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ホーム全日病ニュース(2021年)第997回/2021年11月1日号C-2水準適用の技能の考え方や運用方針示す

C-2水準適用の技能の考え方や運用方針示す

C-2水準適用の技能の考え方や運用方針示す

【厚労省・医師の働き方改革検討会】「長時間労働の抜け道になる」との懸念に対応

 厚生労働省の「医師の働き方改革の推進に関する検討会」(遠藤久夫座長)は10月14日、医師の時間外労働の特例水準であるC-2水準が適用される対象分野の考え方と審査の運用についての厚労省の提案を了承した。適用対象となる技能の考え方とともに、それを審査する組織や運用の適切性・透明性を担保するための方針が示された。
 C-2水準は、B水準、連携B水準、C-1水準とともに、960時間が通常の医師の時間外・休日労働の上限を超えて、1,860時間まで認められる特例水準である。
 C-2水準に対しては、同検討会の委員から「長時間労働の抜け道になる」(岡留健一郎委員・日本病院会副会長)との指摘があり、適用対象を明確化することが、検討会の積み残しの課題となっていた。B水準とC水準は、目的も趣旨も異なるが、適用対象となる技術については、相互に重なる部分があることが、学会等のヒアリング結果からも示唆されており、B 水準がC-2水準に代替されて、C-2水準の対象が想定より増えることが懸念されている。
 今回の整理では、C-2水準の対象としてまず、「日本専門医機構の定める基本領域(19領域)において、高度な技能を有する医師を育成することが、公益上特に必要と認められる医療の分野」であることがあげられた。ただ、「公益上特に必要と認められる医療の分野」が、対象を限定することを表現する法律用語であるとしても、医療の分野の中で、「公益上特に必要なもの」を線引きすることは難しいとの指摘が相次いだ。
 あわせて、①「医療水準を維持発展していくために必要とされる、医学研究や医療技術の進歩により新たに登場した、保険未収載の治療・手技技術」または②「良質かつ安全な医療を提供し続けるために、個々の医師が独立して実施可能なレベルまで習得・維持しておく必要があるが、基本領域の専門医取得段階ではそのレベルまで到達することが困難な技能」であるとした。
 ①については、限定的な対象の選定につながる考え方だが、②については、対象が大きく広がりかねない解釈の余地が残るとの指摘があった。
 さらに、「技能の習得にやむを得ず長時間労働が必要となる業務」の考え方に該当するものとして、◇診療の時間帯を選択できない◇同一の患者を同一の医師が継続して対応する必要がある◇その技能に関する手術・処置等が長時間に及ぶ─のどれかに該当することが必要になる。これらは、ある程度明確に判断できる基準であると指摘された。
 ただ、このような対象の考え方を踏まえても、C-2水準の対象を限定的にすることには、必ずしもつながらないため、審査する組織や運用の適切性・透明性を担保するための方針が示された。
 方針案としては、◇医師が提出する技能研修計画において、計画期間や習得予定の技能、経験予定症例数、手術数、指導者・医療機関の状況などの記載を求める◇複数の異なる分野の学術団体から技術的助言を得た上で、審査する◇同検討会で必要に応じ運用の見直しを行う◇C-2水準の考え方を蓄積された技能研修計画の内容を用いて、定期的に見直す─などを示し、了承を得た。
 今回、この問題が整理されたことで、2024年度の医師の時間外労働規制の実施に向け、6月に成立した改正医療法に基づく政省令等を交付するのに必要な検討が一段落したことになる。

 

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