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ホーム全日病ニュース第802回/2013年6月1日号特定行為の最終案や研修内容・研修...

特定行為の最終案や研修内容・研修施設基準を検討

特定行為の最終案や研修内容・研修施設基準を検討

【チーム医療推進のための看護業務検討WG】
研修期間は柔軟に設定。WGを再開、法改正後の作業を前倒し

 


▲山積みの資料を前に会合に臨む神野副会長(右端)

 看護業務検討WGは、3年近くかけて、看護師による診療補助行為のうち高度な技術と判断を要する医行為(特定行為)を、一定要件を満たした研修(指定研修)を修了した看護師に、医師の包括的指示とプロトコルのもと実施を認めるという制度設計を検討、その結果はチーム医療推進会議で「特定行為に係る看護師の研修制度案」にまとめられ、保助看法に位置づけられることになった。
 保助看法の改正は今週の臨時国会に提出される予定であるが、同改正法によって、特定行為と指定研修の具体的な内容は新たな審議会で検討の上、省令で定められることになる。
 そして、5月13日、法改正と当該審議会設置の前にそれらの具体的な検討作業を進め、厚生労働大臣が審議会に諮問する案をつくることを目的として、「チーム医療推進のための看護業務検討WG」が再開された。
 WGで、事務局(厚労省医政局看護課)は、3月29日のチーム医療推進会議がとりまとめた「特定行為に係る看護師の研修制度案」をあらためて説明。「特定行為の内容と領域」に関する検討を6月内に終え、引き続き「研修内容と研修方法および研修施設指定基準」の検討を9月いっぱいにまとめ、いずれもチーム医療推進会議に報告するという日程を示した。
 特定行為に関しては、すでに29の行為について、本制度のもと看護師が行なえる医行為に位置づけるという案がWGで合意されているが、これ以外に27の行為が、看護師一般が行なえる行為であるかあるいは特定行為であるかの判断が「要検討」とされたままでいる。
 今回は、この27行為に関する結論を導くとともに、特定行為に位置づけられる医行為すべてについて、それらを、とくに必要とされる診療領域別に分けるという作業が求められると、事務局は説明した。
 特定行為の最終リスト作成に関連して、薬剤師の構成員は「看護師以外の専門職が現に行っている補助行為を看護師について医行為として認めるということは避けるべきではないか」と提起、その確認を求めた。WGは「それはすでに了解済みである」旨を再確認した。
 特定行為を1つ1つ診療領域別に分けるのは、指定研修のプログラムを、領域別の特定行為で括った診療領域別に編成する必要があるからだ。
 「研修内容と研修方法および研修施設指定基準」に関して、事務局は、①必須科目と実習の内容および単位数、②指導教員の要件と人数、③修了時の評価、④研修施設の要件の4点を検討事項にあげた。
 指定研修の期間を検討事項にあげていないのは、指定研修受講者の能力水準、到達目標、プログラム内容、研修方法の議論が熟する過程で、研修時間がおのずとみえてくるとの判断にもとづくものと思われる。
 例えば、指定研修受講者は当初案では「看護師業務5年以上」とされていたが、WGにおける議論で、そうした“外形的基準”はふさわしくないとされ、枠組みとしては条件を課さないことにした。とはいえ、ではどういうレベルの看護師が受講するのか、現時点ではみえず、プログラムを組む上で判断しにくいところがある。
 この問題はこの日のWGでも議論となったが、「診療領域でも異なるため柔軟に考える」ことで概ね一致した。
 次に、到達目標に関しても、そのイメージは、「かなり高度な能力が求められる」「認定看護師が参考になる」など、WGの構成員によって異なる。
 前者は、例えば、当初案にあった「大学院における教育=2年制」のイメージを踏襲しているが、後者は当該領域の特定行為の能力が養成される、例えば、当初案の「研修機関における教育=8ヵ月制」をイメージしている。“ジェネラリスト”か“スペシャリスト”のどちらを指向するかでプログラムの内容と研修期間は大きく異なる。
 この問題に、さらに、研修方法が大きくかかわってくる。すなわち、座学部分をeラーニングで可能とする方法を導入した場合、期間はある程度長期にわたることが考えられる。
 この日も、複数の構成員から「現に従事している看護師が仕事を続けながら研修を受けられるようにすべき」という意見が出た。そのためには、eラーニング等の通信教育とスクーリングの組み合わせが考えられるが、おちこぼれを出さないためにはゆとりをもった研修期間の設定が不可避となる。
 この問題に関連して、複数の構成員が「充実した実習を確保する必要」や「研修後の研修についてもなんらか担保する必要」を訴えた。OJTの考え方によっては、勤務先で実習環境を確保するという発想もあり得る。指定研修の受講者を増やし、この制度の普及を考えると、「大学院における教育」よりも「研修機関における教育」が実効性に富むことになり、実は、この制度の枠組みが最終段階で大きく修正された背景には、後者による看護師の養成が現実的かつ看護現場に与える影響を小さくできるという厚労省の判断がはたらいたと思えるところもある。
 星構成員(星総合病院理事長)は「この研修が、今後の、新人教育を含めた全国の看護師教育の1つのモデルとなり、全体の底上げにつながていくものとすべきではないか」と提起し、がんじがらめの枠組みに対して、一定の自由度をもった柔軟な研修制度とすることを提案した。
 これに対して、最初の看護業務実態調査と特定行為案作成にかかわった前原構成員(防衛医大教授)は、救急や周術期あるいは在宅医療などである程度医師を補佐できる高度な看護師の育成をイメージする立場から、「認定看護師プラスアルファなのか、もう少し基礎的な医学教育や看護教育を身につけた人を養成するのか、その辺りのコンセンサスが得られていない」と不満を述べ、星発言を「それでは話が元に戻ってしまう」と論難した。
 こうした議論に、有賀座長(昭和大学医学部教授)は「この間の試行事業を見ると、認定看護師が研修を受けるケースが多い。そうしたスタートを否定するものではないが、現実的には、看護師のキャリアアップというかたちで参加する人も出てこよう。それを否定することもできないが、しかし、この制度がそのレベルにとどまるとも思えない」と整理。研修プログラムの具体案をWGの大滝委員(東京医大教授)ほかに委ね、次回以降、具体案をもとに議論を煮詰めていくことを確認した。