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ホーム全日病ニュース第804回/2013年7月1日号「持分なし」へ移行認定の医療法人に...

「持分なし」へ移行認定の医療法人に税制・補助金・融資面の支

「持分なし」へ移行認定の医療法人に
税制・補助金・融資面の支

【第6次医療法改正】
医療機関に勤務環境改善の自主的なマネジメントシステムを導入


▲医療部会に臨む西澤会長(右隣は中川日医副会長、さらに永井医療部会長)

 

医療法等の一部を改正する法律案(仮称)の概要

1面4面の記事を参照

1. 病床の機能分化・連携の推進(医療法関係)
①医療機関による報告(2014年度~)
 医療機関が担っている医療機能の現状と今後の方向を病棟単位で都道府県に報告する制度を設け、その報告内容を患者・住民にわかりやすい形で公表する。
②国は地域医療ビジョン策定のためのガイドラインを策定する(2014年度~)
③地域医療ビジョンの策定(2015年度~)
 ・都道府県が、医療計画の一部として、地域の医療需要の将来推計や医療機関から報告された情報等を活用して、2次医療圏等ごとに各医療機能の必要量等を含む地域の医療提供体制の将来の目指すべき姿(地域医療ビジョン)を策定。
※上記と併せて、国・都道府県・病院・有床診療所の役割や国民・患者の責務を規定(現段階の検討内容であり、国民会議の議論等を踏まえ、引き続き検討を行う)。
2. 在宅医療の推進(医療法関係)
 医療計画に在宅医療の達成すべき目標や医療連携体制に関する事項の記載を義務づけ。
3. 特定機能病院の承認の更新制の導入(医療法関係)
 特定機能病院について更新制を導入。
4. 医師確保対策(地域医療支援センターの設置)(医療法関係)
 都道府県に医師確保の支援等を行う地域医療支援センター設置の努力義務規定を創設。
5. 看護職員確保対策(看護師等確保促進法関係)
 看護師免許等の保持者に都道府県ナースセンターへ一定情報を届け出る制度を創設。
6. 医療機関における勤務環境の改善(医療法関係)
 国による指針策定など医療機関の勤務環境改善のための自主的マネジメントシステムを創設。その円滑な実施のためのガイドラインを策定。併せて各都道府県に医療勤務環境改善支援センター(仮称)の設置等を規定。その他の関連規定を整備。
7. チーム医療の推進
①診療の補助のうち高い専門知識と技能等が必要となる行為を明確化するとともに、医師・歯科医師の指示の下、プロトコールに基づきその行為を実施する看護師に対する研修の仕組みを創設。(保健師助産師看護師法関係)
②診療放射線技師の業務範囲を拡大(診療放射線技師法関係)
③歯科衛生士の業務実施態勢を見直し(歯科衛生士法関係)
8. 医療事故に係る調査の仕組み等の整備(医療法関係)
 医療機関に院内調査の実施を義務付け、各医療機関から報告のあった調査結果の分析や再発防止策に係る普及・啓発を行うとともに、遺族又は医療機関の求めに応じて医療事故に係る調査を行う第3者機関の設置等を規定。
9. 臨床研究の推進(医療法関係)
 革新的医薬品・医療機器の開発等に必要な質の高い臨床研究を進めるため、国際水準の臨床研究や医師主導治験の中心を担う病院を臨床研究中核病院(仮称)として位置づける。
10. 臨床修練制度の見直し(外国医師等が行う臨床修練に係る医師法第17条等の特例等に関する法律関係)
【見直しの具体的な内容】
(1)現行は許可の有効期間は最長2年間。これを、正当な理由(医学部の大学院に在学中等)があると認められる範囲(最長2年間)で有効期間の延長を認める。
(2)受入病院の責任で、①外国の医師の能力、②適切な指導体制、③医療事故等が発生した際の賠償能力を確保する仕組みに改めるとともに、厚生労働大臣が関与する手続・要件を簡素化する。
・指導医認定制度を廃止し、外国の医師の語学能力に適した指導医を受入病院が選任。
・受入病院と緊密な連携体制が確保された病院・診療所に臨床修練を許容・不適切な事例が発覚した場合の対応(立入検査、法令違反の事実の公表等)を整備また、入国後速やかに臨床修練を開始できるようにするため、入国前でも臨床修練の許可を受けることができるよう整備する。
(3)教授・臨床研究を目的として来日する外国の医師について、当該外国の医師や受入病院が一定の要件を満たす場合には、診療を行うことを容認する。
11. 歯科技工士国家試験の見直し(歯科技工士法関係)
  略
12. 持分なし医療法人への移行の促進(医療法等一部改正法関係)
【法律への位置づけ(案)】
・移行について計画的な取組を行う医療法人を都道府県知事が認定する仕組みを導入する。(移行検討の定款変更、移行計画の作成などを要件とする)
・認定を受けた医療法人には都道府県が指導、助言等の支援を行う。
【その他の支援策(検討中の案)】
 税制措置、補助制度及び融資制度について検討。
・出資者の死亡に伴い相続人に発生する相続税の納税猶予等の特例措置・移行を支援するコンサルタントに係る経費の補助・出資金の払戻しの際に要する資金の融資

 

医療法人に関する国民会議、産業競争力会議の議論と骨太の方針

□骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針=6月14日閣議決定)
第3章3.(1)②(医療・介護)
 医療提供体制の改革については、…(中略)…医療法人間の合併や権利の移転等に関する制度改正を検討する。
□医療法人制度等のあり方〈社会保障制度改革国民会議における「議論の整理」〉
 医療機能の分化・連携のための医療機関の再編等を可能とし、ケアをベースとしたコミュニティ形成、町作りにも参画できるように医療法人制度の見直しを行うべき。具体的には、医療法人が病院経営の非営利性を担保しつつ付帯事業で住宅建設(サービス付き高齢者住宅、有料老人ホーム)や町のインフラ形成に参加、共同事業を立ち上げることができる道を開き、その際のファイナンスの選択肢として、今後、慎重に設計されるべき「ヘルスケアREIT」等を視野に入れるべき。地域を起点とした公的安心サービス提供基盤の整備を進めていくため、病院の統合・再編による機能の集約化・分化と、医療・介護と高齢者向け住宅を結合すべき。
〈主な論点と対応の方向(案)〉
 医療法人制度については、医療法人の非営利性を担保すること、本来業務である病院等の経営に支障を来さないことなどを前提としつつ、医療機能の分化・連携の推進や医療法人の健全な経営が図られるよう、具体的な提案内容の検討を行っていくべきではないか。
□医療法人の業務範囲(附帯業務の拡大、海外展開) ― 産業競争力会議における民間議員の提案
(1)医療法人がフィットネス等健康増進や配食等生活支援を円滑にできるためのガイドラインの策定
(2)医療法人が一定要件の下で海外現地法人に出資できることを明確化
〈厚生労働省の対応・考え方〉
(1)医療提供という本来業務に支障のない範囲で本来業務と関連する業務(附帯業務)は実施可能。例えば、生活習慣病の者に対する医師の指導に基づく健康増進や、高血圧、高血糖又は生活習慣病の者に対して、医師等が行う栄養指導や運動指導と併せて配食サービスを行うこと等、附帯業務のうちの保健衛生に関する業務として整理できるものは、今後通知改正で対応。
(2)社会医療法人は海外現地法人に出資することは可能。一般の医療法人について、海外事業に失敗しても地域医療に影響を与えない範囲内で出資可能とすることについて検討。

 

第183回通常国会における医療法人制度関係の政府答弁

□理事長要件の見直しについて/3月8日の衆議院予算委員会・安倍総理大臣
 理事長については、確かに、病院においては医療という観点からと病院経営という観点からもありますので、そういう経営感覚を持った人が枢要な地位にいることも私はずっと重要なポイント、議論するポイントでもあるのかな、このように思っておりました。
□医療法人会計基準の策定について/3月22日の衆議院厚生労働委員会・田村厚労大臣
 医療法人の経営が持続的に、安定的に、健全、透明性を担保するためにも、医療法人会計基準を早急に策定すべきという意見はごもっともである。議員ご承知のとおり、現在四病協にて検討を行っている。基本は自らが行ってもらわなければならない。ただ、小泉内閣から何年も経っているので、全力を挙げて、積極的にお手伝いしてまいりたい。できれば、平成25年度の早い時期に策定されるように我々もお手伝いしていきたい。

 

「医療機関債」発行等ガイドラインの一部改正(トラブル防止、債権者保護の視点から)

①公認会計士等の監査が必要となる発行額等の見直し
 1回当たりの発行総額が1億円以上→1会計年度の発行総額が1億円以上
②監督庁への届出を新設
 勧誘を行う1ヶ月前までに発行要項等の必要な書類を監督庁に届けること
③購入対象者の明確化
 不特定多数に対する販売への注意を促すため、購入対象は、法人の役職員や縁者、地域住民等であることを明記
④医療機関債購入の勧誘方法について消費者保護関係の規定を追加
 誠実公正義務、虚偽説明の禁止、再勧誘禁止等、金融商品取引法を参考に規定
⑤決算期の債権者への情報開示書類の明示
 法定書類のほか、取得資産の状況、直近3会計年度の財務状況等を開示することを明示
⑥期中償還事由の明確化
 購入者の死亡のほか、「破産」「障害等による生計維持困難」等の事由を列挙し明確化

 

参考1 2013年度医療施設経営安定化推進事業の概要

*下線は厚労省による

□医療法人等の提携・連携の推進に関する調査研究〈概要〉
○各地域における医療法人が、経営の合理化・安定化を進めるとともに、地域の医療機能分化及び連携を進める上で参考となるよう、事業協同組合、グループ化、資本提携などにより、①経営の合理化・安定化を進めている事例、②医療機能の分化・連携を進めている事例を調査収集し、事例集を作成する。
○上記の取組を全国的に進めていくための課題や必要な支援のニーズについて調査する
□医療法人の適正な運営に関する調査研究〈概要〉
○医療法人の運営等に重大な問題があった場合、当該法人の安定的な経営を損なうのみならず、地域医療への悪影響が懸念される。このため、医療法人の組織、財務、運営等の適正性を確認するための指標を作成する
○当該指標は、①医療法人が大きな負担なく自ら定期的かつ容易に確認できるもの、②監督庁で医療法人が作成した指標の値の正確性を資料等により容易に確認できるものであるもの、とすることを想定。