全日病ニュース

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短期滞在手術基本料 厚労省が包括範囲と対象の見直しを提起

短期滞在手術基本料 厚労省が包括範囲と対象の見直しを提起

▲森田中医協会長(右端)は診療側の要望に「前向きに検討する」と答えた(下段記事)

短期滞在手術基本料
厚労省が包括範囲と対象の見直しを提起

【中医協総会】
平均在院日数の計算に影響。「データが不足」診療側は慎重姿勢

 

 5月15日の中医協総会は入院医療の3回目として短期滞在手術基本料を取り上げ、フリートーキングを行なった。
 短期滞在手術基本料とは短期入院型の手術を行なう上で必要な診療費用を包括したもので、短期滞在手術基本料1(算定対象は13件の日帰り手術)、短期滞在手術基本料2(16件の1泊2日手術)、短期滞在手術基本料3(4泊5日までの手術2件)の3つからなる。
 このうち、短期滞在手術基本料の1と2は出来高との選択制で、算定には届出が必要だが、3については対象手術が特別入院基本料と小児入院医療管理料以外はすべて算定となるため、具体的な施設基準は設けられず、届出も不要とされている。
 2と3は平均在院日数の計算対象となるが、1は平均在院日数の計算対象に入っていない。
 算定状況をみると、短期滞在手術基本料1の実施件数は5,822件に過ぎず、2になると293件、3も248件(いずれも2011年度)と、きわめて少ない。
 事務局(厚労省保険局医療課)は、医療機関等に聴取した結果、「短期滞在手術基本料1と2の対象手術の多くが規定期間を超えて入院するため、出来高で算定する医療機関が多く、届出を行なってまで算定する医療機関が少ない」ことが分かったと説明した。
 事務局がDPCの入院データ(12年4月~9月)から調べた短期滞在手術基本料対象手術の在院日数は、1に関しては、腋臭症手術(皮膚有毛部切除術)の中央値は4日、関節鏡下手根管開放手術は同2日、水晶体再建術は4日、乳腺腫瘍摘出術(長径5cm未満)は3日、内視鏡的結腸ポリープ・粘膜切除術(長径2cm未満)は3日であった。
 2については、胸腔鏡下交感神経節切除術(両側)が3日、下肢静脈瘤手術(抜去切除術)が4日、子宮頸部(腟部)切除術が3日、子宮鏡下子宮筋腫摘出術が3日であった。
 このように、DPC対象病院では「日帰り手術」の患者に2~4日間の入院を、「1泊2日手術」の患者に3~4日の入院を提供していることが判明した。一方、短期滞在手術基本料の対象以外の手術や検査についても在院日数の分布を調べたところ、概ね2~3日以内に収まっていることが分かった。
 こうしたことから、事務局は、短期滞在手術基本料について、(1)1と2は選択制であるため出来高で算定している医療機関が多い、(2)1と2の対象手術には、規定の入院期間は超えるが、多くが在院日数5日未満におさまる症例がある、(3)1と2の対象外でも、多くの症例が一定期間の在院日数におさまる手術や検査が存在している、(4)2および3を算定する患者は平均在院日数の計算対象に含まれている、と整理。
 論点で「治療や検査の方法、入院期間が標準化されてきているものについて、包括的な評価を推進することをどのように考えるか」と問題提起し、包括範囲や対象の拡大等さらなる包括化を検討する方向性を打ち出した。
 こうした事務局提案は、包括内容の見直しに終わらず、平均在院日数計算対象の見直しにまで及ぶことが考えられる。つまり、平均在院日数の計算に入っている手術を計算から外すことによって、短期手術を多用している病院を7対1から減らすという方策である。
 だが、短期滞在手術基本料に関する今回のデータは、本当に現場の実態を正確に反映しているのか、診療側はその点に疑問を抱いた。
 診療側の西澤委員(全日病会長)は、「日帰り手術であるのに、データ上は3~4日間の入院となっている。これは、それだけの入院が必要であると解釈していいのか」と事務局明に質した。これに対して、宇都宮医療課長は「日帰りの対象疾患であるが、(DPCのデータでは)3~4日入院している。やはり、無理なものもあるかと考える」との認識を表わした。
 この説明に、支払側は、「規定と実態がこんなに乖離している。そもそもこの入院料は何を目的に設けられたのか」「日帰りの対象であるのに入院の中央値は4日という。では、なぜ日帰りに設定したのか」など、一様に疑問と批判の声を上げた。
 その一方で、「包括化を進めることが前提であるが、現場の実態を詳しく把握して対応しないと日帰りといっても定着していかない」「新たに短期手術の対象となる手技もあることだろう。包括化を進めることを前提に、全体的に見直しを考えてはどうか」などとも発言、包括化を進める方向で大きく見直すという事務局提案に賛同した。
 これに対して診療側は、「論点は平均在院日数の計算にも影響を及ぼす。慎重に考えざるを得ない」(鈴木日医常任理事)と発言するともに、「包括化をどう考えるかと言われても、もっと詳しいデータがないと論じられない」(安達京都府医師会副会長)として、性急な議論展開には応じられないとする姿勢をのぞかせた。
 現に、宇都宮課長は、西澤委員質問への答弁で、事務局が示したデータにDPC対象病院の外来で行なわれている日帰り手術の実態は反映されていないことを認めた。
 この点について、西澤委員は、「日帰り手術は外来で行なわれているものもある。それらすべてをきちんと比較していかないと正確な実態が捕捉できない」と、事務局データが片手落ちであることを指摘した。
 包括化の強化に前向きな支払側は、「入院料の規定と現状がこれだけ乖離しているのはなぜか」とより詳細なデータを求めつつも、「包括化に関しては、標準的なパターンを定め、それから外れるケースにはどう対応するかという点で議論していきたい」(白川健保連専務理事)と述べるなど、すぐにでも見直しの具体的な議論に入ることを望んだ。しかし、十分なデータの提出を待ちたいとするのが、この日の診療側の姿勢であった。
 森田中医協会長は、この日の議論を「短期滞在手術基本料は原則よりも例外の方が多くなっている。この現状に原則の方を見直すことで対応すべきという意見が多かった」と指摘しつつも、「何が原則で、何が例外であるかという問題は残る」と整理した。
 一方、宇都宮医療課長は、日帰りのケースと3~4泊のケースの詳しい内訳を調べ、次回議論の際に資料として示すと約した。