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ホーム全日病ニュース(2023年)第1043回/2023年11月1日号在宅医療を担う医療機関の特徴を踏まえた評価が課題

在宅医療を担う医療機関の特徴を踏まえた評価が課題

在宅医療を担う医療機関の特徴を踏まえた評価が課題

【中医協総会】訪問診療回数が多い医療機関や往診だけをする医療機関の対応を議論

 中医協総会(小塩隆士会長)は10月4日、2024年度診療報酬改定に向けて、在宅医療をテーマに議論を行った。在宅医療のニーズが増加するなかで、地域での在宅医療の提供体制確保が求められている。同日の議論では、在宅医療の提供体制の底上げを図るとともに、医療機関により訪問診療の回数に偏りがあることや、訪問診療をほとんど行っていないにもかかわらず往診が際立って多い医療機関があるなど、適正化の観点を含め、在宅医療における特性の違いを踏まえた評価のあり方などが課題とされた。
 訪問診療については、「在宅医療を行っている患者の診療時間は要介護度や日常生活自立度が高ければ高いほど、診療時間が長くなる傾向がある」ことがデータで示された。また、要介護度4・5が看取りに関連する因子であるとの報告もあった。
 現状で、在宅時医学総合管理料(在総管)と施設入居時等医学総合管理料(施設総管)では、包括的支援加算(月1回150点)により、要介護度や日常生活自立度等に応じたきめ細かな評価をしているが、さらなる対応を行うことが論点になった。
 日本医師会常任理事の長島公之委員は、「丁寧な診療を行ったのであれば、それは適正に評価されるべきだ」と、負担に見合う評価が必要と主張した。
 一方、適正化の観点では、「在宅医療に従事する医師1人当たりの在宅患者訪問診療料の算定回数は、平均で月46.8回であったが、一部月300回を超える医療機関も存在しており、医師1人当たりの在宅患者訪問診療料算定回数が多いほど、高齢者施設等の患者に訪問診療を提供している割合が高い」、「訪問診療の算定回数が多い医療機関において、一部の医療機関で訪問診療の頻度が(患者あたり)平均4回/月を超えており、そういった医療機関はそれ以外の医療機関と比較して、ターミナルケア加算の算定回数が少なく難病患者割合が低い」といったデータが示された。
 施設に居住する高齢者と戸建てに居住する高齢者では、移動時間をはじめ訪問診療の負担は異なる。現状でも、在総管と施設総管で評価が異なり、同一建物内の人数でも点数を分けている。訪問診療料でも評価を区別している。それでも今回、訪問診療の算定回数にかなりの偏りがあり、算定回数が多い医療機関では、ターミナルケア加算や難病患者割合も低く、比較的安定した患者を訪問診療している状況が示されたため、さらにメリハリをつけた評価を行うことが論点になった。
 これに対して、支払側の委員は適正化を求めた。一方、日本医師会常任理事の江澤和彦委員などは、訪問診療で高齢者の居住の状況に応じて、一定の効率性が働くことは不可避な面があるとし、適正化には慎重な検証が必要であると主張した。

往診だけが多い医療機関の評価
 往診については、24時間の往診体制等があることを評価する在宅療養支援診療所(在支診)・在宅療養支援病院(在支病)で、訪問診療をほとんど行っていないのに、往診料を多く算定している医療機関があり、「訪問診療を行っている患者に対する往診」と「訪問診療を行っていない患者に対する往診」の往診料のあり方が論点となった。
 訪問診療をほとんど行っていない医療機関では、「夜間・深夜・休日往診加算の算定が多い」、「小児の往診件数が顕著に増えており、ほとんどが訪問診療を行っていない患者であった。このような患者は急性上気道炎などの疾患が多いが、訪問診療を行っている患者に対する往診より、レセプト請求点数が高かった」などの特徴があった。
 委員からは、本来は訪問診療を行っているかかりつけ医が往診を行うことが望ましいという共通認識を踏まえ、往診料の適正化を求める意見と慎重な対応を求める意見が出た。日本医師会副会長の茂松茂人委員は、往診は通院困難な人に対して実施することが原則であることを強調した。
 なお、15歳未満の患者に対する往診料の算定回数は2020年に減少し、2021年に大きく上昇し(2.6倍)、2022年にさらに上昇している(1.9倍)(図表参照)。増加の背景は新型コロナの感染拡大が考えられる。診療報酬上の特例においても、新型コロナ患者(疑い含む)の緊急往診は高く評価され、医療機関にとってはインセンティブになった。2023年5月以降は、特例を段階的に解消する方針となっている。

24時間対応の在宅医療体制の確保
 2040年の訪問診療の推計患者数は、2020年と比較し1.5倍になると推計されている。厚生労働省は、第8次医療計画の記載も踏まえ、在宅医療の24時間の医療提供体制の確保が喫緊の課題であることを強調。在支診・在支病を増やすとともに、在宅医療を直接担わない医療機関も、在支診・在支病と連携し、地域の在宅医療提供体制の確保に参加してもらう評価のあり方の検討を求めた。
 両者の連携を評価する点数としては、在宅療養移行加算があるが、算定回数は低調で普及していない。24時間対応を個別の医療機関だけではなく、他の医療機関等と連携した確保に資する診療報酬について、引き続き議論が必要であるとの課題が認識された。
 在宅における緩和ケアについては、人生の最終段階における意思決定支援に関する情報をICTで共有している患者は、急性の不安対応目的の入院が減り、容体が急変した際の入院先として緩和ケア病棟や地域包括ケア病棟が多くなるとのデータが示された。緩和ケアを必要とする患者へのICTを用いた連携の評価を設けることに対しては、委員から賛同する意見があった。
 訪問栄養食事指導については、ニーズは高いと想定されるものの、取組みは十分に広がっていない。対策として、在宅療養支援診療所・病院の役割に訪問食事指導を取り入れることや、都道府県栄養ケア・ステーションとの連携を推進することが課題とされた。なお、第8次医療計画においても、訪問栄養食事指導を充実させるため、管理栄養士が配置されている在宅療養支援病院や在宅療養支援診療所、栄養ケア・ステーションの活用が求められている。

 

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全日病サイト内の関連情報
  • [1] 医政発 0526 第 12 号

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2023/230529_3.pdf

    2023/05/26 ... 以下「整. 備政令」という。)、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改. 正する法律の施行に伴う厚生労働省 ...

  • [2] 全日病ニュース 2016年11月15日号 - 全日本病院協会

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2016/161115.pdf

    2016/11/15 ... 厚生労働省は 10月 26日の社会保障. 審議会・療養病床の在り方等に関する. 特別部会(遠藤久夫部会長)に、介護. 療養病床や医療療養病床 25対1の受.

  • [3] 2017.10.1 No.903

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2017/171001.pdf

    2017/10/01 ... 病院が直接、在宅医療を提供する利. 点としては、◇病状悪化時やレスパイ. トでの入院が容易◇他科の医師を含め. 往診の代理を頼める◇自院で在宅医療. の ...

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