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ホーム全日病ニュース第808回/2013年9月1日号支払側 7対1見直しの激変を懸念。...

支払側 7対1見直しの激変を懸念。診療側 特定除外廃止に強い疑問

部門別収支調査の中止に診療側が反対。議論は仕切り直しへ

支払側 7対1見直しの激変を懸念。
診療側 特定除外廃止に強い疑問

【中医協総会】
診療側「データとその解釈の信頼性を問う」入院分科会「中間まとめ」が議論の俎上

 8月21日の中医協総会は、診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」の「中間まとめ」を受け、2014年度改定における入院医療の見直し課題に関する具体的議論を開始した。
 初回ということで、診療側委員はもっぱら「中間まとめ」の記述内容の確認、質問、追加資料の要求を中心に論じた。本格的な議論は9月からとなる。

 

 「中間まとめ」は、入院医療等調査・評価分科会が8月7日にまとめたもので、前改定の答申附帯事項で取り上げられた入院医療に関する検証・検討事項のうち12年度に調査を行なったデータを検討した結果として、(1)7対1入院基本料要件の見直しによる算定病床の削減、(2)亜急性期入院医療管理料の組み立て直しによる新たな亜急性期病床の拡大、(3)前改定で導入した「地域に配慮した評価」の継続と対象医療圏への亜急性期病床に準じた評価の導入などを提起、14年度改定の方向性とした。
 一体改革にそった病床の再編を進めようとする「中間まとめ」は、約32万床にも増えた7対1算定病床を大幅に削減し、一般病床の分布を一変するもので、そのまま実施されると現場への影響はきわめて深刻なものがある。
 「中間まとめ」の提案に、「分科会が出した方向性は基本的には正しい。7対1の方向性も正しい」と賛同する支払側の白川委員(健保連)も、「ただし、現場が混乱することはよくない。7対1導入時とは逆の急激な変化は好ましくない。どうしたらソフトランディングできるかを考えるべきである」と、激変を回避する方法の模索を求めた。
 一方、診療側は、「中間まとめ」が描く改革の方向を基本的に肯定した上で、各論について重要な疑義を表明。性急な結論を戒めるとともに、激変を緩和させる手立てを検討する必要を提起した。
 西澤委員(全日病会長)は、「この方向性に必ずしも反対しているわけではない」と述べた上で、「問題は、調査結果から本当にこうした結論が導かれるのかである。つまり、データとその解釈の信頼性をまず問いたい」と質した。
 その上で、「中間まとめ」に12年度入院調査結果にはないDPCデータが挿入されていることや、あらかじめ決めている結論に役立つデータのみを切り取って“論証”している箇所、データの正確な解釈に必要な情報を省略して説明している箇所などをいくつも指摘し、結論を引き出す過程に恣意的なデータ引用があるのではないかと疑問を呈し、事務局に、伏せられたデータや関連したデータの提出を求めるなど、慎重に吟味する姿勢を打ち出した。
 西澤委員は、例えば、平均在院日数のみで括られる短期手術群を個々にみなくてよいのか、短い平均在院日数をやり玉にあげる視点はパス活用の理念を逆行しないか、病態の違いで異なる看護必要度を急性期と慢性期とも同じ尺度で測ってよいのか… 等々、議論すべき点は多々あると指摘し、「もう少しきめ細かな報告であるべきではないか」と、「中間まとめ」にみられる杜撰さを難じた。
 西澤委員を含む診療側がとくに疑問視したのは、7対1の中でも、特定除外制度を廃止する箇所であった。
 鈴木委員(日医常任理事)は、「日医と四病協は、7対1病床における特定除外患者の実態調査を実施した。現在、急ぎ集計中である。回答数の少ない分科会調査とは違う結果が出る可能性がある」と述べ、後日、中医協にその結果を提出、検討資料に加える意向を示した。
 さらに、診療側は7対1の定義にも疑問を投げかけ、「複雑な病態」の意味を問いただした。「7対1というのは看護師の配置数に過ぎない。これをもって医療機能を定義するのはいかがか」という根底的な質問も出たが、こうした疑問に明確な回答はなされなかった。
 こうした質疑は、一般病床の命運を左右しかねないきわめて重要な資料となる「中間まとめ」の科学性や合理性を問うものであり、今後の本格的な議論への序章に過ぎない。
 診療側は、今後も引き続き疑問点を追及するともに、日医と四病協の特定除外患者調査など新たな資料も加えるなど、慎重な議論を求めていく考えだ。

 

□「入院医療等の調査・評価分科会」中間まとめの骨子

◎7対1入院基本料等
①平均在院日数
 7対1算定医療機関の機能は「複雑な病態をもつ急性期の患者に高度な医療 を提供すること」を踏まえ、要件を見直す。
・標準化された、短期間で可能な手術や検査の患者は平均在院日数の計算から外す。
・7対1と10対1の特定除外患者は前改定の13対1・15対1と同様とする。
②重症度・看護必要度
・時間尿測定と血圧測定は削除、創傷処置から褥瘡を外す、呼吸ケアから痰の吸引を外す、「抗悪性腫瘍剤の内服」「麻薬の内服・貼付」「抗血栓塞栓薬の 持続点滴」「10分間以上の指導」「10分間以上の意思決定支援」をA項目に追加、という項目の見直しを行なう。
③その他
 DPCデータの提出と在宅復帰率を要件とする。早期からのリハ等実施を必須とする。
◎亜急性期入院医療管理料等の見直し
 亜急性期病床の役割・機能は、①急性期病床からの受け入れ、②在宅等からの緊急時の受け入れ、③在宅への復帰支援の3つとし、これを踏まえ、亜急性期病床は、人員配置、重症度・看護必要度、2次救急病院の指定、在宅療養支援病院の届出、在宅復帰率等の要件を設けた上、評価を充実させる。
 また、病棟単位の届出とし、病床種別にかかわらず届出を認める。さらにDPCデータの提出を求める。
◎地域に配慮した評価
 12年改定で導入した評価は14年改定でも引き続ぐ。当該地域における医療機関に、前出評価とは別に、今後の亜急性期に準じた評価を導入する(対象は 一定病床以下とする)。