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ホーム全日病ニュース(2023年)第1043回/2023年11月1日号来年夏のとりまとめに向け検討会の議論がスタート

来年夏のとりまとめに向け検討会の議論がスタート

来年夏のとりまとめに向け検討会の議論がスタート

【厚労省・かかりつけ医機能等情報提供等検討会】かかりつけ医機能報告制度の創設と医療機能情報提供制度の刷新

 厚生労働省は10月13日、「国民・患者に対するかかりつけ医機能をはじめとする医療情報の提供等に関する検討会」の初会合を開き、かかりつけ医機能が発揮される制度の整備に向けた議論をスタートさせた。かかりつけ医機能報告制度の創設や医療機能情報提供制度の刷新などを議論する。検討会の下に、それぞれのテーマを議論するための分科会を設置し、11月から議論を開始する。初会合では、座長に永井良三・自治医科大学学長を選出した。

かかりつけ医機能制度整備で法改正
 かかりつけ医機能の制度整備について、これまでの経緯を振り返ると、以下のようになっている。
 かかりつけ医の定義については言うまでもなく、2013年の日本医師会・四病院団体連合会の合同提言がある。しかし、それが政策や制度に位置付けられることはなかった。
 コロナ禍の2021年になって、かかりつけ医の制度化をめぐる議論が活発になり、2022年6月の骨太方針2022には、「かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行う」との方針が明記され、法律の規定に向けた議論が始まることになる。
 昨年12月28日に社会保障審議会医療部会がまとめた「医療提供体制の改革に関する意見」では、複数の慢性疾患や医療と介護の複合ニーズを有する高齢者が、今後さらに増加することを指摘し、「治す医療」から「治し、支える医療」を実現するために「医療機能情報提供制度の刷新」と「かかりつけ医機能報告制度の創設」を2本柱とするかかりつけ医機能の制度整備の案が厚労省から示された。
 かかりつけ医機能については、在宅を中心に入退院を繰り返し、最後は看取りを要する高齢者が今後さらに増加することから、◇持病(慢性疾患)の継続的な医学管理 ◇日常的によくある疾患への幅広い対応◇入退院時の支援◇休日・夜間の対応◇在宅医療◇介護サービス等との連携─のニーズがあることが想定されている。
 このような考え方を踏まえ、今年5月に成立した全世代対応型社会保障関連法で医療法を改正し、かかりつけ医機能の制度整備を行うことになった。
 法改正では、2026年4月施行の医療機能情報提供制度の刷新により、①かかりつけ医機能を十分に理解した上で、自ら適切に医療機関を選択できるよう、医療機能情報提供制度による国民・患者への情報提供の充実・強化を図る。
 2025年4月施行のかかりつけ医機能報告の創設により、②慢性疾患を有する高齢者その他の継続的に医療を必要とする者を地域で支えるために必要なかかりつけ医機能について、各医療機関から都道府県知事に報告を求める。都道府県知事は、報告をした医療機関が、かかりつけ医機能の確保に係る体制を有することを確認し、外来医療に関する地域の関係者との協議の場に報告するとともに、公表する。都道府県知事は、外来医療に関する地域の関係者との協議の場で、必要な機能を確保する具体的方策を検討・公表する(図表上を参照)。
 2025年4月施行の「患者に対する説明」では、「都道府県知事による②の確認を受けた医療機関は、慢性疾患を有する高齢者に在宅医療を提供する場合など外来医療で説明が特に必要な場合であって、患者が希望する場合に、かかりつけ医機能として提供する医療の内容について電磁的方法または書面交付により説明するよう努める」としている。
 なお、参議院の審議における附帯決議では、「今回のかかりつけ医機能の制度改正は同機能が発揮される第一歩として位置づけられる」ことや、「同機能を有する医療機関に勤務しようとする者への教育及び研修の充実」、かかりつけ医機能報告の対象となる慢性の疾患を有する高齢者その他の継続的な医療を要する者は、「障害児・者、医療的ケア児、難病患者を含めるなど適切に定め、将来は、継続的な医療を要しない者を含め、かかりつけ医機能報告の対象について検討する」ことなどが求められている。

強引な制度変更には懸念を表明
 今後、法律の施行に向け、具体的な議論が始まる。基本的には、同分科会の下に設置される「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」で、かかりつけ医機能報告制度の創設の議論を行い、「医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会」で医療機能情報提供制度の刷新の議論を行う。検討項目は図表下にあるような項目となっている。どちらも来年夏頃にとりまとめを行うとしているが、医療機能情報提供制度については、来年4月に全国システムへの刷新がある。
 これらに対し、構成員からは様々な意見が出た。
 全日病副会長の織田正道構成員は、地域の実情を踏まえずに、強引に制度変更を行うと、現状の医療提供体制が壊れてしまう可能性に懸念を表明。「制度変更により、いろいろな制限を医療機関に課すよりも、かかりつけ医機能を地域で支えるために、できるだけ多くの医療機関が参加できるような制度設計が必要である」と述べた。
 これに関連し、病院が、紹介受診重点医療機関とかかりつけ医機能を担う医療機関の2分類に整理されることに警戒感を示し、「紹介受診重点医療機関であっても、かかりつけ医機能があれば、かかりつけ医機能を担う医療機関に位置付けられるべき。逆に、かかりつけ医機能を担う医療機関が紹介を受けることもある。すでにある医療資源を地域の実情に応じて、有効に活用できる仕組みが望ましい」と主張した。
 日本医療法人協会副会長の小森直之構成員は、「医療機能情報提供制度で報告する際の入力業務をあまり複雑にしないでほしい」と述べ、医療機関の負担への配慮を求めた。また、参議院の附帯決議において、かかりつけ医機能を有する医療機関に勤務する医師への教育・研修についても、すでに医師は多くの研修を受けていることから、負担への配慮が必要と指摘した。

 

全日病ニュース2023年11月1日号 HTML版

 

 

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