全日病ニュース

コロナ禍における「病院ブランディング」

【広報委員会】環境の変化に対応して、病院の理念と役割を明確化

　広報委員会は「コロナ禍における病院ブランディング」と題し、地域に欠かせない存在となっている病院の経営者３名にご講演いただいた。このコロナ禍であっても、いかに病院を経営し、地域と関わり、「病院のブランディング」につなげるのか。発表されたご本人からの講演要旨を掲載するので参考にされたい。

当院におけるICT活用とアフターコロナを見据えて
　社会医療法人石川記念会
　HITO病院　理事長　石川賀代
　愛媛県の人口8万5千人、高齢化率32%の四国中央市にHITO病院は存在する。「いきるを支える医療・介護・福祉の実現」を目指し、医療介護複合体である石川ヘルスケアグループの一役を担っている。2013年に新病院開設後、市民・メディアとのコミュニケーション、地域貢献事業を含めて、広報活動を展開してきた。
　しかし、2020年のCOVID-19感染拡大により、今までの活動も一変する。新たな医療現場に対応するために、既存のICT基盤を活用し、デジタルシフトを展開。アフターコロナを見据えて、働き方改革を踏まえた多様な働き方の創出や、企業とのアイシールドの共同開発、企業と協働したCO2センサーのノーコード開発によるＤＸ推進を含めて、今までの関係性を進化した取り組みを行った。
　また今年、グループ内の老健施設で発生したCOVID-19のクラスターを通じて、地域の方々からの多くの支援に励まされた。今回の対応や経験をメデイアに発信する事により、感染対策の重要性や、医療職・介護職への理解を深める一助になればと考えている。アフターコロナに向けてもHITOを中心につながり、社会に貢献する自らの経営理念を貫いていきたい。

未曾有の危機「コロナ禍」というピンチをチャンスと捉えられるか？
　医療法人ロコメディカル
　江口病院副理事長　江口有一郎
　佐賀大学医学部附属病院肝疾患センターの特任教授を辞し、老体に鞭を打ち継承を待つ父が理事長を務める医療法人ロコメディカルに戻り、経営者として、そこで働く全職員と家族がここで働いてよかったと思えるような医療法人の経営のために「心」と「働き方」を最も大切にしたいと考えた。そのベースとして「ＪＡＬフィロソフィ」による日本航空の再生と発展、その元となった「京セラフィロソフィとアメーバ経営」、提唱者である稲盛和夫氏の思想を学び「ロコメディカルフィロソフィ」の導入を2020年４月から開始。手帳として全職員に配布し、日々の全ての部門や会議、診療や法人としての意思決定のため活用した。
　未曾有の危機「コロナ禍」でもロコメディカルフィロソフィの中で、特に「人間として何が正しいかで判断する」、「１人ひとりがロコメディカル」、「ベクトルを合わせる」、「最高のバトンタッチ」、「患者さま、利用者さまとご家族の視点を貫く」、「昨日よりは今日、今日よりは明日」等のフィロソフィは、自発的な大小を問わない素晴らしい行動に反映された。そして2021年度からはアメーバ経営の導入を開始している。ロコメディカルフィロソフィとアメーバ経営は「コロナ禍」という危機が与えてくれたピンチをチャンスと捉え、医療法人の価値を高めることに大きく貢献した。

コロナ禍で小規模高齢者複合施設が出来たこと
　医療法人大誠会
　理事長　田中志子
　当院は群馬県沼田市にあり、医療に関しては２次医療圏内でほぼ完結する地域となっている。そこでの私たちの役割は、主に慢性期ケアミックス型の高齢者、障害者を含む医療介護福祉に横串をさしたサービスの展開である。
　このコロナ禍に、高齢者や慢性期の患者さんを診察する99床の中小病院で何ができるのだろうかと考え、いち早く着手したのは「オンライン面会」である。2020年4月に、院内のインフラを整備し、オンライン面会ができる体制を作った。このことは、全国の新聞各紙に取り上げられた。
　そして病院だけではなく、高齢者施設や障害児者を多く預かる施設も複数有するため、職員一同「かからない」「持ちこまない」「拡げない」を合言葉に緊張感を持ってCOVID-19に対応した。職員の体調管理には、体調や行動をスマホで報告できる独自のアプリを導入した。
　万が一施設でのクラスターが起こった場合には、地域でコロナ患者を受け入れる病院が限られているため、最悪の場合は自院で完結を目指すことを早期に打ち出した。
　現在は、基幹型ワクチン接種病院となり、支援が必要な人たちのワクチン接種も積極的に受け入れている。