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ホーム全日病ニュース第802回/2013年6月1日号支部訪問/第4回 愛知県支部...

支部訪問/第4回 愛知県支部: 「医療の未来を考える勉強会を手がけたい」

支部訪問/第4回 愛知県支部
「医療の未来を考える勉強会を手がけたい」

病院協会が林立する中、他団体と連携する一方、全日病の存立基盤を模索

 

 愛知県の病院数は329(2010年10月現在)。内訳は、国立が8施設、県立が4、市町立が30、それ以外の公的が12、残る275が私立病院ということになる。開設者の構成から分かるように、伝統的に公的病院の存在感が強い地盤である。市町立病院も500床以上の大病院が4分の1近くを占めるなど、比較的規模が大きい。
 愛知県は県の病院協会に225病院が加入、その組織率は68%にも達している。医療審議会、同医療対策部会、同医療計画部会などの主要審議会だけでなく、愛知県健康づくり推進協議会、愛知県生活習慣病対策協議会といった医療施策を検討する場に委員を派遣、県と病院をつなく着実なパイプを確保している。
 愛知県は、また、日本病院会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会が、それぞれ多くの病院を組織し、活発な活動を行なっている。例えば、医法協と日精協(いずれも愛知県の一般社団法人)は、県病院協会とともに愛知県の医療審議会に委員を出している。医法協は県病院協会とともに医療計画部会にも参画している。
 一方、全日病愛知県支部は、現在のところ、そうした実績を確保していない。57人の支部会員を擁しながら、愛知県における全日病の影響力は十分とはいえない。
 だが、藤田支部長は愛知県の状況をこう説明する。
 「愛知県は県の病院協会が大きいし、各病院団体の組織が根を張っていて、一見すると、群雄割拠の状態にある。しかし、多くの病院経営者は各団体に重複加入しているので、皆さん張り合うという関係にはありません。当院も、全日病だけでなく、日病と医法協にも加入しています」加えて、役員を兼任している人が少なくない。
 「わが支部の役員にも他団体の役員経験者が大勢います。現に、私自身、県病院協会の常務理事を兼ねています。また、県や名古屋市などへの委員派遣や医師会との交流も基本的に病院協会が担っています。ですから、それぞれが競ってということはありません。それどころか、他団体を介して色々な情報が入ってきますから、そうした情報をもとに支部役員会で盛んな議論が行なわれています」ある意味で、各団体の連携が取れているというわけだ。愛知県の病院団体を率いる県病院協会は、公私病院間のバランス確保にも気を遣っているという。
 「愛知県病院協会は、公的病院と私的病院とで理事が大体半々です。役員選挙も、地域割りをした上で、それぞれの地域で公私病院のバランスが図られています」

 

支部活動 全日病の情報を支部会員に回覧

 こうした病院団体のまとまりは、県に対する病院界の影響力を強めているという。
 「成果の1つが災害コーディネーターの設置です。病院団体や有力病院が県にはたらきかけたところ、このほど、その検討を始めることになりました。行政に対して、医療の側がガバナンスをもって臨むということができるようになりつつあります」では、全日病支部のガバナンスはどうか。
 「現在の支部活動は、支部総会と2ヵ月に1回の支部役員会、随時の講演会・勉強会が主です。それと、支部役員会の議事も含めて、全日病の情報を会員に回覧しています。一時、会員が50近くまで落ち込んだこともありましたが、最近、新しい会員が増えて盛り返しました。新しい会員の中には支部役員が担える有力病院もありますから、これからは有意義な活動もできるのではないかと期待しています」その一方、地理的な悩みもあるという。
 「どうしても名古屋が中心になってしまうため、臨床をもつ、遠い地域の支部役員が役員会に参加しにくいという問題があります。とくに豊橋ぐらいになるとかなり遠い。そのために役員を降りた方もいます。そのところが悩ましいところです」支部活動をどう充実させていくかも、愛知県支部の課題だ。
 「愛知県で各病院団体は利害を一にしており、それぞれの存立基盤に際立った違いというものが見当たりません。ただ、その中で、医法協さんは独特な活動をしています。例えば、看護師の部会とか事務職の部会とかをもって、会員でなくても参加できるようにしている。しかも、役員にまで登用しています。接遇とか税金とか、講演会やセミナーの活動が活発なんです。我々にも協賛の申し入れがよくあります。そういうときは、役員会で検討し、では一緒にやりましょうということになります。やはり、連携が大切です」

 

改革議論 国任せではなく、我々も参加する必要がある

 では、全日病支部の存在意義をどう考えたらよいのか。
 「愛知県は病院団体がそれぞれ根を張っているため、活動が弱ければ病院からは選ばれないという風土だといえます。そうした中で、全日病としてのアイデンティティーというか、オリジナリティーをどう打ち出すか。それを、今考えているところです」こう前置きして、藤田支部長は、次のような活動イメージを語った。
 「国による改革議論が進んでいます。支部役員会でも医療の今後をうかがう話が色々出ます。そういう意味で、国の舵取りも大切なのですが、同時に、我々も、マクロの視点に立った議論をしていく必要があるのではないかという意見が役員会にあります。目先にばかり目が奪われるだけではだめなのではないかと…」「今起きつつある改革、あるいはこれから起きるだろう変革には、恐らく、どの病院団体も、今の医療の枠組みを前提に考えるというスタンスではないでしょうか。まだ、愛知県支部として本格的な議論を進めているわけではありませんが、それこそ思い切った、例えばTPPを含めた枠組みの予測とか、これからの医療産業、医療経済という視点からのあり方とか、そういう議論や検討を支部として試みながら、全日病にフィードバックしていく。そういうことも考えていこうじゃないかという話を、役員会でしています」こうした視点からの勉強会に取り組んでいきたいという。
 「これまでも、産業人を招いて医療経済の話をきく勉強会を支部総会後に開いたりしてきました。こうした企画は、支部総会への会員出席を増やす方策でもあるのですが、これからは、役員会とセットで開催していくことを計画しています。講演会というよりは、和気あいあいに議論して率直な意見を出し合う、懇話会といった趣きでしょうか。とにかく、他病院団体とは異なる視点から、会員間のコミュニケーションを活性化したいものです」

 

全日病本部 マクロの問題にも取り組んでほしい

 こうした問題意識は、全日病本部に対する期待と要望にも反映される。
 「全日病としても、病院経営という現実の問題を論じる一方で、将来の医療や医療産業がどうなっていくのかというマクロの問題にも取り組んでほしいものです。今言った視点から前向きな議論をしていかないと、社会の変化に遅れてしまう可能性があります。全日病には若い人がどんどん入ってきていますが、もはや我々の時代ではなく、若い世代主導で議論が進むと面白いですね。支部長会にしても、各支部からの意見を温めつつ、それを少し形を変えた大きな議論に発展させていくことが、これからは必要ではないでしょうか」藤田支部長は全日病に対する期待をさらに熱く語る。
 「そういう意味から、期待するのは全日病総研です。ぜひ、シンクタンクとして長期構想を決め、しっかりと戦略目標をもってやっていく。その中で、外部研究者を積極的に起用し、色々な視点からもう少し活性化させていただきたい。そうした成果に立った議論が支部と本部の双方向でできていけば、全日病はもっと伸びていくのではないでしょうか」期待するだけではない。愛知県支部も義務を果たしたいと意気込んでいる。
 「愛知県支部は、全日本病院学会が10回に満たない遠い時期に開催を引き受けています。実は、私が支部長に就いたときに、全日病学会を開催しないかというお話があって、その時は辞退したんですが、それがきっかけとなって、そろそろやるかという機運が出てきているんです」愛知県支部は、記念すべき第2回全日本病院管理学会(当時の呼称)を1963年(昭和38年)に開催している。だが、以降、一度も学会を招致していない。
 「それまでに、今言ったような構想を実現し、それだけの存在感を示しながら、その上で組織強化をしていきたいと。その組織強化も、ただ数だけじゃなくて、実際の活動の中で独自性も生かしながらということ、今、みんなで考えているところです」

 


▲2009年6月6日、愛知県支部は、支部総会後に「これからの医療―高齢社会を迎えて」「回復期以降の地域連携について―現状と認識と課題、その将来」と題した講演会を開催した。後者のテーマでは医師、看護師、理学療法士に、それぞれの視点から地域連携について語ってもらった。

 

支部訪問/第4回 愛知県支部
全日病各支部の現状と地域医療の課題を探る

 愛知県支部の会員数は57人。全日病創設時からの歴史を誇る“老舗”支部の1つである。全日病前理事を務めた後、現在は支部長に専念している藤田民夫氏(写真)に、愛知県支部の現況と今後の展望をうかがった。(支部訪問は不定期に掲載します)