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ホーム全日病ニュース第802回/2013年6月1日号7対1・10対1の見直しめぐり意見分かれ...

7対1・10対1の見直しめぐり意見分かれる

7対1・10対1の見直しめぐり意見分かれる

【入院医療等の調査・評価分科会】
厚労省 急性期受皿の視点含む亜急性期のあり方を議論の意向

 5月16日に開かれた中医協・診療報酬調査専門組織の「入院医療等の調査・評価分科会」は、一般7対1病棟の実態と7対1・10対1入院基本料における長期入院患者に関する調査結果を踏まえた2014年度改定の論点をめぐり、白熱した議論を展開した。
 論点には、7対1入院基本料要件への在宅復帰率導入と7対1と10対1病棟における特定除外制度の見直しを提起するものがあり、分科会委員である神野正博全日病副会長は、こうした方向での性急な議論に反対し、慎重な検討を求めた。
 議論の中で、事務局(厚労省保険局医療課)は、今後、急性期の受け皿機能を含む亜急性期のあり方が大きな議論テーマになるという認識を示した。 (1面記事3面記事を参照)

 

 一般病棟入院基本料の調査対象は1,800施設だが、回答は169施設(9.4%)に過ぎない。
 調査結果の報告は、「平均在院日数が長い7対1病院の手術件数は少ない傾向にある」と、あるいは「介護施設等からの入棟患者の割合が高い7対1病院の手術件数は少ない傾向にある」と指摘したが、前者の標本数はわずか10病院、後者も16病院に過ぎない。
 この低回答率に関して、神野委員(恵寿総合病院理事長・全日病副会長)は、「急性期の病院は医療区分で患者の病態をはかることはない。調査は、しかし、全患者を対象に医療区分の判定を求めた。そうしたことへの戸惑いが低回答率の背景にあるのではないか」という見方を示し、強引な調査手法に疑問を唱えた。
 7対1要件と7対1・10対1特定除外制度の各見直しに、分科会委員の意見は賛成、慎重、反対に分かれ、白熱した議論が繰り広げられた。それは、集計結果を分析評価して中医協への報告をまとめるというよりも、中医協の審議そのものであった。
 事務局は、一般病棟以外の調査結果をも踏まえ、今後も、①看護必要度のデータを踏まえた各病棟の患者像、②急性期の受け皿論としての亜急性期入院医療管理料、③地域特性に配慮した病棟のあり方、が議論されることを明らかにした。
 その上で、亜急性期については、病床単位であることや、7対1長期患者の受け皿機能という面から患者像が検討テーマとなるなど、入院医療に関する一番大きな議論になるという認識を明らかにした。
 また、7対1の平均在院日数に関しては、①入院基本料の要件、②特定除外患者、③短期手術を多く算定する病院という3つの面から論じていきたいとした。
 分科会後のブリーフィングで、医療課の一戸課長補佐は、7対1と10対1の見直しは「受け皿論を踏まえた上での議論になる」との認識を表明。
 また、その受け皿として想定される亜急性期については、「医政局の議論で亜急性期は病棟単位の機能として提起されている。その一方、亜急性期入院医療管理料は病室単位の特定入院料である。こうした点も含めて亜急性期入院医療の評価のあり方ををどう考えていくかという課題がある」と述べ、病棟または病床単位という施設基準も重要なテーマとなることを明らかにした。

入院医療等の調査・評価分科会(5月16日)の議論から

【平均在院日数について】

●回収率が低いが、追加調査をしなくてよいか。
一戸医療課長補佐 回収できた医療機関の病床分布は全国平均と近い。地域も全国にまんべんなく分布。大きな偏りはなく、代表性はあると考える。
●平均在院日数は将来的に15日程に収まるといい。短期手術が多い病院には何らか対応を図るべき。介護施設からの患者は他の患者と明らかに違う。それを踏まえて、7対1のあり方を考えるべき。7対1は中小病院が多い。見直しても急性期病院に大きな影響はない。
●このデータは地域性については分析したのか。
補佐 していない。7対1に地域性はあまり関係ない。分析すべきは病院と機能の問題ではないか。
神野委員 調査結果には7対1の中小病院の特徴が出ている。これは良し悪しではなく、そうした患者像を扱う病院とそうではない病院では機能が異なるということだ。どういうタイプの患者を入れているかで7対1にも色々な機能があると理解すべきではないか。単に入院期間が長い、介護施設からが多いということで7対1病院の一部を排除するというのはやめるべきだ。在宅復帰率が出てくるが、超急性期からいきなり在宅というのはおかしい。超急性期から次の機能の病院にゆき、そこから在宅にいくというのが、今までの機能分化の議論。在宅復帰率を求めるのなら、条件を色々考えてもらわなければならない。
●7対1はDPC同じく2極化している。
90日超がいるというが、問題は転帰がリーズナブルであるかだ。適切な施設に転院させる機能があるかが7対1の評価としてあっていい。
●地域によっては介護施設の急変患者を7対1で引き受けるしかないところもある。7対1の患者像、病態は今回調査では把握が難しい。
●高度な医療をする、特殊な疾患をみる、在宅看取りを引き受けると、7対1病院は3つに分かれる。ここでは、7対1は高度急性期ということをハッキリさせることが大切。特殊な疾患を短期間で回している病院と看取りをしている病院は、例えば介護の人を増やす仕組みの中でやっていくことが必要。そういう意味で区分していく必要がある。
神野 本格的急性期、専門特化型とともに地域一般病棟のような在宅支援機能をもった7対1もある。救急では介護施設の患者と似た高齢者が増えている。
こうした高齢者を、休日や深夜に、急性期病院以外で受け入れることは可能かという状況も併せて考えるべき。
●総合病院と専門病院では明らかに患者像が違う。平均在院日数だけを論じてもだめだ。疾患のケースミックスを考え、7対1病院は、複雑性や効率性も加味して考察すべきだ。
● 7 対1病院で看取りをするのが適切か。在宅療養後方病院という機能が地域で発揮できる仕組みにしていけば、DPCや7対1病院に高齢者がいくということはなくなる。
●地域によっては7対1にする必要があるケースがどうしても出てくる。
補佐 議論の基本として外してほしくないのは、7対1病院の機能を評価するのではなく、7対1の病棟はどういうものであるかという点だ。その病院がどういう機能をもっているかというのは、また、別の議論ではないかと考える。

【特定除外患者について】

●7対1や10対1の特定除外患者は前改定と同様の見直しが必須。
神野 医療区分は慢性期患者の区分であり、急性期には別な病態がある。急性期病院は医療区分を測ったことがない。この調査の回収率が悪かったのは、それが影響している可能性がある。これは調査開始前に懸念した通りで、それを無理やりやった結果を基にどうだこうだいうのは乱暴な話だ。7対1に入っているのは、特定除外項目に当てはまる状態がありながら、その病状が刻々と変化している患者である。こうした患者を他のところで診ることができるのか。こうした病態をきちんと把握しないといけない。
補佐 長期入院患者については看護必要度の調査もしている。次回以降示したい。病棟横断的に同じ評価項目で患者を見たときに、一般と療養に違いがあるかという点が明らかになるだろう。
特定除外に関しては、すでに13対1や15対1でこうした考え方をしている。
したがって、この点に関しては同じやり方で見ていただくことになろう。
●特定除外患者は数%しかない。このくらいならば平均在院日数に加えておかしくない。13対1や15対1は見直したのに、10対1や7対1は見直さないというのは通らない。
●現場は努力をした結果、なお、数%の患者が残っているというのが実態ではないか。
●特定除外患者が数%というの相当改善した結果の数字。時間経過とともに然るべきところに収束していく。もう少し観察してもよいのではないか。
神野 私は特定除外廃止の是非を云々しているわけではない。この制度を見直した場合に、その後で診るところがあるかどうかを問題にしている。後方病床が確保されなければ難民が増えるだけである。相当慎重な議論が必要ではないか。場合によったら、病院別になっている看護配置を病棟別にするなり、傾斜配置を認めることによって、急性期病院の中で慢性期的な患者を診れるようにする、あるいは、短期手術をこなして平均在院日数を短くしている病院の看護基準を薄くするといった、病院ごとにケアミックス的な考え方、看護配置上のケアミックスがあってもよいのではないか。
●特定除外項目は再検討できるのか。
急性期病院として、これも該当するという疾患もあるのではないか。DPCには特定入院期間があり、90日超患者の評価になっている。そういうケースミックスが存在していて、それがDPCでは認められているにもかかわらず、ここだけ別に議論されるというのは制度的に矛盾していないか。
補佐 特定除外項目の1つ1つを議論すると、何を議論しているのか分からなくなる。まずは、この制度自体をどうするかという議論をしていただきたい。
これを1つでも残すと、また、あれもこれもという議論になる。
●実態としての7対1と今後の7対1とを考えていかなければならない。今後の7対1については、複雑な病態像を擁したケアミックスみたいなところを考えてはどうか。11日~15日という在院日数を目指していくには、そういう病院を作っていかなけれないけない。
補佐 患者像に関しては今後看護必要度の議論の中で病棟の中でどういう患者を診ているかという話が、受け皿論としては、亜急性期入院医療管理料の議論が、今後控えている。地域性については、地域特性に配慮した病棟のあり方が今後の議論になってこよう。その中で、一番大きな議論になるのは多分亜急性期ではないか。亜急性期については病床単位になっている点もあるが、その患者像はどういうものかという点を、7対1で入り組んでいる患者の受け皿機能(になり得るか)といったところをどうみていくか、その辺りが今後の議論になるのではないか。
●色々と努力してきた結果、特定除外患者の割合は3.7%になった。これをなくすと地域医療に悪い影響が懸念される。平均在院日数をいじるのなら、相当な対策が必要になる。
●特定除外患者を加えても平均在院日数は1.5日しか増えない。なら、そういう患者は療養病床に回してほしい。特定除外制度はすでに役割を終えた。
補佐 平均在院日数の議論はいくつかに分かれている。①入院基本料の要件をどうするか、②平均在院日数に含めていない特定除外患者をどうするのか、③平均在院日数に入っていても7対1における短期(手術)の病院をどうするかと。その中で、7対1の病棟としての評価がどういうかたちであり得るのかを議論していただいている。
神野 今のままで平均在院日数を短くする、特定除外を止めると、後方病床がなければ難民が出てしまう。その人たちを誰がみるのか、そこをしっかり議論しないとならない。
補佐 今回調査では退院をめぐる状況も調べている。次回示すので、それをもとに、受け皿論や診療報酬のあり方を議論してほしい。
●急性期医療は在宅復帰率を高めるという基本形をしっかり論じるべきである。
●在宅復帰率を重要な視点とする考えに賛成。
神野 急性期病院がすべて在宅復帰率を追求するとなると、今の機能分担の議論がおかしくなる。高度急性期を含む急性期病院は、亜急性期やポストアキュートにどうつなぐかという視点が大切だ。
宇都宮医療課長 この調査結果は現状評価の議論となるが、もう1つ、今後医療がどう変わっていくかという議論も必要ではないか。高齢者が増加し、治る疾患から治らない疾患を沢山抱える人が増えてくる、そういうときに7対1が本来は治す病棟として機能すべきところ、今や35万床もあって、13対1は3万強しかない。こういう医療資源配置でよいのかといった議論もあるだろう。そういう中で受け皿がないという。それは当然で、みんな7対1に行ってしまっているからだ。その辺りをどう考えるのか。さらには、医療と介護を必要とする人が増えてくる中、介護職員は痰の吸引や経管栄養ができるようになり、今までは急性期病院でなければできなかったものが、少しづつ療養病床でも扱われるようになってきた。介護でも、老健で肺炎を診れるようになった、あるいは看取りの評価が充実されてきた。というように状況が変わってきている。そういうことも含めて、現状は現状として評価するが、それを将来にどうつなげていくかという視点の議論をお願いしたい。