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ホーム全日病ニュース(2023年)第1043回/2023年11月1日号人材を含め資源が不足する時代にできること

人材を含め資源が不足する時代にできること

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【特別講演・大田学会長】「ないものは作る」というコロナ禍で生まれた知恵

 大田泰正学会長が学会テーマである「未来の子どもたちへ、今の私たちにできること」について、特別講演を行った。最初に、ChatGPTを活用し、大田学会長の配偶者である社会医療法人祥和会の大田章子研究員作成のパワーポイント資料を用いて、大田学会長の息子の世代が医師として、どのような環境で業務を行っているかが描かれた。そこでは、患者をリアルタイムで解析するAIシステムや患者のためのバーチャルリラクゼーションエリア、ドローンによる物資輸送、ロボットの道案内などが病院で展開されている。
 AIの進化のシンギュラリティ(特異点)は2045年との予想もあったが、2025年に訪れるとの説もある。すでにChatGPTなどのサービスは世の中を変えている。その変化は、生活の様々な場面に及ぶが、病院での活用法に、人材不足への解決策という期待がある。
 大田学会長は、「かつての人口増の社会では、仕事が増えれば人を増やすことができた。今後はできなくなる。これからは仕事が増えたら、他の仕事を減らす『断捨離』とAI と協働する『切り分け』が必要となる」と説明した。このままの状況だと、人を増やすことが難しくなるのは明らかで、2022年の出生数は80万人を下回り、団塊ジュニア世代の約4割の水準。2040年の医療従事者の労働需要に対する不足率は17.5%(81.6万人)と推計されている。
 一方、人口減少社会において、医療ニーズも減少する。機能分化と集約化を図らないと、医療提供体制が維持できない。大田学会長が理事長の脳神経センター大田記念病院が担う脳卒中の分野でも、t-PA が24時間365日提供可能な体制の確保を図っている。
 厳しい時代において、病院が自ら考え行動することが問題の解決策となる。コロナ禍で大田記念病院は、数々のアイデアと実行力で危機を乗り越えた。
 新型コロナの感染拡大が始まった2020年当時、サージカルマスクの供給が止まった。サプライチェーンが寸断され納入の見込みはない。大田学会長は、「ないのだったら、作ればいい」と号令をかけた。病院スタッフがキッチンペーパーで型を作り、コロナ禍でラインが止まっていた自動車工場が型抜きをした。材料のSMS不織布は医療機器メーカーから調達できた。こうしてSMS不織布マスクが製造された。患者と接する医療従事者は在庫のサージカルマスクを使い、患者と接しない医療従事者が自家製マスクを装着した。その後、県内の医療機関だけでなく、食品加工会社からも注文が来た。
 感染防御ガウンの不足についても、広島県福山市出身の東京の勤務医から、福山青年会議所を通じて大田記念病院に相談があり、資材があれば製造できるとの返事を東広島市の工場から得た。製造されたプラスチックガウンは東京の病院にも納入された。また、多くの関係者が活用できるように、製造仕様書を広島県に提供した。
 大田学会長は、コロナ禍での経験から、「今後は、他業種を含む幅広い地域連携が必要になる」と強調した。「ないものは作る」という精神と実行は次世代に記憶され、引き継がれるだろう。

 

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  • [1] 2020.6.1 No.964

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2020/200601.pdf

    2020/06/01 ... 新型コロナウイルス禍とニューノーマル. 来の価値観にとらわれない発想が ... マスク、フェイスシールド、ゴーグル、手袋、ガウン、エプロンなど)、咳 ...

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