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ホーム全日病ニュース第808回/2013年9月1日号病床機能分化は知事会との協議・理解を得て実施

病床機能分化は知事会との協議・理解を得て実施

▲閣議決定について発表する菅官房長官(8月21日)

病床機能分化は知事会との協議・理解を得て実施

【社会保障制度改革で「法制上の措置」】
改革の項目と実施時期を明記した「プログラム法」を臨時国会で制定

 安倍内閣は8月21日の閣議で、社会保障制度改革推進法に規定された 「法制上の措置」の概要を決定した。社会保障制度改革国民会議報告書にも 盛り込まれた制度改革について、法改正や施策の手順と実施時期等を定め る「プログラム法案」要綱の骨子にあたるもの。「プログラム法案」は10月召 集が見込まれる臨時国会に提出される。

チーム医療とともに勤務環境改善の施策も法令化

 閣議決定されたのは「社会保障制度改革推進法第4条の規定に基づく『法制上の措置』の骨子について」。
 医療提供体制に関しては、まず、(1)「病床の機能分化・連携及び在宅医療・在宅介護を推進するために必要な事項」として、①病床機能に関する情報を都道府県に報告する制度の創設②地域医療ビジョンの策定及びこれを実現するために必要な措置(必要な病床の適切な区分の設定、都道府県の役割の強化等)③新たな財政支援の制度の創設④医療法人間の合併と権利移転に関する制度等の見直しの4点があげられている。
 続いて、(2)地域における医師、看護職員等の確保及び勤務環境の改善等に係る施策、(3)医療職種の業務範囲及び業務の実施体制の見直し、の2課題が打ち出された。
 (1)~(3)については、次期医療計画が2018年度からであることを踏まえ、「必要な措置を17年度までを目途に順次講ずる」とし、法案を14年の通常国会に提出すると明記。
 医療保険制度の財政基盤を安定化させる措置に関しては、①財政運営を始めとする国保の運営業務を都道府県が担う(市区町村との適切な役割分担)②被用者保険者における後期高齢者支援金すべての総報酬割③70~74歳の一部負担金取扱い(順次2割へと引き上げ)の実施と応能負担の観点からの高額療養費(上限額)の見直し④医療施設間の機能分担や在宅療養との公平の観点からの外来・入院に関する給付の見直し等を明記した上で、それら措置を14年度から17年度までを目途に順次講じるとし、改正法案を15年通常国会に提出すると明記した。
 さらに、⑤高齢者医療制度についても見直しに向けた検討を行なうとしている。
 介護保険制度に関しては、(1)地域包括ケアシステムの構築に向けた地域支援事業の見直しとして、①在宅医療と在宅介護の連携の強化、②高齢者の生活支援と介護予防に関する基盤整備、③認知症に係る施策の3点(2)要支援者への支援の見直し(3)一定以上の所得を有する者の利用者負担の見直し(4)特養における施設介護サービス費支給対象の見直しなどをあげ、第6期介護保険事業計画が15年度から始まることを踏まえ、それら措置を15年度を目途に講じるために法案を14年通常国会に提出するとしている。
 「骨子」ということで措置の内容は概括的な表現にとどまっているが、「プログラム法案」ではより踏み込んだ方向が明らかにされるとみられる。ただし、改正法案を含む個別課題の詳細は、プログラム法成立後に、関連した社会保障審議会等で検討されることになる。
 「骨子」には、さらに、(1)2025年を展望した社会保障制度改革を総合的・集中的に推進するために必要な体制を整備する(2)必要な財源は消費税引き上げと社会保障給付の重点化・効率化により確保する(3)地方自治に重要な影響を及ぼす、病床の機能分化、医師等の確保、国保の見直しに関しては地方6団体等の関係者と十分に協議を行ない、理解を得るという方針を盛り込んだ。
 「必要な体制」としては、政府内に「社会保障制度改革推進本部」を設けて改革の実施状況を点検する一方、高齢者医療制度などの中長期課題は有識者会議で検討していくことを想定している。有識者会議はプログラム法案成立後の年末にも設置する予定だ。
 地方行政関係者との十分な協議に関連して、全国知事会は8月21日に閣議決定に対する意見を発表。「地方が適切に役割を果たせるよう、国は責任を持って、必要な財源確保や地方への権限付与等を行うとともに、地方と手順を踏んだ丁寧かつ十分な協議を行う必要がある」と訴えた。
 閣議決定について、田村厚生労働大臣は8月21日の記者会見で、「今ある医療資源をしっかり活用して、在宅医療を含めて地域完結型の医療提供体制をつくっていけば、超高齢社会に対応できる医療が整備される」と、社会保障制度改革の意義を説明した。
 プログラム法案成立後、厚生労働省の審議会が年金や介護など分野別に議論を行ない、半年以上もかけて個別の法案を丁寧に作り上げる。ただ、改革実現の時期に幅を持たせているため、どの分野の負担増を優先するかは政治状況などに左右されそうだ。