全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2023年)第1027回/2023年3月1日号医療提供コストの急激な上昇に対し財政措置を要望

医療提供コストの急激な上昇に対し財政措置を要望

医療提供コストの急激な上昇に対し財政措置を要望

【日病協】新型コロナの院内感染を防止する体制確保でも要望

 日本病院団体協議会は2月9日、「病院における医療提供コストの急激な上昇に対しての要望書」を加藤勝信厚生労働大臣に提出した。光熱費をはじめ、さまざまなサービスの価格が上昇し病院経営を圧迫している。一方で、医療従事者の処遇改善が課題となっている。これらを踏まえ、医療機関に対する必要な財政措置を政府に求めた。
 要望書では、全国の病院が引続き、新型コロナ対応を継続しながら、コロナ診療と一般診療を両立させるために、「最大限の努力を行っている」と強調。その中で、「光熱費の上昇だけでなく、給食委託費含む委託費の上昇、諸物価の上昇」により、医療機関の医療提供コストが大幅に増える事態が生じ、この1年間で医療機関の経営環境が大きく変化していることを指摘した。
 光熱費の上昇に関しては、「電気、ガスの価格上昇のみで医業利益率が約半減するほどの影響が出ている」ことを示した(下表参照)。
 電気・ガス料金値上がり調査によると病院からは、「電気料金値上げの影響で他の業種も値上げを徐々に行っている。新型コロナ関連補助金も減り、感染によって人手も少なく実情はかなり厳しい状況」、「電気、ガス料金は、燃料価格の上昇によって、料金が大きく上昇するため、光熱費削減の取組みを行っても、光熱費を下げることが難しい。補助金を含めた対策支援を積極的に導入してほしい」、「今回、都道府県の支援金が発表されたが、今回だけに限らず、定期的な支援金の交付や診療報酬のプラス改定などの配慮をお願いしたい」などの意見が出ている。
 保険診療は、診療報酬によりサービスの公定価格が決まっているため、医療を提供するコストが上昇しても、価格に転嫁させることができない。物価上昇によりコストが上昇するのであれれば、診療報酬改定など制度的な対応が求められることになる。一方、診療報酬改定は2年に1度なので、その間の対応を別に考える必要が生じる。
 なお、政府は、物価上昇への対応として、新型コロナ交付金の繰越し金の活用や2022年度補正予算による医療機関への支援、石油元売り会社への補助金など事業者への支援も行っているため、これらの対応も考慮しなければならない。
 また、要望書では、岸田文雄総理大臣が、年頭に経済界に要請したように、「諸物価の上昇に対応するための医療従事者への処遇改善も喫緊の課題となっている。しかし、現在の経営環境での対応は困難であり、医療提供人材の確保にも支障が出かねない状況となっている」との懸念を示している。
 これらを踏まえ、病院経営環境の急激な変化に対応するため、以下の2点を要望した。
①医療機関が、光熱費を含む医療提供に必要なコストの上昇に対応できるよう、必要な財政措置を講じること
②医療機関が、医療従事者に対して適切に処遇を改善できるよう、必要な財政措置を講じること

コロナの位置づけ変更でも要望
 日病協は同日、「新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけ変更に際しての要望」も加藤厚労相に行った。政府が新型コロナの感染症法上の位置づけを5類感染症とする方針を表明したことを受け、今後のウィズコロナへの移行における医療機関への配慮を求めた。
 医療機関への配慮が不十分であれば、地域の医療提供体制に大きな問題が生じる可能性がある。このため、「移行に際しては、病院が患者に適切に対応していくことができるよう、診療報酬上の十分な対応ならびに適切な補助金の継続をお願いする」と訴えた。
 要望書では、社会がウィズコロナに向かって動いていく中でも、多くの病院でクラスターが発生し、高齢者や基礎疾患のある患者への感染が生じていることを強調。「病院に入院している患者は、新型コロナの感染により、亡くなる可能性の高い方々であり、院内感染をできる限り防止する体制を継続しなければならない」としている。

 

全日病ニュース2023年3月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。