診からの電話・オンライン診療が実施されているが、新型コロナ収束後を見据え、通常ルールであるオンライン診療の指針で、初診からのオンライン診療を可能とする改訂を行う。診療報酬の議論は中医協で行われるため、厚労省は、可能な限り早く議論をまとめたい考えだ。
 検討会ではまず、時限的・特例的に実施されている初診からの電話・オンライン診療の実績が報告された。定期的に報告されているもので、今回は2021年4月~6月の実績が報告された。その結果、2020年4月からの過去4回の実績と同様の傾向が確認された。
 具体的には、◇利用は小児・勤労世代が多い◇軽症と思われる患者が多い◇物理的に大きく離れた地域での事例が一部にある◇時限的・特例的な取扱いで禁止されている麻薬・向精神薬の処方等の事例が一部にある─という傾向が示されている。
 オンライン診療の推進に積極的な立場の委員からは、「コロナ禍であるにもかかわらず、利用が大きく増えないのはなぜか。どこにボトルネックがあるのかという観点で分析すべき」、「実施率の地域差が大きい。実施率が低いところは、それがなぜなのかを分析すべき」などの意見が出た。
 一方、電話・オンライン診療を実施している診療所の医師からは、「夏の新型コロナの第5波の状況は、それまでとは違っていると思うので、それを考慮して、次回の実績の分析を行う必要がある」との指摘があった。また、「電話診療とオンライン診療は診療内容が大きく異なるので、区別して把握し、分析すべき」との意見も複数の委員から出た。
 日本医師会副会長の今村聡委員は、麻薬や向精神薬の処方など不適切事例が生じていることを踏まえ、「推進ありきではなく、一定の適切なルールの中で、安全に運用できることを確認しつつ、指針の改訂の議論を進めていくことが大事だ」と強調した。

対面診療につなげる仕組みが課題
 同日の議論では、オンライン診療における「初診に必要な医学的情報」、「(オンライン診療が可能であることを判断する前の、オンライン診療に先立つ)オンラインでのやりとり」、「病状」、「処方」、「対面診療の実施体制」をめぐって、意見が交わされた。
 「初診に必要な医学的情報」については、現状で◇過去の診療録◇診療情報提供書◇健康診断の結果◇地域医療情報ネットワーク◇お薬手帳─などがあがっている。ただ、委員からは、一定の基準は定めつつも、基本的には医師の裁量で、医師と患者の合意により決めるべきとの意見が多かった。
 身体に装着して個人の健康状態を計測する機器が今後普及することも見込み、初診からオンライン診療を実施する上での医学的情報については、柔軟に判断されるべきとの意見もあった。
 「オンラインでのやりとり」は、初診でのオンライン診療が実施可能であるかを判断するための「オンラインでのやりとり」である。それ自体は、オンライン診療ではなく、「初診に必要な医学的情報」を確認する場面でもある。オンライン診療とは異なる枠組みで実施する必要があり、オンライン診療につながる場合とつながらない場合に分けて、考える必要がある。委員からは、医療相談や受診勧奨に相当する場面であるため、自由診療として、自費を請求する場合を整理しておくべきとの意見が出た。
 「処方」との関係でも、「医療相談や受診勧奨で費用が発生しないのであれば、オンライン診療料を請求するために不必要な処方が行われる可能性がある」との指摘が出ており、費用についての考え方の整理が求められている。
 「症状」については、日本医学会連合が6月1日に「オンライン診療の初診に関する提⾔」をまとめており、オンライン診療の初診に適さない症状などが示されている。基本的には、この提言に従って、症状が判断され、オンライン診療の可否が決まると考えられる。
 「処方」については、時限的・特例的措置において、◇患者の基礎疾患等の情報が把握できない場合の特に安全管理が必要な医薬品◇麻薬・向精神薬の処方─が禁止され、患者の基礎疾患等の情報が把握できない場合の処方日数制限がある。これを踏まえ、恒久的な仕組みの議論が行われた。
 「対面診療の実施体制」については、かかりつけ医をめぐって、様々な意見が出た。オンライン診療を実施するなかで、急変時や重症化で対面診療が必要になった場合に備えて、オンライン診療を実施する医療機関または、あらかじめ承諾を得た他の医療機関に速やかに紹介することが求められている。
 議論では特に、若年者や勤労世代がかかりつけ医を持ち、対面診療につなげることに、初診からのオンライン診療を普及させる意義があるとの意見が出た。一方で、「(オンライン診療専門の医師が)物理的に遠い場所から、オンライン診療を実施し、対面診療が必要な場合に、別の医療機関の医師に引き継ぐことに問題があるのか」との意見もあった。

 

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  • [1] 2021.8.1 No.991

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2021/210801.pdf

    2021/08/01 ... (2)2021年(令和3年)8月1日(日). 全日病ニュース. コロナ禍中にあって我々病院はコロ. ナ感染患者、疑い患者、検査、ワクチ.

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