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ホーム全日病ニュース(2023年)第1027回/2023年3月1日号経営分析システムMEDI-ARROWS Ⅲrd活用病院が報告

経営分析システムMEDI-ARROWS Ⅲrd活用病院が報告

経営分析システムMEDI-ARROWS Ⅲrd活用病院が報告

【全日病・DPCセミナー】「病院が生き残るうえで欠かせないものがデータ」

 全日病は1月25日、DPC セミナーをオンラインで開催し、脳血管研究所附属美原記念病院の風晴俊之事務部長代行が、美原記念病院におけるデータの分析と活用について講演した。風晴氏は「医療と経営の質を担保し、病院が生き残るうえで欠かせないものがデータだ」と述べ、近隣病院のDPC データを利用した分析の実例などを紹介した。その後、東京都医療保健協会練馬総合病院の小谷野圭子質保証室長ら3名が、全日病が2022年10月から提供する新DPC 分析システム「MEDI-ARROWS Ⅲrd」の活用について報告した。医療の質向上委員会委員長の今村康宏常任理事は、「病院経営の有効なツールとして活用してほしい」とMEDI-ARROWS Ⅲrd への参加を呼びかけた。

 冒頭、今村康宏常任理事がセミナーの開催趣旨を説明した。今後、多くのコロナ重点医療機関の病床が一般の入院病床に戻り、医療需要の取り合いが激化する恐れがある。「地域に必要とされる機能は今後も求められ続けるが、無理をしたり背伸びをした機能は淘汰される」と指摘。地域で必要とされる領域を伸ばし、不採算の領域をできるだけ効率化することが重要だが、そのためには自院の現状とトレンドを把握することが必要となると強調した。
 ニッセイ情報テクノロジー株式会社の協力を得て、全日病がDPC分析事業として提供する経営分析システムMEDI-ARROWS Ⅲrd を紹介。「経営者目線でみて、自院のパフォーマンスが一目でわかるシステムだ。参加病院数が多いため、比較対象データとしても信頼できる。病院経営の有効なツールとして活用してほしい」と述べ、DPC 分析事業への参加を呼び掛けた。


今村常任理事

■講演 風晴俊之氏
データで医療と経営の質を担保

 美原記念病院事務部長代行の風晴俊之氏が「美原記念病院におけるデータの分析と活用~医療の質向上のために~」と題して講演した。
 美原記念病院は群馬県伊勢崎市で脳神経内科・脳神経外科等を標榜し、4病棟189床を有する。脳・神経疾患の急性期から在宅まで、一貫した医療・介護の提供を理念に掲げている。
 同院の事務部長代行を務める風晴氏は、病院運営の重要な柱は①診療②資金③ 記録( データ)であると整理。「医療と経営の質を担保し、病院が生き残るうえで欠かせないものがデータだ」と述べた。
 美原記念病院では、地域の競合病院との比較をするために、公開されているDPCデータを利用して外部比較を行っている。また、院内の「QIプロジェクト」として、各種データの比較やベンチマーク等を行っている。
 例えば病院内の脳梗塞のデータベースの場合、医師や看護師が医療行為を実施した際に入力・作成した診療録やDPCデータを診療情報管理士等が監査し、必要なデータを抽出して脳梗塞データベースやt-PAデータベースを作成。それらを統合して、一元化したデータベースをつくっている。
 美原記念病院でのデータ作成における課題としては、◇データ入力と作成に時間がかかりすぎて、他のプロセスに時間がかけられない◇データを抽出するのに多大な時間を要する―などをあげた。これらの課題の解決策として、データ入力・作成に、ドクターズクラークが関わるように検討している。さらに、データ管理室を立ち上げ、抽出方法の改善策の検討を進めているという。
 なかでも、診療情報管理士の活かし方がポイントになる。「診療情報管理士の役割を明確化し、監査と分析に特化させていきたい。診療情報管理士が本来の専門的な業務に注力することで、モチベーションの向上にもつながる」。
 美原記念病院では、データ抽出の機械化も進めている。「データの正確性が向上し、より質の高いデータ管理ができれば、病院全体の質が向上する」。
 今後、電子カルテアプリで管理できていないデータも含めた一元的なデータベースを作成し、活用できるようにしたいと意欲を示した。


風晴氏

近隣病院のデータから課題を見出す
 美原記念病院では、近隣病院の公開されたDPCデータも活用し、地域の患者動向と治療実績を確認している。風晴氏は近隣病院の患者推移や手術件数、患者の流入・流出状況のデータを紹介して、活用例を紹介した。
 例えば、コロナ禍において、近隣の公的病院がコロナ対応を行うために脳卒中患者を受けにくくなったことが推測された。しかし、美原記念病院の救急搬送件数は増えておらず、他の脳卒中受入れ病院の件数が伸びていた。そこから、自院での救急体制の整備が課題であることが明らかになった。
 また、美原記念病院の地域での脳卒中専門病院としての存在意義も確認できた。「コロナ禍でもコロナ病床に転換せずに脳卒中の専門的医療を提供し続けたが、病床稼働率等の分析から、コロナ病床に転換しなかったことは地域完結医療の確立のためにも有用だったことが裏付けられた」と話した。

■ MEDI-ARROWS Ⅲrd概要説明
ベンチマークで経営課題を特定

 ニッセイ情報テクノロジー社から、MEDI-ARROWS Ⅲrd の概要の説明が行われた。同システムでは経営指標ベンチマークによる他病院との比較の結果が、一覧で示される。重要指標はAからEの5段階で評価され、低い評価(D、E)の指標は赤く強調される。担当者は「まず分析の入り口として、赤い指標の改善に取り組んでもらうのがいい」と述べた。
 同システムでは、経営指標ロジックツリーにより経営状況が可視化でき、課題が一目でわかる。課題指標と目標値を選択するだけで、改善効果シミュレーションを行うことが可能だ。
 定型分析とは別に、詳細に条件を設定した自由分析を行うことも可能で、同社は専門スタッフによる分析代行サービスも提供している。
 また、出来高算定の病院でも利用出来るよう、3月末にはDPCコードの付与が実装され、6月末には、それが定型画面に反映され、より使い勝手がよくなるという。「今後もユーザー病院からの要望に応え、スピード感をもって改善していきたい。自院データでのテストユースが可能なので、ぜひ一度体験していただきたい」と述べた。

■活用事例報告① 小谷野圭子氏
経営視点の情報提供が強化された

 練馬総合病院では、これまでMEDITARGETを、採用薬変更のための基礎データ作成やパスの評価、医師の臨床研究の補助、医師への情報提供などに利用してきた。
 質保証室長の小谷野圭子氏は、「MEDIARROWSⅢrdは、M E D I -TARGET でできたことのほぼ全てを踏襲したうえで、データのアップロード時間が短縮されるなど、制約がかなり撤廃された」と述べた。
 経営の視点からの情報提供が強化され、分析担当者に限らず、必要なときに必要な部署がMEDI-ARROWS Ⅲrdを利用できるため、便利でよいと評価した。「今後、ユーザー会で活用事例や要望を共有し、みんなでMEDI-ARROWS Ⅲrdを育てていきたい」と述べた。


小谷野氏

■活用事例報告② 水野照夫氏
指標の評価を踏まえ改善案を考える

 済衆館病院業務部長の水野照夫氏は、MEDI-ARROWS Ⅲrd を利用した感想として「データをアップするだけで容易に他院と比較できる。直感的に操作可能だ」と述べた。従来は病院独自の指標を使用してデータ分析をしてきたが、導入後はシステムで統一された指標での比較・検討が容易に可能になった。
 MEDI-ARROWS Ⅲrdの経営分析機能は、「指標ごとに改善シミュレーションがしやすく、改善に向けた提案も示される。提案を参考に、自院に合う改善策を考えていきたい」と述べた。


水野氏

■活用事例報告③ 森山洋氏
マーケティング機能を活用

 帯広中央病院事務部長の森山洋氏は、MEDI-ARROWS Ⅲrdの見やすさと経営改善支援の機能を評価した。
 帯広中央病院では、地域内での自院の強みを把握し、将来、優先する診療機能を選択するためにM E D I -TARGET の地域シェア分析を活用してきた。MEDI-ARROWSⅢrdではこの地域シェア機能がマーケティング(外的環境分析)機能として拡充された。市町村別、郵便番号別、疾患別に患者数の増減が地図上に表示されるようになり、「説明資料としても活用しやすい」。疾患別に周囲のDPC病院の症例数の推移をグラフで見られることも有益だとした。


森山氏

全日病DPCセミナー プログラム
1.【開会挨拶・趣旨説明】

  全日病常任理事、医療の質向上委員会 委員長 今村康宏
2.【講演】美原記念病院におけるデータの分析と活用~医療の質向上のために~
  (公財)脳血管研究所附属 美原記念病院事務部長代行 風晴俊之
3.【MEDI-ARROWS Ⅲrd概要説明】
  ニッセイ情報テクノロジー(株)
4.【活用事例報告】①
  公益財団法人東京都医療保健協会練馬総合病院質保証室長 小谷野圭子
5.【活用事例報告】②
  医療法人済衆館 済衆館病院業務部長 水野照夫
6.【活用事例報告】③
  社会医療法人恵和会帯広中央病院事務部長 森山洋

<全日病DPC分析システム(MEDI-ARROWS Ⅲrd)の主な特徴>
1.誰でも経営課題をパッと把握

  経営指標ロジックツリーで経営状況を可視化。ベンチマークで課題を一目で把握可能です。
2.改善効果をパッとシミュレーション
  ベンチマークを基準にカンタンに目標設定。各指標への影響も考慮し改善効果を予測します。
3.病院独自のレポートをパッと作成
  必要なデータ、グラフ形式をクリックするだけで、カンタンに病院独自のレポートを作成することが出来ます。

詳しくは全日本病院協会ホームページの「DPC分析事業」をご覧ください
https://www.ajha.or.jp/hms/dpc/index.html

 

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