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ホーム全日病ニュース(2021年)第997回/2021年11月1日号2022年度診療報酬改定の入院医療の技術的な課題まとめる

2022年度診療報酬改定の入院医療の技術的な課題まとめる

2022年度診療報酬改定の入院医療の技術的な課題まとめる

【中医協・入院医療等分科会】新型コロナが診療報酬に与えた影響も調査

 中医協の入院医療等の調査・評価分科会(尾形裕也分科会長)は10月21日、2022年度診療報酬改定に向けた同分科会のこれまでの検討結果(とりまとめ案)を大筋で了承した。同日の意見を反映させた正式なとりまとめを10月27日の基本問題小委員会に報告した。
 とりまとめ案には、9月8日の中間とりまとめに、診療情報・指標等作業グループやDPC/PDPS 等作業グループの検討内容、2021年度調査結果の速報値を追加し、分科会の議論における委員の意見を加筆している。なお、DPC制度はDPC評価分科会が廃止となったため、同分科会での検討事項となっている。
 同分科会は、2020年度診療報酬改定の答申書附帯意見のうち、入院医療に関連する事項について、2020年度改定後の状況を調査し、結果を分析するとともに技術的な課題の検討を行う役割を担っている。入院医療に関する個別の論点について、改定の方向性を明確に示す内容とはなっていないが、方向性を示唆する内容となっている。
 検討事項としては、◇一般病棟入院基本料◇特定集中治療室管理料等◇短期滞在手術等基本料◇DPC/PDPS◇地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料◇回復期リハビリテーション病棟入院料◇療養病棟入院基本料◇障害者施設等入院基本料等◇救急医療管理加算◇医療資源の少ない地域に配慮した評価◇横断的個別事項─を盛り込んでいる。
 2022年度改定に向けた検討では、新型コロナの感染拡大を踏まえ、通常の調査である2020年度改定の影響とともに、新型コロナの影響を把握することが重要な課題となった。実態調査ではそのための調査項目を設け、調査を実施した。
 その結果、さまざまなデータが得られた。コロナ患者を受け入れた病院では、病棟の患者構成が変化したことが想定され、例えば、「『重症度、医療・看護必要度Ⅰ』(以下、看護必要度Ⅰ・Ⅱ)と比較して、看護必要度Ⅱの該当患者割合は、2020年に割合が高くなる傾向があり、中でもコロナ受入ありの施設の方がコロナ受入なしの施設よりも、患者割合が低い」といった結果が示された。
 これに関し、全日病常任理事の津留英智委員は、2020年8月~ 10月の間で、コロナ陽性者100人未満の9県と100人以上の38都道府県の看護必要度の該当患者割合を分析したデータに言及。「コロナ陽性者の多い都道府県の方が、該当患者割合が高く、コロナ陽性者の少ない県の方が、該当患者割合が低いという、逆のパターンを示している」と指摘。その上で、「このあたりをどう解釈するか。新型コロナの影響をみるのは非常に難しいと感じている」と述べた。
 また、急性期一般入院料1の病院のうち、2020年1月~ 2021年5月までの間で、コロナ患者を1カ月以上受け入れた病院は、特定集中治療室管理料や救命救急入院料、ハイケアユニット入院医療管理料、簡易な報告による治療室のいずれかを届け出ている病院の割合が高かったとの文言がとりまとめ案に盛り込まれた。
 これに対し津留委員は、「ICUなどの治療室を持っていながらコロナ患者を受け入れていないのは、『けしからん』とか、急性期一般入院料1であれば、コロナ患者を受け入れるべきである、という論調につながる。実際は、新型コロナに対応した病院が一般救急患者の受入れを制限したことにより、その代わりを引き受け、一般救急医療を頑張ったコロナ非対応病院もあるので、ここの取扱いは注意して頂きたい」と述べた。
 また、地域医療機能推進機構理事の山本修一委員は、「新型コロナ対応の病院では、看護必要度のC項目(手術等の医学的状況)が特に下がった。急激に患者構成が変化するこのような事態に対応できるような新たな評価が必要ではないか」と問題提起した。
 看護必要度については、同日、特定集中治療室管理料等のB項目(患者の状況等)をめぐり論戦になった。特に、「特定集中治療室管理料を算定する患者において、必要度のA項目を満たしているが、B項目を満たしていない割合は1.7%」との文言が盛り込まれた。
 これに対し、「B項目は現場の看護職員の負担になっている。B項目のほとんどをA項目で代替できるとのデータが示された。B項目を継続する必要性は低い」(牧野憲一委員・旭川赤十字病院院長)との意見が出た。しかし、相澤東病院看護部長の武井純子委員らは、「看護の介入を計測する指標としての意義がある。現場の負担もそれ程大きいとは聞いていない」と反論した。
 DPC制度の医療機関別係数の「災害」に関しては、BCPの策定が評価項目になっている。災害拠点病院においては、BCP策定率が100%となっており、DPC対象病院に対しても、「この方向性に沿った対応が考えられるとの意見があった」ことが盛り込まれた。
 医療機関におけるBCP策定の現状では、「今般の新型コロナのクラスターの発生により、病院機能の低下がみられ、医療機関におけるBCPの重要性はさらに増している」ことが指摘されている。災害対応BCPと感染症対応BCPは異なることから、手引きも示されている。
 津留委員は、このような状況を踏まえ、「BCPの中で新型コロナをどのように取り扱うかが重要な課題になっているが、とりまとめ案には、⑴体制評価指数③災害のBCP策定部分に『新型コロナ』の言葉が入っていないので、入れた方がよいのではないか」と提案した。

 

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