全日病ニュース

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安倍政権:健康・医療戦略を策定。安倍首相:医療IT統合化を指示

安倍政権:健康・医療戦略を策定。安倍首相:医療IT統合化を指示

▲産業競争力会議後に記者会見する甘利内閣府特命担当大臣(5月22日)

安倍政権
健康・医療戦略を策定。安倍首相:医療IT統合化を指示

【医療・介護のICT戦略】
内閣府 都道府県単位で医療・介護を統合したDPCロジックのデータベースを提案

 

 5月22日の産業競争力会議に菅官房長官は健康・医療戦略に関する取組状況を報告、「関係府省が一体となった戦略的な取り組みが必要であり、政府としても健康・医療戦略を6月半ばにとりまとめ、策定する」方針を表明、その骨子を明らかにした。
 菅官房長官は、また、「健康・医療分野の課題と主なICT利活用策」を提示、これは「社会保障国民会議、経済財政諮問会議、産業競争力会議、規制改革会議、健康・医療戦略参与会合等で示された提言に対応したICT利活用策を整理したものだ」と説明した。
 そのイメージ図をみると、現在進められているレセプト・特定健診等の情報DBと医薬品の副作用データなどの医療情報DBに加え、少なくとも以下の仕組みが構想されていることが分かる。

①保険者のデータ分析能力を抜本的に向上させ、被保険者に対する医療費適正化の指導を強めるとともに、分析結果にもとづいて、保健事業におけるサービス事業者のサービス提供を充実させる。
②地域に応じた医療と介護のICT連携を構築、利便性を向上させるとともに、重複受診・検査の是正等を進める。
③(①と③を利活用した)医療機関と民間事業者の連携による疾病予防等のサービス、高齢者等が安心して健康に暮らせる住宅・まちづくり、公的保険外の民間サービスを考慮した地域保健など、新たな健康寿命伸長産業を創出する。

 このような医療におけるICT利活用策は、今、日本経済再生会議を筆頭とする政府の各諮問会議できわめて注目を集めており、その積極的な推進が合意されている。
 内閣府は5月16日の経済財政諮問会議に「社会保障の現状と課題」と題した資料を提出、その中で「患者を病名と医療行為の組み合わせで分類するDPC手法を活用した医療DBを都道府県単位で整備する」ことを提起した。
 内閣府は「既存のレセプトシステムを利用して患者名と医療費のデータを県単位でDB化する」として構想の全容を明らかにするとともに、「国保・高齢者・介護保険・特定健診のデータ統合等が必要であるが、既存データの変換のみであり、低コストで構築可能」と指摘している。
 現在、厚労省にはナショナルDBがあるが、各都道府県が管理するDBはない。この提案は、都道府県単位で医療と介護を統合したDPCロジックのDBを構築し、保険者の受診指導、在宅医療や介護における連携の推進、地域医療計画(医療資源の適正配置)の策定に活かすというものだ。
 このデータをうまく活用すると、市町村別年齢・傷病別の診療行為と医療費の動向、あるいは県内同一患者に対する医療給付の追跡分析、さらには医療給付と介護給付の統合した分析等も可能になり、近隣市町村や他県との比較評価もできる。
 同資料は、産業医科大学が手がけた「福岡県保健医療介護総合データベース」を先行例にあげ、「初期費用は1,000万円弱であった」ことを明らかにした上で、「その(全国への)横展開」を提唱している。
 都道府県によるDPCロジックのDB整備は、「医療計画や診療報酬で規制されている権限の一部が都道府県へ委譲されれば米国における州毎のDRG制度に似た都道府県別のDPCが可能になる」と、都道府県には制度変更を期待する向きもある。
 この方法は、社会保障制度改革で出ている、国保の都道府県化、医療計画を媒介した基金方式による医療機能の再編、都道府県に保険医療機関の指定解消権限を付すといった構想とリンクするものがある。
 同日の経済財政諮問会議で、IT化に並々ならぬ期待を寄せる安倍首相から「特に医療介護情報をITで統合的に利活用する仕組みは具体的に前進させる方向で検討してほしい。医療機関等々に協力してもらわなければならない。インセンティブ等、いろいろと工夫をしていく必要があると思うが、よろしくお願いしたい」と激を飛ばされた甘利内閣府特命担当大臣(社会保障・税一体改革担当大臣)は、「医療介護情報のIT化は、成長戦略としても今後、重要になる。田村厚労大臣と連携をして、しっかり取り組んでいく」と述べた。

 

猪瀬都知事 「東京特区に外国語が通じる病院を誘致する」

 5月22日の産業競争力会議で、猪瀬東京都知事は東京都のプランを例に「国家戦略特区(仮称)」の考え方を説明した。
 その中で、猪瀬都知事は、東京都の特区構想を「外国企業誘致による日本経済再生に向けた特区のバージョンアップ」と位置づけ、特区における事業の1つに「外国人向け医療の充実」をあげた。その骨子は次の3点からなる。

①JCI認証の取得を支援する(現状は都内2病院。これをまず10病院にする。米国保険会社からの信用力向上につながる)
②外国人対応救急隊の充実を図る(現状は英語対応可能な救急隊員が192名=救急救命士60名を含む。これを海外研修の実施等により英語対応力を向上させる)
③特区エリア内に外国語が通じる病院を誘致(外国人医師が診療)東京都は、2011年12月に政府から「国際戦略総合特別区域」の指定を取り、外国企業誘致プロジェクト(アジアヘッドクォーター特区)を立ち上げている。

 このプロジェクトを推進する中で、羽田空港におけるビジネスジェットの駐機可能日数を7日から10日に延長するなど一部の規制緩和は実現したが、2012年に「外国人医師の診療」や「入国・再入国審査の緩和」等について関係省庁と開始した協議は今も実現にいたらず、いずれも継続協議となっている。
 「外国人医師の診療」に関しては、一部外国との相互互換制度になっている特例的な医師国家試験制度あるいは臨床修練制度などの拡大運用をめぐって厚労省等と協議している模様だ。
 今回は、アベノミクスの一環として取り組む総合特区であることから、猪瀬都知事は、当構想で新たに打ち出した「法人税実効税率20.2%」や「金融市場の開始を世界で最も早くする、日本の標準時間を2時間早める“東京時間”の導入」などとともに、「外国人医師の診療」などの医療関連規制緩和の実現も可能になるものと期待している。