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ホーム全日病ニュース第804回/2013年7月1日号高額投資の別建補填方式は見送る...

高額投資の別建補填方式は見送る。8%時には上乗せで対応

高額投資の別建補填方式は見送る。
8%時には上乗せで対応

【中医協・消費税分科会】
上乗せの方法で議論。「基本診療料への上乗せ」がベースとなる可能性も

 中医協・診療報酬調査専門組織の「医療機関等における消費税負担に関する分科会」が6月21日に3ヵ月ぶりに開かれた。この場に、事務局(厚労省保険局医療課)は「診療報酬とは別建てで高額投資に対応する方法は、消費税率8%への引上げ時には実施しない」という考えを示し、支払・診療各側ともそれに賛成した。
 事務局は、また、診療報酬に上乗せする対応の考え方として4通りの案を提示して検討を求めたが、この日は、各委員による意見表明に終始した。

 

 分科会には「医療機関等の設備投資に関する調査」の結果が報告された(別掲)。調査は、政府から高額投資の消費税負担は他経費の消費税とは別に措置する方法を検討するという方針が示されたため、分科会として、消費税率引き上げへの対応策検討に先立ち、高額投資の実態を把握するために昨年から今年にかけて行なわれた。
 しかし、回答数は病院が113(回答率13.0%)、一般診療所81(8.1%)、歯科診療所75(7.5%)、保険薬局135(13.5%)と、いずれも少なかった。
 この低回答に、支払側からはしばし苦情が続いた。これに対して、診療側の西澤委員(全日病会長)は、「調査では5年分の固定資産台帳の提出が求められた。しかも、送付先は何でここなのかといぶからざるを得ない企業だ。そういうところに重要な資料を簡単に送るだろうか。しかも高額投資は何年に1回あるかないかであるため、回答に足る状況にないと判断した医療機関も少なくないことだろう」と説明、理解を求めた。
 調査結果について、事務局は、「医療機関等の投資は年度による変動が大きく、年度ごとの投資実績に応じた償還を行なう上で必要な財源規模を正確に見込むことは困難」と評価、その旨を結果報告に書き込んだ。併せて、論点で「診療報酬とは別建ての高額投資対応は、消費税率8%への引上げ時には実施しないこととしてはどうか」と提起した。
 高額投資対応については、前回(3月18日)の分科会で、そのための法改正や関係機関の実務態勢づくりという負担が生じる一方、「仮に10%時に課税へ転換した場合には」たった1年半で元に復すという大きなロスが生じるという説明を事務局自ら行なっている。
 事務局提案を受けた議論で、事務局提案を支持する声が支払側と診療側双方からあがり、分科会は、診療報酬とは別建てで高額投資に対応する方法は見送ることで一致。消費税の引き上げに診療報酬の枠内で対応する方法を検討することを確認した。
 その方法として事務局が示したのは、診療報酬本体と薬剤・特定保険医療材料に関して、基本的にはこれまでのやり方を踏襲するというもの。ただし、診療報酬本体に上乗せする具体的な方法については、次の4通りの考え方を示した(下表)。

(1)消費税対応分を基本診療料や調剤基本料に上乗せする
(2)それに加えて「高額投資」を実施した医療機関等への加算を創設する
(3)消費税負担が大きいと考えられる点数項目に消費税対応分を上乗せする(高額投資が必要と考えられる点数項目に配慮する)
(4)1点単価に消費税対応分を上乗せする
 このうち(1)は、引き上げ分を初再診料、入院基本料、特定入院料等に限って上乗せし、補填を医療機関経営の基礎収入に反映させるというもので、支払・診療各側から、この案に賛成する声があがった。
 同時に、(1)に重点を置きながらも(3)と組み合わせて上乗せ配分を行なってはどうかという意見も複数の委員から出た。(2)と(4)については否定的な意見が大勢を占めた。
 診療側の西澤委員(全日病会長)は、「高額投資への対応は止めるということはよい。ではどうするかということになると病院団体にも色々な意見があることだろう。色々な選択肢も含めて、よく考えたい」と述べ、具体的な意見は控えた。
 この日は、あらかじめ課税分が価格に含まれている薬剤と特定保険医療材料に関して、患者にそのことを説明する方法についても議論された。
 事務局は、「消費税対応分を告示等で区分して表示する」と「患者に渡す明細書や薬剤情報提供文書などで当該薬剤・保険医療材料の消費税対応分を表示する」2案を提案したが、前者は国民には伝わらないのではないかとの疑問が、後者に関しても、医療機関等の負担が多くなるのではと懸念する声があがった。
 「(明細書に)消費税負担分が入っていますと簡略に表示すればいい」「何らかが補填されているということは明示した方がいいが、薬価等の詳しい内訳を示す必要はない」という意見が示されたが、概ねこうした方向で議論は進みそうだ。
 分科会は、必要があれば、今秋にかけて「議論の中間整理」を試みるが、具体的には、消費税負担額を含む医療経済実態調査の結果(10月末)を踏まえて医療機関の種別、類型、規模などによる負担額の格差を把握し、診療報酬に上乗せする項目等の考え方を明確にし、年内をめどに報告書を取りまとめ、中医協総会に報告する方針だ。