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ホーム全日病ニュース(2023年)第1024回/2023年1月1・15日合併号第8次医療計画の地域医療構想に関する記載を了承

第8次医療計画の地域医療構想に関する記載を了承

第8次医療計画の地域医療構想に関する記載を了承

【厚労省・地域医療構想・医師確保計画WG】病院の再編統合の対応方針の策定率を指標に設定

 厚生労働省の「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」(尾形裕也座長)は12月14日、第8次医療計画に盛り込む地域医療構想に関する記載について大筋で了承した。医療機関によるコロナ対応が続くなかでも、2025年までとしている地域医療構想の取組みを着実に推進するため、都道府県に対応方針の策定率と地域医療構想調整会議の実施状況の公表などを求める。
 地域医療構想については、新型コロナの感染拡大により、2025年までの実現に向けた取組みに対する積極的な働きかけを国は控えている状況にある。しかし、超高齢社会や人口減少など、地域医療構想の背景である中長期的な状況や見通しは変わっていない。
 このため、第8次医療計画における地域医療構想の記載では、「感染拡大時の短期的な医療需要には、各都道府県の医療計画に基づき機動的に対応することを前提」としつつ、従来どおり、「その枠組み(病床の必要量の推計・考え方など)を維持しつつ、着実に取組みを進めていく」との方針を強調した。
 特に、急性期としての診療実績が少ないとされる再検証対象医療機関について、「これまでの方針に従って確実に取組みを行う」と明記した。

病床数は着実に減っている
 一方、コロナ禍であっても、地域医療構想調整会議などでの議論は行われ、国から補助金が支出される「重点支援区域」の選定も進められている。
 全日病会長(日本医師会副会長)の猪口雄二委員は、「病床機能報告のデータをみると、病床数は着実に減っており、(2016年度末時点の)2025年の病床の必要量の推計値に近づいている。着実な取組みが地域で行われていると考えられるので、2025年までに地域医療構想を大きくいじるようなことはせずに、現状の方針のまま進めていくべきだ」と主張した。また、どのような病院の病床が減少しているかを把握することも求めた。
 病床機能報告による全体の病床数は、2015年で125.1万床。これが2021年には121.0万床、2025年見込みでは120.1万床まで減る見通しだ。一方、2016年時点の病床の必要量の推計値は119.1万床で1万床の差がある。病床の必要量は、地域医療構想の目標ではなく、目安に過ぎないが、地域が将来を見据えた病床機能の過不足の調整を進めた結果、病床全体が減少する結果となっている。
 病床機能の変化を2015年と2025年見込みで比べると、高度急性期が14%から13%、急性期が48%から45%、回復期が10%から17%、慢性期が28%から25%に変化している。参考値である2025年の病床の必要量では、高度急性期が11%、急性期が34%、回復期が31%、慢性期が24%となっている。
 病床機能報告では、病棟単位で医療機能の「現状」と「今後の方向」を選択し、医療機関が都道府県に報告している。医療機関が自ら判断しているため、実態と乖離した報告が行われる場合があるとの課題が指摘されてきた。現状では、医療機能を判断する上で、参考として活用する「定量的な基準」も示されている。
 全日病副会長の織田正道委員は、「『定量的な基準』を使って、地域医療調整会議の議論を行っている都道府県は64%となっている。実際、急性期と回復期の判断で、地域包括ケア病棟入院料を算定しているのであれば回復期であるとか、急性期を『重症』と『軽症』に分け、軽症急性期を回復期と考える奈良方式などは、多くの人が納得できる基準として使われている。頭ごなしに従わせる基準にしなくても、みんなが納得できる基準であれば、現場で活用されている。逆に、あまりに詳細なデータの活用は混乱を招いてしまう」と述べた。
 一方、健康保険組合連合会参与の幸野庄司委員は、「公立・公的病院の地域医療構想の取組みは一定程度進んでいるかもしれないが、民間病院の取組みが遅れている。ウイズコロナに向かっているなかで、今後は過度にコロナを引きずることなく、民間医療機関への対応に向けた積極的な議論を都道府県が行う必要がある」と求めた。
 コロナ禍で地域医療構想の取組みが遅れている地域もある。このため、今回の記載では、「都道府県は、毎年度、対応方針の策定率を目標としたPDCAサイクルを通じて地域医療構想を推進することとし、対応方針の策定率と地域医療構想調整会議における協議の実施状況の公表を行う」と明記した。
 また、病床機能報告上の病床数と将来の病床の必要量について、「データの特性だけでは説明できないほどの差が生じている構想区域において、その要因の分析および評価を行い、その結果を公表する」とした。

地域医療構想をバージョンアップ
 現在の地域医療構想は、2025年までの取組みとして進めており、第8次医療計画期間中に2025年を迎える。地域医療構想により、病床の機能分化・連携が一定程度進んだことから、2025年以降も地域医療構想を継続する考えだ。今後、中長期的課題について整理し、検討するとしている。2040年に向けた課題に対応できる地域医療構想にバージョンアップさせる。

 

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