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ホーム全日病ニュース(2021年)第997回/2021年11月1日号入院医療等の調査・評価分科会作業グループの最終報告

入院医療等の調査・評価分科会作業グループの最終報告

入院医療等の調査・評価分科会作業グループの最終報告

【資料】(診療情報・指標等作業グループにおける検討内容)

(1)重症度、医療・看護必要度について
<必要度Ⅰ・Ⅱについての分析>

○令和元年、令和2年のいずれも回答した施設について比較すると、重症度、医療・看護必要度Ⅰの該当患者割合は、令和元年と令和2年で大きな差はなく、必要度Ⅱの該当患者割合は、急性期一般入院料5を除き、令和元年より令和2年の方が高い傾向にあった。
<A項目についての分析>
○評価項目毎の該当患者割合を分析した。
(基準ごとの分析等)
○「A2点+B3点」のみに該当する患者のA項目の該当項目は、必要度Ⅰでは、「創傷処置+心電図モニター」、「呼吸ケア+心電図モニター」、「専門的な治療・処置」及び「救急搬送」に該当している患者割合が高い傾向にあった。
○必要度Ⅱでは、「呼吸ケア+心電図モニター」、「専門的な治療・処置」に該当している患者割合が高い傾向にあった。
(個別項目に着目した分析1)
○「A2点+B3点」のみに該当する患者のうち、「心電図モニターの管理」に該当している患者のA項目の組み合わせでは、「呼吸ケア」との組み合わせが多かった。
○「A3点以上」の基準に該当している患者について、「心電図モニターの管理」に該当する患者の割合を点数ごとにみると、必要度Ⅰと比較して必要度Ⅱの方が、該当割合が低かった。
○「心電図モニターの管理」の有無で、医師による診察の頻度に大きな違いはなかったが、看護師による直接の看護提供の頻度については「心電図モニターの管理」有りの方が観察の頻度の高い患者が多かった。
○入院継続の理由とA項目の該当についてみたところ、「医学的には外来・在宅でもよいが、ほかの要因のために退院予定がない」又は「現時点で具体的な退院日が決まっているため、それまでの間入院を継続している」患者について、「心電図モニターの管理」に該当する患者では多くみられ、「医学的な理由のため、入院医療が必要である」及び「医学的な理由のため、どちらかというと入院の方が望ましい」患者における該当割合と差がみられなかった。
○また、上記の分析について、必要度の基準①・②を満たしていない患者では、該当割合が低かった。
○自宅に退院した患者について、A項目の該当割合をみたところ、必要度Ⅰ・Ⅱともに、退院日や退院前日に「心電図モニターの管理」に該当する患者が一定程度存在した。
○退院日又は退院日前日に「心電図モニターの管理」に該当した患者割合は、医療機関によってばらつきが見られた。
○退院日又は退院前日に「心電図モニターの管理」に該当した患者割合の分布を医療機関ごとにみたところ、必要度Ⅰ・Ⅱともに、概ね30%以下の医療機関が多かった。
○自宅に退院した患者について、①退院前日・退院日ともに心電図モニター装着、②退院前日のみ装着、③退院日のみ装着、の分類ごとに該当割合をみたところ、①退院前日・退院日ともに心電図モニター装着が最も多く、③退院日のみ装着している割合が、最も少なかった。
○心電図モニターの装着については、医師が医学的必要性から装着の必要性を判断している医療機関がある一方で、心電図モニターの保有台数等、医学的必要性以外の理由で装着を決定している医療機関もあるのではないかとの指摘があった。こういった背景については、単に「心電図モニターの管理」に該当しているという結果のみから分析を進めても、議論を進めることが難しいのではないかという指摘があった。さらにこれらの実態や指摘も踏まえると、「心電図モニターの管理」は純粋に患者の状態を反映しているとは必ずしも言えないとの指摘があった。
○「心電図モニターの管理」に該当する患者のうち、「専門的な治療・処置」に該当する患者は、必要度Ⅰでは4割であり、必要度Ⅱでは5割を超えていた。
○「心電図モニターの管理」に該当する患者のうち、C項目に該当する患者は、必要度Ⅰでは1.5割であり、必要度Ⅱでは2割となっていた。
○「心電図モニターの管理」については、急性期における評価指標として適切かという観点から検討する余地があり、今回示された、他の項目の該当割合との掛け合わせの結果や、本項目を除外した場合の影響も見ながら、検討することがよいのではないか、との指摘があった。また、医学的必要性がない項目である場合、看護師の手間が不必要に増えてしまう観点も踏まえて検討することが必要、との指摘があった。
(個別項目に着目した分析2)
○「A2点+B3点」に該当する患者のうち、「点滴ライン同時3本以上の管理」に該当する患者のA項目の組み合わせをみたところ、「創傷処置」または「心電図モニターの管理」との組み合わせが多かった。
○「A3点以上」の基準に該当している患者について、「点滴ライン同時3本以上の管理」に該当する患者の割合を点数ごとにみると、必要度Ⅰ・Ⅱで該当割合に大きな違いはみられなかった。
○「A2点以上かつB3点以上」または「A3点以上」の基準を満たす患者について「点滴ライン同時3本以上の管理」の有無別に医師による診察の頻度をみたところ「点滴ライン同時3本以上の管理」有りの方が、診察が頻回な患者の割合が高く、看護師による直接の看護提供の頻度も高かった。
○「点滴同時3本以上の管理」に該当する患者のうち、「専門的な治療・処置」に該当する患者は、必要度Ⅰ・Ⅱともに約7割であった。
○「点滴同時3本以上の管理」に該当する患者のうち、C項目に該当する患者は、必要度Ⅰ・Ⅱともに約2割であった。
○「点滴同時3本以上の管理」に該当する患者の使用薬剤数は、4種類が最も多かった一方で、同時3本以上ながらも2種類以下という患者が存在した。
○必要度Ⅱでは、レセプト電算処理システム用コードを用いた評価であるため、コードによっては使用薬剤数が2種類以下となる場合もあることを踏まえて検討する必要があるのではないか、という指摘があった。
(輸血や輸血製剤の管理)
○「A2点+B3点」のみに該当する患者のうち、「輸血や血液製剤の管理」に該当する患者のA項目の組み合わせをみたところ、「心電図モニターの管理」、「点滴ライン同時3本以上の管理」、「呼吸ケア」との組み合わせが多かった。
○「A3点以上」の基準に該当している患者について、「輸血や血液製剤の管理」に該当する患者の割合を点数ごとにみると、必要度Ⅰ・Ⅱで該当割合に大きな違いはみられなかった。
○「A2点以上かつB3点以上」又は「A3点以上」の基準を満たす患者について「輸血や血液製剤の管理」の有無別に医師による診察の頻度をみたところ「輸血や血液製剤の管理」有りの方が、診察が頻回な患者の割合が高く、看護師による直接の看護提供の頻度も同様の傾向だった。
○B項目の点数ごとに「輸血や血液製剤の管理」の有無別の患者割合をみたところ、必要度Ⅰ・Ⅱともに4~6点では「輸血や血液製剤の管理」有の方が患者割合が高かった。
○A2点以上かつB3点以上」または「A3点以上」の基準を満たす患者について、B項目の点数ごとに「輸血や血液製剤の管理」の有無別の患者割合をみたところ、6点以下では「輸血や血液製剤の管理」有の方の患者割合が高い傾向があった。
<B項目についての分析>
○評価項目毎の該当患者割合を分析した。
○令和2年度改定で見直したB項目の「患者の状態」については、「口腔清潔(1点)」と「衣服の着脱(2点)」の該当患者割合が高い傾向にあった。
○「口腔清潔」については、いずれの入院料においても、「患者の状態」の該当患者割合と「介助の実施」の実施ありの割合が概ね同じであった。
○「衣服の着脱」については、いずれの入院料においても、「患者の状態」(「衣服の着脱(1点)」+「衣服の着脱(2点)」)の該当患者割合より「介助の実施」の介助ありの割合の方が低かった。
○「患者の状態」と「評価得点」の該当割合については、どの項目においても概ね同様の傾向であったが、「移乗」については、「評価得点」の方が低かった。
○「口腔清潔」と「衣服の着脱」に、高い正の相関が認められた。
<C項目についての分析>
○評価項目毎の該当患者割合を分析した。
○必要度Ⅰでは、ほぼ全ての入院料において、「骨の手術」及び「全身麻酔・脊椎麻酔の手術」の該当患者割合が高かった。
○必要度Ⅱでは、ほぼ全ての入院料において、「全身麻酔・脊椎麻酔の手術」の該当患者割合が高かった。
○術後等の経過日数別のA項目・B項目の得点状況については、日数が経過するにつれ、点数の低い患者割合が高くなる傾向であったが、骨の手術は該当期間の前半でA項目0点の割合が6割を超えていた。
<新型コロナウイルス感染症に係る影響を含む改定前後の分析>
○新型コロナウイルス感染症に係る影響の分析については、令和2年度改定による純粋な影響についても観察できるようにするべきとの意見を踏まえ、コロナウイルス感染症に係る影響が少ないと考えられる医療機関を抽出し、改定前後の該当患者割合について分析を行ったところ、令和元年度より令和2年度の方が必要度の基準を満たす患者割合が高い傾向にあった。
○分析対象数を増やすために、医療機関の抽出条件を変更してみてはどうかという指摘を踏まえ、抽出条件を変更して再分析したところ、再分析前と同様に、令和元年度より令和2年度の方が必要度の基準を満たす患者割合が高い傾向にあった。
○急性期一般入院料1について、令和2年度改定前後のどちらも必要度の基準を満たしている医療機関に限定し、重症度、医療・看護必要度の各基準を満たす患者の割合をみたところ、コロナ受入ありの医療機関と比較し、基準①~③の全てにおいて患者割合が高かった。
○令和2年8月~ 10月の間に、新型コロナウイルス新規陽性者100人未満の県(9県)と100人以上の県(9県を除く38都道府県)で、重症度、医療・看護必要度の該当割合について分析を行ったところ、急性期一般入院料1では、9県・38都道府県ともに令和2年度の方が高かった。
<特定集中治療室管理料等の重症度、医療・看護必要度の分析(略)>

(2)リハビリテーションの診療実績について
○FIM及びリハビリテーション実績指数について、入院料毎等の分析を行った。
○リハビリテーション実績指数を令和元年10月及び令和2年10月で入院料毎に比較したところ、すべての入院料において令和2年の方が高い傾向であった。
○入棟時FIM(運動・認知合計の平均値)について年次推移をみたところ、2016年度以降入棟時FIMが経年で低下する傾向がみられた。また、発症から入棟までの日数は2016年~ 2019年に経時的に低下してきたが、2020年に増加に転じた。
○各入院料に分けて入棟時FIMの年次推移を見てはどうか、との意見を踏まえ、入院料毎に入棟時運動FIMの平均値を2015年~ 2020年で比較したところ、入院料1及び入院料3においては、経年的に低下する傾向であった。その他の入院料については、例えば2019年と2020年で比較すると、入院料2、3、4、6で2020年の方が低かった。
○入院料毎に発症から入棟までの日数を2015年~2020年で比較したところ、入院料1、2、3、4においては、2015年から2019年にかけて低下傾向であったが、2020年に増加していた。一方、入院料5においては2015年から2020年まで、一貫して低下する傾向であった。
○発症から入棟までの日数について、さらに疾患毎で分析してはどうか、との意見を踏まえ、入院料毎に、脳血管疾患患者について、発症から入棟までの日数を2015年から2020年までで比較した。入院料1、2、3においては、2015年から2019年にかけて低下していたが、2020年に増加した。一方、入院料5においては2015年から2020年にかけて一貫して低下する傾向であった。また、整形疾患患者について比較したところ、入院料1、2、5、6においては、2015年から2020年までで大きな差はみられなかった。入院料3においては、2015年から2019年まで低下傾向であったが、2020年に増加した。
○発症から入棟までの週数と入棟時FIMの関係をみたところ、平均値では、3週と11週にピークがみられた。
○入院料毎かつ患者の状態・疾患毎に入棟時運動FIMを比較した。例として入院料1と6で比較すると、入院料1では、脳血管疾患と整形疾患の患者で入棟時FIMの差に着目すると、入院料1より入院料6の方が、差が大きかった。入院料5では、その差が小さかった。
○入院料毎かつ患者の状態・疾患毎に発症から入棟までの日数を比較した。入院料1、2、3、4、6では他の状態・疾患と比較して脳血管疾患が最も長かった。入院料5では、脳血管疾患・整形疾患・廃用症候群間の差は小さかった。
○入院料別の原因疾患として、入院料1では脳血管疾患が最も多く、入院料6では整形疾患が最も多かった。
○脳血管疾患の患者割合を入院料毎に医療機関の分布でみたところ、入院料1から入院料6にかけて低下していく傾向にあった。一方、整形疾患については、脳血管疾患とは逆に、入院料1で割合が低く、入院料6で割合が高い傾向であった。
○入院している患者の疾患・状態の年次推移についてみると、2001年から2020年にかけて、経時的に脳血管疾患の割合が低下し、整形疾患の割合が上昇していた。
○入院料毎に患者の重症度を入棟時運動FIMでみたところ、FIMが53点以上の患者の割合は、入院料1、2では約34%、入院料3、4では約40%、入院料5、6では約60%であった。
○FIMの変化と疾患領域の関係を分析する必要があるのではないか、との意見を踏まえ、患者の疾患・状態毎にFIMの変化を比較したところ、疾患・状態毎に変化に差が見られた。例えば、運動FIMが26点以下の患者について脳血管疾患・整形疾患・廃用症候群の3群で比較したところ、整形疾患が最もFIM の変化が大きかった。
○入院料毎に運動FIMの入棟時と退棟時の変化を比較した。入院料1や2では入棟時FIMが低く、入院料5や6では入棟時FIMが高かった。また、実績指数を用いて比較すると入院料1から入院料6にかけて低下傾向であり、平均値をみると、入院料1と2を比較すると入院料2が、入院料3と4を比較すると入院料4が、入院料5と6を比較すると入院料6が低かった。
○入院料1について、運動FIMの変化(退棟時運動FIM ─入院時運動FIM)を変化の量により4群に分けた上で、それぞれの病棟における患者の状態の割合や平均年齢等を比較した。運動FIMの変化が大きい病棟は小さい病棟と比較すると、自院からの転棟割合が低く、在院日数が長い傾向であった。
○入院料毎によりFIMの変化や実績指数が異なることは、各入院料で行われているリハビリテーション単位数の違いの影響等もあるのではないかとの意見を踏まえ、入院料毎にリハビリテーション単位数を比較したところ、入院料毎の1日当たりの疾患別リハビリテーションの単位数・入院中の総単位数ともに入院料1から6にかけて低下していく傾向であった。また疾患別に見た場合、脳血管疾患は1日当たりの単位数が多く整形疾患は少ない傾向であった。
○1日当たりのリハビリテーション単位数が同一の患者について、入院料毎にFIMの変化の差をみてはどうか、との意見を踏まえ、1日当たりのリハビリテーション単位数が同一の患者について、入院料毎に運動FIM(退棟時運動FIM─入院時運動FIM)について分析した。例として1日2単位以上3単位未満のリハビリテーションが提供されている患者についてみると、入院料1が最も変化が大きく、入院料6が低い結果であった。
○さらに、1日当たりのリハビリテーション単位数が同一の患者について、疾患別で分析してはどうか、との意見を踏まえ、1日当たりのリハビリテーション単位数が同一の脳血管疾患患者について、入院料・患者の状態毎に運動FIMの変化(退棟時運動FIM─入院時運動FIM)について分析した。脳血管疾患、整形疾患、廃用症候群で、全体的な傾向に大きな差はみられなかった。
○入院料毎に、各実績に係る要件を満たしている割合を比較した。入院料5は「重症者割合」、入院料6は「重症者割合」及び「実績指数」を満たせていない医療機関が多かった。
○回復期リハビリテーション病棟入院料を届け出ている病棟について、令和2年3月時点の届出入院料毎に、半年後の令和2年10月時点の届出入院料を比較した。入院料1、2、3、4においては、同一の入院料を届け出ている割合が8割を超えていた。一方、入院料5、6において、別の入院料へ移行していたのはそれぞれ2割超、5割超であった。令和元年3月時点の届出入院料毎に、1年後の令和2年3月時点の届出入院料を比較した。入院料1、2、3では、同一の入院料を届け出ている割合が約8割であった。一方、入院料5、6において別の入院料へ移行していたのは、それぞれ2割超、5割超であった。半年間で別の入院料へ移行した割合と1年間で別の入院料へ移行した割合との差は、入院料2、4よりも、入院料5、6の方が小さかった。
○回復期リハビリテーション病棟入院料の届出からの年数について、令和3年8月時点の届出入院料毎に比較した。届出から10年未満の病棟は、入院料1~4では3~5割であったのに対し、入院料5では約85%、入院料6では約64%であった。
○回復期リハビリテーション病棟入院料5及び6について、新規届出を行う場合に届け出る入院料であるところ、実績指数が悪い・FIM の変化が小さいこと等から他の入院料を届け出られないまま何年も5又は6を引き続き届け出ているケースがあることを踏まえ、入院料5及び6の在り方については、対応を検討するべき、との指摘があった。

(3)慢性期医療の診療内容について
○医療区分・ADL区分について、患者の状態等の分析・検討を行った。
○療養病棟に入院している患者の医療区分をみると、区分2・3の患者は療養病棟入院料1では全体の約9割、療養病棟入院料2では全体の約7割を占めた。
○各病棟における医療区分2・3の該当患者の占める割合の分布についてみると、療養病棟入院料1を届け出ている病棟において、医療区分2・3の該当患者の占める割合の分布をみると、95%以上が最も多かった。療養病棟入院料2を届け出ている病棟において、医療区分2・3の該当患者の占める割合の分布をみると、50%以上55%未満及び75%以上80%未満が最も多かった。
○令和2年度診療報酬改定においては、中心静脈栄養を長期にわたって実施している患者が存在していることを踏まえ、適切な中心静脈カテーテルの管理を推進する観点から、医療区分の評価を行う際に、中心静脈栄養の必要性の確認を求める、中心静脈カテーテル等を長期の栄養管理を目的として留置する際に、患者への適切な情報提供を推進する観点から、必要性や管理の方法について、患者又は家族等への説明を求めることとしている。
○令和2年度診療報酬改定の前後で、中心静脈栄養を実施している患者数の変化を分析してはどうかとの意見を踏まえ、平成30年10月時点でデータ提出加算を届け出ていた医療機関を対象に、平成30年10月と令和2年10月の中心静脈栄養を実施している患者の療養病棟入院基本料を算定する病棟に入院する全患者に占める割合を比較した。平成30年10月では10.27%、令和2年10月では10.25%であり、平成30年と令和2年で大きな差はみられなかった。
○調査基準日3か月前に各医療区分の項目に該当していた患者のうち、調査基準日においても当該項目に該当している患者の割合についてみたところ、例えば、中心静脈栄養を実施している状態は94.7%、中心静脈カテーテル関連血流感染症に対して治療を実施している状態は89.1%であった。
○医療区分2及び3について、何項目該当して当該医療区分と判定されているかについてみると、医療区分2及び3ともに、1項目が多かった。
○医療区分3の1項目に該当している患者の該当項目は、中心静脈栄養を実施している状態が最も多かった。
○中心静脈栄養の該当患者について、平均の在院日数をみたところ、160日以上の患者が最も多かった。これに関連して、中心静脈栄養を行っている患者の入院期間はかなり長い、との意見があった。
○中心静脈栄養の該当がある患者の主傷病名は、脳梗塞後遺症、廃用症候群、脳梗塞、慢性心不全、誤嚥性肺炎の順に多かった。
○中心静脈栄養に該当する患者は、なしの患者と比較して、ADL 区分3の割合が高かった。
○中心静脈栄養に該当する患者を入院料毎にカテーテル関連血流感染症発症の有無を見たところ入院料1では約28.6%、入院料2では14.1%、経過措置(注11)では約25.0%の患者に発症の履歴があった。
○これに関連して、中心静脈栄養開始からの日数と感染の有無の関係をみてはどうか、との意見を踏まえ、中心静脈栄養を実施している患者について、中心静脈栄養開始からの日数と、カテーテル関連血流感染症発症の履歴の有無についてみると、開始から200日までの患者は約10~ 20%程度が履歴あり、であったが、200日以降の患者は約30 ~ 50%程度の患者で履歴があった。
○中心静脈栄養に該当する患者について、入院中の嚥下機能評価の有無をみたところ、ありの割合は入院料1では25.4%、入院料2では32.6%、経過措置(注11)では0%であった。嚥下機能障害の有無についてみると、半数程度の患者が嚥下機能障害なしとの回答であった。また、嚥下リハビリを入院中に実施されたことのある患者についてみたところ、約9割の患者が実施されていなかった。
○嚥下リハビリについて、脳血管疾患等リハビリテーションとして行われている可能性もあるとの意見があったことから、嚥下リハビリに加えて脳血管疾患等リハビリテーションの実施割合等も考慮してはどうかとの意見を踏まえ、中心静脈栄養を実施している患者のうち嚥下リハビリ又は脳血管疾患等リハビリテーションを入院中に実施されたことのある患者の割合を入院料毎に比較した。入院料1では32.6%、入院料2では16.9%、経過措置(注11)では25.0%の患者が嚥下リハビリ・脳血管疾患等リハビリテーションのどちらか又は両方を実施されていた。
○中心静脈栄養を実施している患者について、嚥下機能障害の有無により、嚥下リハビリ又は脳血管疾患等リハビリテーションの実施割合を比較した、嚥下機能障害ありの患者のうち、嚥下リハビリ又は脳血管疾患等リハビリテーションどちらも実施されていない患者の割合は5割超であった。
○嚥下機能評価あり・なし別に分けた場合の、中心静脈栄養継続の理由について比較を行った。中心静脈栄養を継続している理由は、嚥下機能評価あり・なし、ともに、「他に代替できる栄養経路がない」、「家族の希望」の順に多かった。「患者本人の希望」、「腸管安静等のため」は、嚥下機能評価あり・なし間で差が見られた。
○嚥下機能評価を実施可能と考えられる患者(意識障害なし・認知症なし・障害老人日常生活自立度C2以外)について、嚥下機能評価あり・なし別に分けた場合の中心静脈栄養継続の理由をみると、嚥下機能評価ありの場合は「他に代替できる栄養経路がない」が多く、嚥下機能評価なしの場合は「家族の希望」との結果が一定程度みられた。
○中心静脈栄養について、嚥下機能評価やリハビリテーションの実施をより促進させるなど、中心静脈栄養からの離脱を評価する視点の検討が必要ではないか、との指摘があった。
○中心静脈栄養を実施している患者について、嚥下機能評価の有無で分けた場合の中心静脈栄養開始からの日数を平均値で見た場合、嚥下機能評価ありの方がなしと比較して開始からの日数が短かった。
○新規入院患者に占める、入院時から中心静脈栄養を実施している患者のうち、令和2年8~ 10月の3か月間で中止又は終了した患者の割合の医療機関分布は、0%以上10%未満の医療機関が最も多かった。一方で100%の医療機関も存在した。
○入院後に中心静脈栄養を開始した患者のうち、中心静脈栄養を中止・終了した患者数の割合の医療機関分布は、0%以上10%未満が最も多かった。一方で100%の医療機関も存在した。
○中心静脈栄養を実施している患者について、嚥下機能評価の有無別に、抜去の見込みを比較した。嚥下機能評価ありの方がなしに比較して抜去予定のある患者の割合が高かった。
○中心静脈栄養を実施している患者に対して嚥下機能評価・嚥下リハビリを1人でも実施している医療機関としていない医療機関で分け、それぞれの医療機関に入院している患者について、中心静脈カテーテル抜去の見込みを比較した。「抜去できる見込みなし」の割合は、それぞれ、嚥下機能評価なしの患者のみの医療機関及び嚥下リハビリなしの患者のみの医療機関で高かった。
○中心静脈栄養について、感染対策の必要性もありつつ、平成18年度の医療区分導入時と比較すると、中心静脈栄養の手技の安全性も向上し一般的に行われる医療行為となっている側面もあることから、これまでどおり医療区分3とすることが適切かどうか、引き続き検討が必要ではないか、との指摘があった。

 

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