全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2023年)第1043回/2023年11月1日号医療現場の生産性向上を実現した事例を解説

医療現場の生産性向上を実現した事例を解説

医療現場の生産性向上を実現した事例を解説

【医療DX人材育成プログラム④】
神野副会長は院内のDXの取組みを紹介
高橋泰 国際医療福祉大学教授、全日病広報委員会特別委員


東京の通訳を介して開催したドバイでの討議の様子

 院内のDX化が適切に推進できる院内人材を養成する目的で、全日本病院協会は、広報委員会を担当委員会とし、日本医療教育財団、介護・医療見える化・効率化協会と共同共催で、「2023年度医療DX人材育成プログラム(全10回)」を開講した。今回は、第4回目の講習会の内容を紹介する。
 第4回講習会が、9月7日(木)13時〜16時にZoomで開催され、136病院、308人が参加した。私事になるが、筆者は9月3日(日)から9月9日(土)にかけてドバイとフランスの医療視察を行い、9月7日開催の全日病講習会では、朝6時(現地時間)のパリのホテルの部屋からZoomで講義の講師を務めた。また9月5日(火)のドバイ・ヘルスケア・オーソリティーの視察では、東京とドバイをZoomでつなぎ、写真に示すような形で東京の通訳が、ドバイの講師の説明を日本語に、ドバイの参加者の日本語の質問を英語に通訳を行いながら討議が進められた。視察レベルで要求される水準の翻訳ならば、数年以内に人ではなく人工知能が、講師の英語(アラビア語)を日本語へ、我々の日本語の意見や質問を英語(アラビア語)に翻訳するようになるだろうと考えながら、ドバイの講師達と討議を行った。
 アラビア語の看板の表示やフランス語のメニューレベルの翻訳ならば、すでにGoogleレンズの翻訳機能をONにしてスマホを向けると、「立ち入り禁止」や「アオカビのチーズを用いたチーズケーキ」などの日本語表示がリアルタイムで画面上に示される。このアプリは無料で使用できるので、今回の視察の参加者の多くが使用し始め、大活躍していた。一方、WEB化の遅れた日本の医療DXは高価格のまま、しかも今回紹介したようなわかりやすい成果をほとんど提供していない。WEB技術を上手く活用したアプリを使用することにより、ドバイ・パリ・東京を結んだ講義や通訳、スマホのカメラを向けただけの自動翻訳など3年前では考えられないことが、無料ないし低価格に行えることを経験し、日本の医療情報システムのWEB化を急速に進める必要性を痛感した1週間であった。
 パリより発信された9月7日の全日病講習会の前半の特別講義1では筆者が、最初に上記のDX体験を紹介し、日本の病院システムのWEB化を進める必要性を強調した。次に「ヘルスケアにおけるチームプレーとDXの活用」というタイトルで、DXを用いた医療現場の生産性向上を実現した事例を解説した。第1の事例は、システムが電子カルテや患者やスタッフの情報を定期的に確認し、患者の重症度や空きベッド、働いているスタッフのスキルレベルなどを大きなパネルに示す湖南医療コンソーシアムのコマンドセンターである。コマンドセンターでは刻々と変化する患者、スタッフ、空きベッドの状況を把握し、状況に応じて入院患者のベッド決定、スタッフ配置の調整を行うことにより、施設内の患者・スタッフの最適化を行っている。第2の事例は、HITO病院の多職種協働型セル方式である。スマホを介してのカルテ入力や職員が他の職員の動向を把握することにより、歩行距離の短縮や大変なところに支援が行われる体制を確立していることにより、職員の業務効率の改善がなされている。
 前半の特別講義2では、神野正博全日病副会長が、「病院DX の戦略とソリューション」というタイトルで、講義を行った。まず時代背景や今後の医療界の展望を語られ、その中で「DXはインフラである=エアコンと同じ」であり、利益から出すものではなく、「必要経費」であることを強調された。その後、院内のDXの種々の取組みの紹介をされた。電子カルテにVDI方式を採用し、いつでも各個人のデスクトップにアクセスし、電子カルテ端末とインターネットが同一端末で使用できる環境を実現した。グループ内、一利用者、一IDによる情報管理により時間軸の統合を実現し、病院や施設のカルテのシームレスな閲覧を可能にした。患者へのPHRの提供、RPAの活用、入退院管理センター(コマンドセンター)の開設、クリティカルパスの見直し、スマホアプリによる患者向け受診支援サービスなど、恵寿総合病院で行われている種々のDXの取組みと、その成果の紹介を行った。
 後半の小林土巳宏氏(株式会社MEMORI)によるDX戦略についての講義では、①システム構想の立て方、②DX戦略の基礎、③施設内(イントラ)システムとの関係性(VDI等)の講義が行われた。
 最後にオンラインを通して講義内容の振り返りテストを行い、第4回の講習会が終了した。

 

全日病ニュース2023年11月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 2023.8.1 No.1037

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2023/230801.pdf

    2023/08/01 ... 取得できる病院は、クリニカルパスに. 合った予定入院患者が多いために ... 民間PHR事業者団体等と連携したライフログデータ標準化、 医療機関実証 ...

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。